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国内の需給動向【令和元年度の食肉の需給動向について】 畜産の情報 2020年6月号

令和元年度の食肉の需給動向について

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 令和元年度(平成31年4月〜令和2年3月)の食肉の畜種別の需給動向は以下の通り。

【牛肉】 生産量、和牛は増加するも乳用種・交雑種は減少
 令和元年度の牛肉生産量は、32万9647トン(前年度比1.0%減)と前年度をわずかに下回った(表1)。品種別では、和牛は15万1958トン(同1.9%増)と前年度をわずかに上回った一方、交雑種は8万4179トン(同5.1%減)とやや、乳用種は8万9003トン(同2.1%減)とわずかに、いずれも減少した。
 
 
 和牛は繁殖雌牛の増頭や乳用牛への和牛受精卵移植による和子牛の生産拡大などにより3年連続で増加となった。しかしながら、交雑種および乳用種は、乳用種経産牛の減少に加え、上記の和子牛生産拡大などにより減少した。この結果、牛肉全体でみると3年ぶりに前年度を下回った。

輸入量、冷蔵品は前年度並みとなるも冷凍品は増加
 令和元年度の牛肉輸入量は、62万2335トン(前年度比0.4%増)と4年連続で増加した。このうち、主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は27万8122トン(同0.2%減)と前年度並みとなった。冷蔵品は、米国産と豪州産で9割を占めており、米国産は12万8591トン(同4.4%減)、豪州産は12万4548トン(同3.0%減)と、ともに前年度をやや下回った。なお、カナダ産が1万2293トン(同98.5%増)となるなど、その他の国では増加がみられた。
 一方、主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は34万3590トン(同0.9%増)と前年度をわずかに上回った。冷凍品は、豪州産と米国産で8割以上を占めており、豪州産は16万5792トン(同8.5%減)とかなりの程度、米国産は11万6754トン(同2.6%減)とわずかに、いずれも前年度を下回った。なお、カナダ産が3万3436トン(同78.6%増)となるなどその他の国では増加がみられた。

推定出回り量、輸入品は増加するも国産品は減少
 令和元年度の牛肉の推定出回り量は、93万6940トン(前年度比0.7%増)と4年連続で増加した。このうち輸入品は、牛肉消費量の約6割を占める外食消費などが最近の肉ブームの高まりを受けて好調であったことから、61万3413トン(同2.1%増)と前年度をわずかに上回った。一方、国産品は、牛肉消費量の約3割を占める家計消費が振るわなかったことから、32万3527トン(同1.9%減)とわずかに下回った。
 年度末(令和2年3月)の推定期末在庫は12万6843トン(同9.4%増)と前年度末をかなりの程度上回った。このうち、9割以上を占める輸入品在庫は11万6128トン(同8.3%増)とかなりの程度、国産品在庫は1万715トン(同22.7%増)と大幅に、いずれも前年度末を上回った。

【豚肉】 生産量、前年度をわずかに上回る
 令和元年度の豚肉生産量は、90万2908トン(前年度比0.6%増)と前年度をわずかに上回り、2年連続で増加した(表2)。と畜頭数(同0.3%増)と平均枝肉重量(同0.3%増)がともに増加したことが生産量の増加につながった。

 
輸入量、前年度をわずかに上回る
 令和元年度の豚肉輸入量は、95万3112トン(前年度比4.0%増)と前年度をやや上回った。これは、TPP11および日EU・EPA両協定税率の引き下げに伴う通関繰り越しや10連休となったゴールデンウィークに向けた手当てに加え、中国で発生したASF(アフリカ豚熱)の影響による国際相場の先高を見越した早目の手当てによるとみられる。内訳をみると、冷蔵品は41万5663トン(同2.5%増)とわずかに、冷凍品は53万7419トン(同5.2%増)とやや、いずれも前年度を上回った。冷蔵品は、米国産とカナダ産で9割以上を占めており、米国産は20万5990トン(同0.7%減)と前年度をわずかに下回り、カナダ産は19万9587トン(同7.1%増)と前年度をかなりの程度上回った。一方、主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は53万7419トン(同5.2%増)と前年度をやや上回った。冷凍品は、スペイン産、デンマーク産、メキシコ産で6割近くを占めている。スペインは平成30年度に続き冷凍品の最大の輸入先国となっており、スペイン産は12万2785トン(同12.2%増)と前年度をかなり大きく上回った。また、デンマーク産は10万2489トン(同1.4%減)と前年度をわずかに下回り、メキシコ産は9万3730トン(同20.6%増)と大幅に上回った。

推定出回り量、国産品は前年度並みとなるも輸入品は減少
 令和元年度の豚肉の推定出回り量は、181万1539トン(前年度比0.9%減)と6年ぶりに減少した。減少の背景には、夏季の前半の冷夏と後半の猛暑による消費の停滞や、冬場の記録的な暖冬による鍋需要の不振などがあるとみられる。内訳をみると国産品は89万8234トン(同0.2%増)と前年度並みとなった一方、輸入品は91万3305トン(同1.9%減)と前年度をわずかに下回った。
 年度末(令和2年3月)の推定期末在庫は21万137トン(同26.2%増)と前年度末を大幅に上回った。このうち、9割近くを占める輸入品在庫は18万5075トン(同27.4%増)、国産品在庫は2万5062トン(同18.1%増)と、いずれも前年度末を大幅に上回った。

【鶏肉】 生産量、前年度に続き過去最高を更新
 令和元年度の鶏肉生産量は、166万1991トン(前年度比3.7%増)と前年をやや上回り、過去最高となった(表3)。増加の背景には、消費者の健康志向の高まりなどによる底堅い需要を受け、生産者の増産意欲が高まっていることがあるとみられる。
 
 
 
輸入量、前年度をやや上回る
 令和元年度の鶏肉輸入量は、57万2118トン(前年度比5.0%増)と前年度をやや上回った。鶏肉の輸入量は国内の在庫水準に左右されることから、年度によって増減がみられ、元年度の増加の背景には、積み増していた輸入品在庫量の減少があるとみられる。輸入品は、ブラジル産とタイ産で9割以上を占めており、ブラジル産は42万4479トン(同7.6%増)と前年度をかなりの程度上回った一方、タイ産は12万7978トン(同2.4%減)とわずかに下回った。

推定出回り量、前年度に続き過去最高を更新
 鶏肉の推定出回り量は、近年、消費者の健康志向などを背景に増加傾向で推移しており、令和元年度は、221万5991トン(前年度比2.0%増)と前年度をわずかに上回り、過去最高となった。このうち、全体の7割以上を占める国産品は、国産品が大半を占める家計消費が好調なことから165万8522トン(同3.4%増)と9年連続の増加となった一方、主に加工・業務用に利用されている輸入品は55万7469トン(同1.9%減)と前年度をわずかに下回った。
 年度末(令和2年3月)の推定期末在庫は17万447トン(同11.9%増)と前年度末をかなり大きく上回った。このうち、8割以上を占める輸入品在庫は13万9326トン(同11.7%増)、国産品在庫は3万1121トン(同12.5%増)と、いずれも前年度末をかなり大きく上回った。
 
 
(畜産振興部 前田 絵梨)