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海外の需給動向【豚肉/メキシコ】  畜産の情報  2020年6月号

2019年の生産量、消費拡大を受け増加が継続

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2019年も生産拡大が継続
 メキシコでは、近年、経済成長の鈍化により消費が牛肉から価格帯の安い豚肉にシフトしていることから、豚肉の消費量が増加している。こうした需要の増加を受け、生産者は企業養豚の垂直統合(インテグレーション)の進展、関連施設のバイオセキュリティの向上などに取り組んでおり、生産拡大が続いている。米国農務省(USDA)によると、豚肉生産量は、2019年も増加傾向が続いたことから、前年をかなりの程度上回る140万8000トン(前年比6.6%増)となった(図11)。
 
 
2019年の輸出量、好調続く
 同国では高価格部位は輸出向けに、低価格部位は国内消費に仕向けられ、国内の不足分を輸入で補う構造となっている。国内需要の増加により2018年まで輸入量も増加傾向で推移し、そのうち8割以上を米国が占めていた(図12)。しかしながら、米国がメキシコの鉄鋼およびアルミニウム製品にかかる関税率を引き上げたことに対する報復措置として導入した追加関税の適用が2019年5月20日まで続いたことから、米国産豚肉が大きく減少し、2019年の輸入量は前年比30.1%減の61万9565トンとなった。
 
 
 一方、2019年の輸出量は増加傾向が続き、同15.4%増の15万2309トンとなった(表10)。メキシコにおける豚肉輸出は、日本向けが7割強を占め、残りが米国、中国、韓国向けとなっており、2019年は特に中国向けの輸出量が約5.2倍と大幅に増加した。これは、同国が、国内で発生したアフリカ豚熱(ASF)の影響で世界各国の食肉の輸入を増加させており、メキシコ産豚肉に対しても同様の動きがあったためである。
 
 
 なお、北米自由貿易協定(NAFTA)に替わる新たな貿易協定である米国ーメキシコーカナダ協定(USMCA)については2020年7月1日に発効が予定されており、大きな経済効果が生み出されることが期待されている。

養豚団体が政府に要望を伝える
 メキシコでも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大しており、多くのレストランが閉鎖あるいは持ち帰りのみの営業を強いられている。こうした需要の減少に加え、生産者や食肉加工メーカーの頭を悩ませているのが、原油価格の下落によるメキシコペソ安の進行である(図13)。メキシコは米国から多くの飼料や加工用の豚肉を輸入していることから、メキシコペソ安によるこれらの価格上昇が生産・製造コストを引き上げており、生産者や食肉加工メーカーの経営を圧迫している。
 
 
 こうした状況の中、現地報道によると、メキシコ養豚農家連合会(CPM)のマリルー・アルブレゴ会長や養豚農家組織(Oporpa)のエリベルト・エルナンデス会長をはじめとした養豚団体の代表は、農業・農村開発省(Sader)のビクター・ビジャロボス長官と会談を行った。養豚団体は2020年に約160億ペソ(877億円:1ペソ=5.48円)の損失があると試算している。こうした苦しい状況を乗り越えるため、対中輸出施設の早期認定、付加価値税の返還、輸入量の太宗を占める米国産豚肉の一時的な輸入停止、全国スーパーマーケット・百貨店協会(ANTAD)や陸軍、海軍などの政府機関による国産豚肉の優先的な調達といった要望が出されている。
(調査情報部 山口 真功)