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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】  畜産の情報  2020年6月号

2月の生乳出荷量は前年同月をやや上回る

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生乳出荷量は主要生産国の多くで前年同月を上回る
 欧州委員会によると、2020年2月の生乳出荷量(EU27カ国)は、前年同月をやや上回る1144万3210トンとなった(図18)。生乳出荷量は、2018年の夏に複数の国が干ばつに見舞われた影響により、2018年9月から2019年2月までは前年同月を下回って推移していた。しかし、2019年3月以降は、5月と6月を除いて前年同月を上回って推移し、2020年2月は前年同月比4.9%増となった。
 
 
 2月の出荷量を国別にみると、ドイツ(同4.5%増)、フランス(同5.3%増)、オランダ(同5.1%増)、ポーランド(同6.0%増)、スペイン(同9.2%増)、デンマーク(同3.2%増)、ベルギー(同8.0%増)、アイルランド(同8.7%増)と主要生産国の多くで前年同月を上回った(表12)。このうち、EUの中で出荷量第3位であるものの、EU最大の乳製品輸出国(EU域外向け)であるオランダの出荷量は、2019年8月以降、7カ月連続で前年同月を上回っている。これは、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛の淘汰(とうた)を行ったため、乳牛の頭数が減少傾向となっていたものの、2019年には、前年比2%の増加と生産基盤の回復がみられたためと思われる。
 
 
 一方、イタリア(同1.4%減)では主要生産国の中で唯一前年同月を下回った。
 欧州委員会は、4月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、2020年の生乳出荷量を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生が集乳などの物流にも影響を及ぼす可能性があるものの、乳牛の減少が見込まれる一方で、一頭当たりの乳量の増加が見込まれることから、前年比0.4%増と見込んでいる。

3月の生乳価格は前年同月比高
 欧州委員会によると、3月の平均生乳取引価格(EU27カ国)は、前年同月比0.3%安の100キログラム当たり34.41ユーロ(1キログラム当たり40.6円:1ユーロ=118円)となった(図19)。乳価は、2019年9月以降、7カ月連続で前年同月を下回って推移している。なお、同見通しの中で、2月以降、脱脂粉乳とバターの価格が減少した結果、乳価が今後数カ月は低下すると予想されている。また、季節的な生乳出荷量の増加とCOVID-19のための外出制限も長期的には乳価を引き下げる可能性があるとしている。
 
 
チーズの輸出量は増加見込み
 同見通しの中で、2020年の乳製品の輸出量は前年比6.3%減が見込まれている。これは、COVID-19による需要の減退などから、脱脂粉乳や全粉乳の輸出量の減少の可能性が予想されているためである。一方で、チーズの輸出量は、近年増加傾向で推移しており、2019年は134万5000トン(同5.2%増)となっている。2020年も引き続きアジア市場の需要を背景に136万5000トン(同1.5%増)と増加すると見込まれている。また、消費量は、COVID-19の発生に伴う外食市場などの封鎖により地理的表示(GI)チーズなどの高付加価値チーズの消費に影響があるものの、チーズを含む調理済み食品などの売上の増加に支えられ、わずかに増加すると見込まれている。こうした需要の増加によりチーズの生産量も同0.6%増が予想されている。
 こうした中で、COVID-19の影響により、欧州委員会は乳製品(脱脂粉乳、バター、チーズ)などを対象とする民間在庫補助(PSA)の発動を含む対策案を採択しており、今後の動向が注視される。

(参考) 海外情報「欧州委員会、新型コロナウイルスの追加対策を採択。乳製品、牛肉などの民間在庫補助(PSA)を5月7日から。チーズは最大10万トン市場隔離へ」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002692.html、122ページ)を参照されたい。
(調査情報部 小林 智也)