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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2020年10月号

牛肉輸出量、中国向けを除き軒並み減少

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2020年6月の牛肉輸出量、3カ月連続で減少

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2020年6月の牛肉輸出量は前年同月比33.0%減の8万3140トンと前年を大幅に下回り、4月以降3カ月連続して減少した(表1)。この結果、2020年上半期(1〜6月)の輸出量についても、前年同期比7.6%減の62万4243トンとなった。

 
 6月の輸出量が減少した主な要因については、主要輸出先で軒並み減少していることから、輸出先の個別の状況よりも、米国の供給面の状況によるものと思われる。USDAは、4月中旬以降、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の拡大に伴い、牛肉処理場の操業停止が相次ぎ、と畜頭数・牛肉生産量が減少したことおよびその影響で牛肉相場が上昇したため、輸出余力が低下していたとコメントしている。
 6月の輸出量を主要輸出先別に見ると、中国を除く主要輸出先で総じて減少しており、首位の日本向けは前年同月比20.7%減の2万6320トン、第2位の韓国向けも同39.0%減の1万8667トンとそれぞれ大幅に減少した。その他、カナダ向けが同0.2%減の1万225トン、香港向けが同11.2%減の7119トン、メキシコ向けが同61.0%減の6100トン、台湾向けが同37.2%減の5871トンと軒並み減少した。
 こうした状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、「COVID‐19の拡大に伴う牛肉生産量の減少が輸出にも影響を及ぼすと想定していたが、5月の輸出量減少(同30.9%減)からは回復するものと期待していた。しかし、サプライチェーン全体において牛肉供給の混乱が収束するまでに時間を要し、6月の輸出も厳しい結果となった。ただし、下半期においては、主要輸出先で牛肉需要が増加する見込みもあり、牛肉(および豚肉)の輸出は勢いを取り戻すと予想している」と述べている。
 一方中国向けについては、同90.3%増の2345トンと2倍弱の数量となり、上半期合計でも前年同期比70.9%増の8950トンと大幅に増加している。中国向けの増加要因についてUSMEFは、「米中経済貿易協定の第1段階の合意により、米国の輸出認定施設数も増加した。これに伴い、米国産牛肉は世界最大の輸入市場へ本格的な参入を果たしたところである。中国の外食産業はCOVID‐19による制限から徐々に回復する一方、豪州では牛群再構築に向けた動きが継続し輸出余力が限られていることから、米国産牛肉の輸出機会が増える可能性がさらに高まるだろう」との見解を示している。
 

8月のフィードロット飼養頭数、5カ月ぶりに前年比で増加に転ずる

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年8月21日に公表した「Cattle on Feed」によると、7月のフィードロット導入頭数は前年同月比11.0%増の189万3000頭と前年同月をかなり大きく上回る水準となった。また、減少傾向で推移していた出荷頭数も同0.6%減の199万頭と前年同月をわずかに下回る水準まで回復した。
 この結果、2020年8月1日現在のフィードロット飼養頭数は同1.5%増の1128万4000頭となり、現行の形式で調査が開始された1996年以降、8月で最も多い頭数となった(図1)。

 
 フィードロット飼養頭数は、堅調な肥育牛価格を背景にフィードロットの収益性が良好であったため、2018年以降記録的水準で推移していた。しかし、COVID‐19の拡大に伴う牛肉市場の混乱や、肥育牛価格が低迷したことなどにより導入頭数が減少し、4、5月の飼養頭数も大幅に減少したものの、その後は回復基調に転じた。
 8月は例年、夏場の需要期に向けた春先以降の出荷増の反動により年間を通じて最も少ない水準となるが、本年においては4、5月の飼養頭数を上回ることとなった。
 こうした状況について、現地報道によると、COVID‐19による食肉処理場の操業停止およびと畜能力が減少したことによる出荷の遅れにより、通常は計画的に行われているフィードロット経営が混乱し、出荷適齢期を迎えている肥育牛がフィードロット内に滞留している状況にあるとされる。また、肥育牛価格も依然として低迷しており(図2)、フィードロットの導入意欲は高まる状況ではないものの、4、5月に大幅に減少していたと畜頭数が前年並みに回復していることから(図3)、各パッカーで処理頭数を確保しようとする動きが見られ、肥育牛価格が上昇する気配を見せている。さらに、ニューメキシコ州北部やコロラド州西部で干ばつが発生し、牧草生育不足によりフィードロットへの導入意欲が高まった南西部において導入頭数が増加したことが、7月のフィードロット導入頭数の増加につながったとされている。



 
(調査情報部 藤原 琢也)