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海外の需給動向【鶏肉/中国】 畜産の情報  2020年10月号

鶏肉供給体制は整うも、需要増により輸入量は大幅に増加

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鶏肉生産量は引き続き増加

 2019年後半にかけて、ASF(アフリカ豚熱)の影響により豚肉生産量が減少し、鶏肉の代替消費が増加したことから、2020年に入っても家きん肉生産量は増加している。中国国家統計局によると、2020年上半期の家きん肉生産量は前年同期比6.8%増であった。中国農業農村部は、2020年の生産量を前年比7.2%増の2401万トンと予測していたが(注1)、予測通りに増産していると言える。
 なお、家きん肉生産量のうち約6割が鶏肉であるが(注2)、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、2020年の鶏肉生産量を同8%増の1485万トンと予測している(表9)。

(注1) 中国農業農村部の予測値については、海外情報「中国農業展望報告(2020-2029)を発表(食肉編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002713.html)を参照されたい。
(注2) 鶏肉の生産割合については『畜産の情報』2020年5月号「中国の肉用鶏産業の現状と鶏肉需給の見通し」(https://www.alic.go.jp/content/001177622.pdf)P.102を参照されたい。
 

 

ひな価格はASF発生前の水準まで下落

 GP(原種鶏)は、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響を受けることなく順調に供給されていたため、2019年に高騰したひな価格はASF発生前の水準まで下落した(図28)。

 

鶏肉小売価格は下落から上昇に転ずる

 2020年は供給体制が整ってきた中、COVID‐19により外食需要が減少したことで、同年5月までは鶏肉価格は下降傾向で推移していた(図29)。しかし、7月には外食需要が回復してきたこと、また、夏季休暇により需要が増加したことから上昇に転じ、同年8月第2週には前年同月比1.2%高の1キログラム当たり21.8元(331円:1元=15.2円)となった。
 

 
 農業農村部によると、ひな価格が低く推移していることで安定的な収益が見込まれることから、養鶏農家の増産意欲は高い。しかしながら、豚肉価格が高止まりしており、鶏肉への需要のシフトがさらに進むと考えられるため、鶏肉価格はさらに上昇するとしている。
 

鶏肉輸入量は高水準を維持

 COVID‐19により物流が制限されていた期間は、生産地から消費地への供給が一時的に滞っていたため、海外からの輸入が強まりをみせた。特に、「一帯一路」政策によりロシアや東欧からの輸入が強化され、本年5月には鉄道による冷凍鶏肉の輸入が可能となった。このため、2020年1〜6月の冷凍鶏肉輸入量は前年同期比85.5%増の64万3411トンであった(表10)。鶏肉需要の高まりを背景に、国内鶏肉価格が上昇傾向にあることや、米国およびロシアなどからの農産品輸入を強化していることから、今後の鶏肉輸入量は、このまま高水準を維持するのではないかと考えられる。


 
鶏肉調整品輸出量は輸入国の需要減により大きく減少
  COVID‐19により中国国内で一時的に工場の稼働停止や物流の停滞などがあったことに加え、輸入国側で外食消費が減少したことにより、2020年1〜6月の鶏肉調製品の輸出量は前年同期比13.6%減の11万3458トンとかなり大きく減少した(表11)。
 

 
 (調査情報部 寺西 梨衣)