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海外情報 畜産の情報 2020年10月号

中国における鶏肉調製品の生産・輸出動向

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調査情報部 寺西 梨衣、安宅 倭

【要約】

 日本では、女性の社会進出や高齢化などを背景とした食の外部化により、鶏肉加工品の需要が増加している。このため、鶏肉の加工用仕向け量も増えているが、鶏肉調製品の輸入量も増加している。鶏肉調製品の主な輸入先の一つである中国では、鶏肉調製品の輸出量は増加傾向にあるものの、自国内で消費する鶏肉加工品の需要も増加している。鶏肉調製品生産企業は、今後とも生産量、輸出量ともに増加させる意向はあるが、鶏肉および鶏肉加工品の中国国内での需要や国際情勢が、輸出量や価格に大きな影響を与えることになる。

1 はじめに

 日本では、女性の社会進出や高齢化などを背景とした食の外部化により、コンビニエンスストアやファストフード、総菜などに利用されている食肉加工品の需要が増加している。このうち、唐揚げ、焼き鳥などの鶏肉加工品は日本でも生産されているが、中国やタイからの鶏肉調製品の輸入も増加している。本稿では、輸入量の4割を占める中国における鶏肉調製品の生産状況と日本への輸出動向について、2019年12月の北京市、山東省および河北省における調査を基に報告する。
 なお、本文中において、「鶏肉加工品」とは、鶏肉を主原料として焼く、ゆでる、煮る、蒸す、乾燥する、調味するなどの製造行為を施した食品を指し、このうち各国内で生産されたものをそれぞれ「日本産鶏肉加工品」および「中国産鶏肉加工品」とする。また、「鶏肉調製品」とは、鶏肉加工品のうち日本の財務省「輸入統計品目表(実行関税率表)」の統計番号1602.32ー290に含まれる、輸出入に係る製品を指す(図1)。ただし、中国から日本へは、後述の家畜衛生条件に従って製造し加熱処理された「鶏肉調整品」に限り輸入することが可能である。
  なお、本稿中の為替レートは、1元=15.2円(2020年8月末TTS相場:15.20円)を使用した。
 

2 日本における鶏肉加工品の需給動向

 日本では、2019年は鶏肉を164万トン生産し、56万トン輸入している(図2)。これらの鶏肉を原料として日本産鶏肉加工品が生産され、2019年に加工用に仕向けられたのは、国産鶏肉のうち4万5649トン、輸入鶏肉のうち9541トンであった(図3)。
 




 

  また、日本は多くの鶏肉調製品を輸入しており、同年の輸入量は製品重量ベースで51万トン(注1)であった(図4)。輸入先は、原料肉やその加工費が日本より安価なタイおよび中国が大半を占めている。輸出国で鳥インフルエンザが発生すると、その国からの鶏肉輸入は原則として停止されるが、鶏肉調製品は、輸出国の家畜防疫体制や、製品の原料となる鶏を飼養している農場、原料肉を扱う食鳥処理場および鶏肉加工施設が衛生条件を満たし、製品に一定条件下で加熱処理が施されていれば、発生いかんに関わらず、日本が認定する施設からは断続的に対日輸出が可能である(注2)。このため、タイおよび中国で、2004年1月の高病原性鳥インフルエンザの発生以降、輸出品を鶏肉から鶏肉調製品に切り替えたことにより、日本の輸入量は増加傾向で推移している。中国産鶏肉調製品はタイ産より安価であるが、中国で食品安全に関する問題(注3)が発生したことや、タイ産は日本の製品規格に合ったカットや調製方法などにより品質面で優位に立っているため、2019年の輸入量のシェアは、タイが約6割で中国が4割弱となっている。なお、仕向け先を見ると、中国産は主に外食など業務用に、タイ産は業務用に加え小売にも仕向けられる傾向があるとされている。
 このように、鶏肉の加工用仕向量および鶏肉調製品輸入量は増加傾向にあり、鶏肉加工品の需要も同様に増加基調にあることが分かる。
 なお、日本における鶏肉調製品の利用実態の詳細は、『畜産の情報』2015年9月号「鶏肉調製品の輸入および利用実態に係るアンケート調査の結果〜鶏肉調製品の輸入量は今後も増加と予想〜」(https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2015/sep/spe-03.htm)や、当機構ホームページの「サラダチキンの需給動向について」(https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000076.html)を参照されたい。
 


 

(注1) 統計品目番号1602.32−290の実重量であって、肉、くず肉または血の重量が全重量の20%を超えるものを指し、鶏肉以外のもの(串、野菜、調味液など)も含有された重量となる。
(注2) 日本が鳥インフルエンザについて清浄と認めていない国から鶏肉調製品などの加熱処理された家きん肉等を日本に輸出する場合は、原則として、(1)輸出国政府が鳥インフルエンザなどの疾病の国内の発生状況を把握している、(2)原料肉を生産する農場において、と殺前21日間は鳥インフルエンザが発生していない、(3)食鳥処理場や鶏肉を加工し調製品を製造する施設が日本国政府の指定を受けている、(4)家きん肉等の原料に供される家きんについては(3)の食鳥処理場で輸出国の政府機関の検査官が行うと殺の前後の検査により、伝染性疾病に感染している恐れのないことが確認されている、(5)(3)の施設において、一定の条件を満たす加熱処理をするーなどの条件を満たす必要がある。詳細は、日本の農林水産省動物検疫所ホームページ「家きん肉等の家畜衛生条件」(https://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/chicken-meet.html)に掲載された各国の条件のうち、「下記の家きん肉等は、家畜衛生条件に従って加熱処理されたものに限り輸入することができます。」と書かれたものを参照されたい。中国の施設認定や製品の加熱条件については詳細を後述する。
(注3) 2007年12月から2008年1月にかけて発生した、ギョーザから有機リン系薬物メタミドホスが検出された「中国製冷凍ギョーザ事件」や、2014年7月に発覚した、中国の食品加工工場が製造した食肉加工食品に消費期限切れの鶏肉などを使っていた「食品消費期限切れ事件」など。「食品消費期限切れ事件」では、事件の原因となった工場で生産された食品が日本や米国など多数の国に輸出されており、世界の食品企業が取引を中止する事態となった。

3 中国における鶏肉加工品の生産状況

(1)原料鶏肉の供給状況

 中国の食肉供給を見ると、鶏肉やアヒル肉などの家きん肉は、豚肉に次いで多く生産されており、2019年の生産量は2239万トンであった。このうち約6割の1375万トンが鶏肉である。肉用鶏には、在来種である「黄羽肉鶏」と、欧米などから導入された外来種である「白羽肉鶏」の2種が飼養されており、鶏肉生産量のうち約7割が「白羽肉鶏」から生産された鶏肉(以下「白羽鶏肉」という。写真1)である(注4)
 これらの家きん肉は、生鮮肉を家庭や外食で調理して食すほか、伝統的にジャーキーなどに加工されてきた(写真2)。また、家きん肉の一部は、東南アジアなどに輸出されているが、国内で高病原性鳥インフルエンザなどが発生すると家きん肉の輸出が停止されてしまうため、近年は、疾病の発生に左右されずに輸出することが可能な鶏肉調製品の生産に力を入れている。
 現地専門家によると、鶏肉調製品輸出量の7〜8割程度を占める日本向けの原材料は全て白羽鶏肉であるとのことであり、鶏肉調製品の生産動向は、白羽鶏肉の生産や国内消費動向に左右される。
 





 

(注4) 中国の鶏肉生産や消費動向、需給見込みについては、『畜産の情報』2020年5月号「中国の肉用鶏産業の現状と鶏肉需給の見通し」(https://www.alic.go.jp/content/001177622.pdf)を参照されたい。また、直近の需給動向については、本誌の需給動向(海外)「鶏肉供給体制は整うも、需要増により輸入量は大幅に増加」(P.53)を参照されたい。

(2)鶏肉調製品の生産体制

 鶏肉加工品は、鶏肉を仕入れて生産する専門企業もあるが、中国においても日本と同様に垂直統合が進み、大半を養鶏のインテグレーターが生産している。今回調査を行った鶏肉加工品生産企業3社は、国内仕向け用の加工品、輸出用の鶏肉調製品の両方を生産しており、鶏肉調製品専用の工場を所有していた。
 また、3社ともグループ会社内に直営養鶏場だけでなく、飼料生産会社や種鶏(PS)生産会社、食鳥処理場を所有しており、安定的に原料となる鶏肉を調達できる体制を整えていた。このようなインテグレーターでは、輸送コストや衛生管理面の確保などの理由で、養鶏場や食鳥処理場などの関連施設を100キロメートル以内の近隣に配置しており、調査を行った3社は全て食鳥処理場と加工工場が隣接していた。
 なお、このような工場は環境規制により都市部から離れた地域に立地しているが、周辺地域の農民を雇うことで従業員を確保するとともに、工場敷地内に食堂や寮も併設していることがある。このようにインテグレーターは農村振興を重視する政府の方針に従い、雇用創出や農民の収入確保による地域貢献にも取り組んでいる(写真3、4)。
 





 

(3)鶏肉調製品の生産工程

 現地専門家によると、中国国内で生産されている鶏肉加工品は、加熱品、熟成品、味付け品の三つに分類できる。加熱品は唐揚げ、焼き鳥、サラダチキン、ジャーキーなど多種にわたる。熟成品はハム・ソーセージ類を指し、味付け品は生鮮肉をタレや香辛料で下味付け(前調理)した商品である。今回調査を行った企業も唐揚げや焼き鳥などの加熱品を生産し、製品の一部を鶏肉調製品として日本や英国・オランダなどに輸出していた。当企業もインテグレーターであるため、養鶏場や食鳥処理場も自社で所有しているが、同社の鶏肉調製品製造工場内を訪問することができたので、その工程を報告する。
 まず、隣接または100キロメートル以内にある食鳥処理場から鶏肉調製品用にカットされた鶏肉を仕入れる。工場内では、(1)商品に合わせて鶏肉をカットし、(2)必要に応じて味付け作業を行う(写真5)。(3)また、つくねや肉まんなどの加工度が高い製品を作る場合は、手作業で加工・成形作業を行う(写真6)。その後、(4)蒸す、油で揚げるなどの加熱調理を行い(写真7)、(5)個包装された後、(6)金属探知などの検査を受け(写真8)、合格したものが(7)冷凍保存され、出荷される(図5)。
 






 




 

 
 各工程を行う作業エリアごとに温度と湿度が空調設備により徹底管理されており、作業に当たっては、工程ごとに作業員の中にグループリーダーや衛生管理職員を配置し、進捗確認および衛生管理を行っている。他にも、ISO 22000(注5)などを取得し、HACCPによる管理の下で生産するなど、衛生管理は徹底されている。
 また、これら工程のほぼ全てを機械で行っている企業もあれば、(1)のカットや(3)の加工・成形の工程を全て人が作業している企業もあるが、近時の人件費の上昇が経営課題となってきており、新たな大型機械の導入を検討している企業も多い。
 なお、鶏肉調製品を生産している工場やその原料肉を供給している食鳥処理場は、輸出施設認定を受けている。日本へ輸出する場合は、中国政府による輸出施設認定に加え、中国政府家畜衛生当局が、指定基準(注6)に適合すると認められる加熱処理施設を日本政府の家畜衛生当局に申請し、日本側の指定を受ける必要がある。また、鶏肉調製品は、(1)煮沸し、飽和水蒸気に触れさせ、又は食用油で揚げることにより、中心温度を1分間以上摂氏70度以上に保つ、(2)(1)に規定する方法以外の方法により、当該家きん肉等の中心温度を30分間以上摂氏70度以上に保つー必要がある。
 これら衛生面や品質面の要件を満たすため、日本の輸入販売企業が中国側の工場の設備投資や作業員への技術指導を行っている事例もある。

(注5) 食品安全マネジメントシステムに関する国際規格。
(注6) 中国から日本への鶏肉調製品輸出に係る衛生条件に定められている「指定基準」は、「中国から日本国向けに輸出される加熱処理家きん肉等に関する家畜衛生条件案」(https://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/pdf/cn_ht_chicken_meat.pdf)を参照されたい。

4 中国産鶏肉加工品の需要

 現地専門家によると、鶏肉加工品の総生産量を把握する統計はないが、インテグレーターによる生産量を集計すると、2018年は200万トンの鶏肉加工品が生産された。このうち180万トンが中国国内で消費されており、1割強が加熱品、7割強が味付け品である。これらは、小売やコンビニエンスストア、ファストフードなどの外食に出荷されている。
 一方、20万トンが輸出されているが、このうち16万トンが日本向けで、4万トンがEU向け、残りのわずかが中央アジアや中東にも輸出されている。訪問した3社のうち1社は、1年間で2〜3万トン輸出しているとのことであった。また、中東に輸出している企業では、製造工場に供給される鶏肉は全てハラール(注7)方式でと殺され、製造工場もハラール方式に対応しているため、製品も全てハラール製品とのことで、輸出先国の需要に応じた製造体制が確保されていた。
 中国国内外で消費されている鶏肉加工品の種類と需要動向については以下の通りである。

(注7) イスラム教において「許されている」という意味。食肉の場合、豚肉以外の食肉で、戒律にのっとりと畜、処理、調理された製品を指す。

(1)国内消費

 中国では鶏肉加工品として加熱品、熟成品、味付け品が生産され、いずれも国内で流通されている。
 加熱品は、鶏肉の各部位をしょうゆなどで煮込んだ商品やジャーキーなど、総菜や間食として販売されているものが多い(写真9)。しかし、近年は、家庭で加熱するだけで食べることができる調理済み冷凍食品も多く販売されるようになった。これら冷凍食品は、中国の伝統的な家庭料理ではなく、チキンナゲットやチキンカツなど欧米の料理が多い。このような商品の消費が増えたのは、インテグレーターが輸出用に生産していた商品と同様の商品が国内でも販売されるようになったことで、消費の裾野が広がったためと言われている。日本でも近時需要が増加したサラダチキンも、同国内の健康志向の高まりによりむね肉の消費が増えたため、スーパーマーケットなど小売店で販売される機会が増えているとのことであった。
 
 
 熟成品はハム・ソーセージなどで、豚肉製品が多いが、鶏むね肉のハムや、豚肉と鶏肉のソーセージなども見かけることがあった(写真10)。
 
 
 味付け品は、生肉に味付けしたもので、中華風のタレや香辛料を絡めて小分けされたものなど、消費者ニーズに応えるべく多種多様な商品が販売されていた(写真11)。
 
 
 中国でも、都市部への人口集中や、生活水準の向上によって外食・中食が増加したことで加工食品の需要は全般的に増加しており、特に中食の需要が顕著であると言われている。今回調査したスーパーマーケットなど小売店では、必ず中国産鶏肉加工品が販売されていた。
 一般の小売店以外に、製造工場が併設した直売店もあり、工場で生産された冷凍鶏肉、鶏肉加工品に加え、レバーの煮込みなどの総菜も販売されている。このような直売店では、市内のスーパーマーケットより安価で購入することができる(写真12)。
 
 
 また、近年はファストフード店も拡大・普及している。大手外資チェーンの店舗数も拡大しているが、中国発のファストフード企業も設立され、店舗数を増加させている。このような企業では、ジャーキーに加えてフライドチキンなども販売することで、さらなる需要喚起を図っている。

(2)輸出

 中国は、EUには、蒸し鶏など加工度の低い製品を輸出し、日本や韓国、英国には加工度が高い製品を輸出している。特に日本向け商品には、唐揚げや焼き鳥、チキンナゲットなど、日本の食生活に欠かせない商品が多い(写真13)。
 
 
 これら鶏肉調製品の輸出量は増加傾向にある。これは、疾病発生に左右されずに、一定の品質が確保された商品を、安価に安定して輸出できる体制を構築した中国側の要因と、外食や中食需要が増加しているものの人件費などのコスト上昇により、国内でのこれ以上の増産が困難という輸入国において、それに応える体制を確保した中国への一定の評価・信頼を有しているという状況が考えられる。
 しかしながら2019年は、前年からわずかに減少した。ASF(アフリカ豚熱)による中国や周辺国での鶏肉需要増加の余波により、鶏肉調製品の輸出が伸びなかったという可能性はあるが、因果関係は明らかではない。さらに2020年上半期を見ても、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)により中国国内で一時的に工場の稼働停止や物流の停滞などがあったことに加え、輸入国側で外食消費が減少したことにより、前年同期比13.6%減の11万3458トンとかなり大きく減少した(表)。輸入国の需要を支える体制を構築した中国企業の、今後の生産体制や輸出戦略が注目されている。
 

5 今後の中国国内の鶏肉加工品需給動向と日本への輸出

(1)消費形態の変化

 前述の通り、都市部への人口集中、生活水準の向上により外食・中食が増加したことで、鶏肉加工品の国内需要が増加している。また、今までは鶏を丸ごと煮込む料理などが多く、部位別の消費に留意する必要性は軽微であったが、食の欧米化によるもも肉やむね肉のフライなど新しい食べ方の普及に伴い、消費部位に変化が生じている。また、健康志向の高まりにより、サラダチキンなどむね肉で作られた商品も増加していると言われ、日本向け鶏肉調製品と同じものが、中国国内でも消費されるようになってきた。
 2020年は、COVID−19により外出が制限されたため、一時的に外食が減少し、宅配や家庭での消費が増加した。また、小売店などでは、保存が可能な冷凍生鮮肉や加工品の買いだめが起こったとも言われている。これにより、生鮮肉と加工品の流通や消費動向が変化した可能性もあるが、食肉加工品消費の統計がなく、詳細は不明である。なお、COVID−19流行中に外出制限や交通制限があったものの、その後すぐ食肉加工工場も稼働を再開するとともに、政府の指示により消費地に食料品が滞りなく輸送されたり、必要量の肉や野菜が各家庭に配給されたりした。このため、本稿作成時において、食肉加工品の生産や流通に大きな構造変化があったという情報は把握していない。

(2)今後の生産および輸出の見通し

 中国の養鶏にとって、鶏肉および鶏肉調製品の輸出は重要な取り組みであると考えられている。特に、高度に加工された製品を高い価格で販売することが可能である日本を、重要な輸出先と認識しており、国内の鶏肉需給の動向に関わらず、安定的に輸出したいと考えている企業も多い。
 しかし、中国国内では鶏肉の増産が続いているものの、豚肉の生産量はASFの影響から完全には回復していない。また、近年は人件費などの生産コストが上昇し、労働者の確保も難しくなってきているため、鶏肉調製品の生産体制は安定しているとは言えない。
 また、2019年11月には米国からの鶏肉輸入停止を解除し、2020年1月の米中経済貿易協定の第一弾の合意を受け米国からの鶏肉を含む農産品の輸入を増加させるとしたこと、鶏肉および鶏肉調製品の主要輸出国であるタイが環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への参加を表明していること、輸入国においてCOVID−19からの消費の回復の見通しが不透明であることなど、中国の生産体制や輸出競争力、輸出先の需要に影響を与える要因が多く、今後の生産および日本への輸出動向の見通しは困難である。
 一方で、輸出国を見ると、安価な中国産と高品質のタイ産、輸入国を見ると、高い加工度を要求する日本や英国と、低い加工度でよいEU、といったように、供給面、需要面ともに役割分担はできているため、今後この需給情勢に大きな変化が生じることは考えにくいものの、輸出国における生産コストの増加傾向や輸入国における需要、政情の不安定さなどといった不安要素について、引き続き留意が必要と考える。

6 おわりに

 国内外での鶏肉調製品の需要が増加する中、中国による生産および輸出も増加傾向で推移しており、中国国内の大手インテグレーターは、さらに増加させる意欲を持っている。しかし、ASFによる食肉供給不足が解消されておらず、国際情勢も不安定であるため、生産、輸出体制は安定しているとは言えない。
 比較的安価な鶏肉調製品の多くを中国から輸入している日本にとって、中国における鶏肉需給をめぐる情勢と鶏肉加工品の消費動向は、今後も注視していくべきと考える。



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