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海外の需給動向【牛乳・乳製品/アルゼンチン】畜産の情報  2020年12月号

2020年の生乳生産量は直近5年間で最大となる見込み

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1〜9月の生乳生産量は前年同期比7.8%増
 アルゼンチン農牧漁業省(MAGyP、以下「農業省」という)によると、2020年1〜9月の生乳生産量は、前年同期比7.8%増の799万1000キロリットルと、前年同期をかなりの程度上回って推移している(図19)。これは、上半期において生産者乳価(ペソ建て)が引き続き上昇傾向で推移したこと(後述)や高温となった前年の夏と比べて気候などの状況が大幅に改善したためで、月別生産量も一貫して前年同月を上回って推移している。
 

 
 この一方で、コルドバ州東部やブエノスアイレス州西部といった主要生産地域の一部では、依然として降水量の不足や牧草の生育状況の悪化が見られる。また、一部の生産者では、牧草地をトウモロコシや大豆といったより収益性の高い作物生産に転換する動きも見られる。
 直近5カ年(2015〜19年)の生乳生産量は、2015年に1206万1000キロリットルを記録したが、その後は、輸出課徴金の賦課など経済社会政策の影響、天候不順や洪水といった自然災害の影響などにより2015年を下回り、1000万キロリットル台で推移した(図20)。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が10月20日に公表した「GAIN Report」によると、2020年の生乳生産量は、前年比7%増と前年をかなりの程度上回ると見込まれている。この場合、2020年は、2015年の実績には及ばないものの1100万キロリットル台を回復し、直近5カ年で最大の生乳生産量になると見込まれている。

 
1〜9月の全粉乳輸出量は前年の2倍以上に増加
 直近5カ年(2015〜19年)の主な乳製品の輸出量は、年ごとに増減があるものの減少傾向で推移している(表17)。
 

 
 2020年1〜9月の輸出量は、米ドルに対するペソ安により価格競争力が高まったことや国内市場における収益性が低下したことなどから、ホエイを除き前年同期を上回っている。品目別に見ると、主要な輸出品目である全粉乳は、前年同期比114.1%増の8万6700トンと2倍以上に増加している。最大の輸出先であるアルジェリアのほか、それに次ぐブラジル向けが、それぞれ前年同期比2.8倍、同1.4倍と大幅に増加している。またチーズは、同11.4%増の3万トンとかなり大きく前年同期を上回っている。最大の輸出先であるブラジル向けは前年同期を下回っているものの、これに続くチリやロシア向けが前年同期を大幅に上回っている。

生産者乳価は上昇傾向で推移するものの、コスト高により生産者の収益性は低下
 農業省によると、2020年の生産者乳価(ペソ建て)は、前年に続き上昇傾向で推移している(図21)。特に2019年はこの傾向が顕著で、生産者乳価は1〜12月の1年間で75%上昇した。2020年9月の生産者乳価は、前年同月比21.3%高の1リットル当たり19.07ペソ(約25円:1ペソ=1.33円)となった。

 

 一方で、2020年3月には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止対策として、全国的な都市封鎖措置が講じられた。その後、この規制は緩和されつつあるものの、10月時点で一部地域では同措置が継続されている。また、同国政府は、COVID-19による経済環境の大幅な悪化に対応するため、国内経済への影響を緩和し国民への物資の安定供給を図ることを目的として、乳製品を含む食料品などの生活必需品の消費者向け販売価格を2020年3月6日付け店頭価格に凍結するよう義務付ける制度を導入した。「GAIN Report」によると、こうした対策の効果もあり、乳製品の国内消費は、COVID-19発生当初の予想ほど落ち込んでいないものの、生産者にとっては、急激なインフレにより労働費などの生産コストが上昇したため、急速に収益性が低下しているとしている。

(調査情報部 井田 俊二)