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国内の需給動向【牛乳・乳製品】 畜産の情報 2021年1月号

乳製品需要に回復の兆しも、脱脂粉乳・バター在庫量は高水準が継続

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令和2年10月の生乳生産量、1.7%増
 令和2年10月の全国の生乳生産量は、61万2391トン(前年同月比1.7%増)と、元年9月から14カ月連続で前年を上回って推移している(農林水産省「牛乳乳製品統計」、図15)。地域別に見ると、北海道が34万5253トン(同2.2%増)、都府県が26万7138トン(同1.1%増)といずれも前年同月をわずかに上回った。
 

 
 また、今年度の生乳生産量の累計(4〜10月)は、435万1425トン(前年同期比1.4%増)と前年をわずかに上回った。地域別に見ると、北海道は244万6008トン(同2.2%増)と前年同期をわずかに上回った。都府県についても、190万5417トン(同0.5%増)と増加に転じており、東北、東山、近畿、中国および九州地域の増加がこれをけん引している。特に、中国地域は大規模酪農経営における増産などにより、同6.6%増と北海道以上の伸びを見せている。

10月の乳製品向け処理量、前年同月比5.6%増
 10月の生乳処理量を用途別に見ると、牛乳等向けは35万2934トン(同0.9%減)と前年同月をわずかに下回った。一方、乳製品向けは25万5707トン(同5.6%増)と前年同月をやや上回った。
 乳製品向け処理量を品目別に見ると、クリーム向けは6万851トン(同0.9%増)と9カ月ぶりに前年同月を上回り、脱脂粉乳・バター等向けも、11万5308トン(同17.1%増)と前年同月を大幅に上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」、農畜産業振興機構「交付対象事業者別の販売生乳数量等」)。

バターの10月末在庫量は前年同月比4割増の水準
 上述の通り生乳生産量が増加傾向で推移する中、令和2年10月はこれまで好調だった牛乳などの飲用需要が停滞し、脱脂粉乳・バター等向けが前年同月を大幅に上回ったため、バターの生産量は4645トン(前年同月比16.8%増)と前年同月を大幅に上回った。一方、推定出回り量は本年5〜8月は同10%以上の減少幅で推移したが、これまでの家庭用需要の伸びに加えて、各種経済対策の実施も背景に、業務用のポンド・シートバターの需要が戻りつつあるため、9月以降減少幅が縮小し、回復の兆しが見られる。こうしたことから、10月末現在のバター在庫量は3万7951トン(同44.5%増)と、引き続き高水準で推移しており、年末の最需要期における安定供給は確保されるものと見込まれる。(農林水産省「牛乳乳製品統計」、図16)。
 

 
脱脂粉乳の出回りは堅調
 10月の脱脂粉乳生産量は前年同月比20.3%増の1万219トンとなった。こうした中、推定出回り量は、当機構が実施する生乳需給改善促進事業(注)の実施が進展する中、大容量タイプのはっ酵乳の販売が好調であることなどから比較的堅調に推移しており、同月は同16.8%増の1万2042トンとなった。この結果、同月の期末在庫量は、8万164トン(同20.9%増)となった(図17)。
 

 
(注) 脱脂粉乳を飼料用などの需要がある分野で活用する取り組みを支援する事業。農林水産省の要請に基づき当機構が実施している。

 なお、脱脂粉乳およびバターの在庫量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、学校給食用牛乳生産量や乳製品の業務用需要が減少し、一時的に過剰となった生乳の廃棄を回避するため増産されたことで、本年の春先から高い水準で推移してきたが、生乳需給改善促進事業の実施や季節的な変動と業務用需要の回復傾向などが相まって、令和2年9月と10月は減少している。
 
(酪農乳業部 鈴木 香椰)