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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2021年1月号

9月の牛肉輸出量、再び減少に転ずる

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韓国、台湾、中国向けは記録的ペースを維持
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2020年9月の牛肉輸出量は前年同月比5.6%減の10万8352トンと前年をやや下回った(表1)。前月の米国の牛肉輸出量は、本年4月以降の減少基調から5カ月ぶりに増加に転じていたものの、9月は再び減少する結果となった。
 
 
 また、2020年1〜9月の累計輸出量は、5、6月に落ち込んだこと(それぞれ前年同月比30.9%減、同33.0%減と大幅に減少)を受け、前年同期比6.3%減の96万8202トンとなった。なお、USDAは、5、6月の落ち込みについては、既報(『畜産の情報』2020年12月号)の通り、4月中旬以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う食肉処理場の操業停止および処理能力の低下によりと畜頭数・牛肉生産量が減少したことや、その影響による牛肉卸売価格の上昇により米国産牛肉の価格競争力が低下したことが要因であるとしている。
 9月の輸出量を主要輸出先別に見ると、首位の日本向けは2万8517トンで前年同月比0.6%減の微減だったのに対し、第4位のメキシコ向けは、9045トンで同38.4%減と大幅に減少した。一方、その他の主要輸出先では増加しており、第2位の韓国向けが同4.9%増の2万6700トン、第3位のカナダ向けが同4.5%増の1万473トン、第5位の香港向けが同4.3%増の8762トン、第6位の台湾向けが同13.5%増の8140トンとなった。なお、これらの輸出先と比べ絶対量は多くないものの、中国向けは同3.3倍の5714トンと大幅に増加し、2020年1〜9月の累計でも前年同期比で2.4倍の増加となっている。
 こうした状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、「9月の牛肉輸出量は前年を下回ったものの、中国、ペルー向けが大きく増加し、カナダ、南アフリカ向けも好調であった。COVID-19は、特にメキシコや中南米向けなどで引き続き悪影響を与えている。また、多くのアジア市場では、レストランの来客数やフードサービスの営業は通常の状態には戻っていないが、特に8、9月の韓国、台湾、中国における米国産牛肉に対する堅調な需要は回復を証明するものである。競合する豪州産牛肉の供給が厳しい状況にあるということもあり、米国産牛肉は大きなアジア市場のシェアを獲得する絶好の機会を得ている。完全な回復には時間がかかるだろうが、USMEFとしては、アジアの牛肉需要は観光・旅行者に依存するところが大きいと考えているため、米国産牛肉には現在の勢いを維持してもらいたいと思っている」とコメントし、COVID-19の影響が続く中においても記録的な輸出ペースが続く韓国、台湾、中国向けを中心としたアジア市場への期待感を表明している。
 また、日本市場については、「9月の日本向け輸出量は減少したが、日本では豪州およびカナダ産の輸入量が減少しており、米国産牛バラ肉(ショートプレート)やタンなどの特定部位は昨年の水準を上回っている。このため、同月の日本の牛肉輸入量に占める米国産の割合は43.7%と増加傾向にある」と分析している。

フィードロット飼養頭数、4カ月連続で前年同月より増加
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年11月20日に公表した「Cattle on Feed」によると、10月のフィードロット導入頭数は前年同月比11.0%減の219万2000頭と前年同月をかなり大きく下回った。また、出荷頭数は同0.1%減の187万3000頭と前年同月並みとなった。
 この結果、2020年11月1日時点のフィードロット飼養頭数は、同1.3%増の1197万3000頭となり、4カ月連続で前年を上回った(図1)。11月は、前述の通り導入頭数は減少したものの、10月からの繰り越し頭数が多かったことに加え、季節的に飼養頭数が増加する時期であることから、前月比では25万6000頭の増加となり、記録的高水準を維持する結果となった。
 
 
 なお、現行の形式で調査が開始された1996年以降では、11月としては過去最高の飼養頭数となっている。
 フィードロット飼養頭数は、堅調な肥育牛価格を背景にフィードロットの収益性が良好であったため、記録的水準で推移していた。また、例年、夏場の需要期に減少した後、秋以降に回復するという傾向にある。
 しかし本年においては、COVID-19の拡大に伴う牛肉市場の混乱や、肥育牛価格が低迷したこと(図2)などによりフィードロット導入頭数が減少し、4、5月の飼養頭数も大幅に減少した。その後、大幅に減少していたと畜頭数が前年並みに回復し(図3)、肥育牛価格が緩やかながら回復したことなどから導入頭数も増加に転じ、8月以降の飼養頭数は再び記録的水準にまで達している。
 


 
(調査情報部 藤原 琢也)