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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2021年3月号

2020年の牛と畜頭数、前年をわずかに下回る

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牛肉輸出量、中国向けは7月以降大幅に増加
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2020年11月の牛肉輸出量は前年同月比13.2%増の12万5639トンと前年同月をかなり大きく上回り、2カ月連続で増加した(表1)。

 
 また、同年1〜11月については、1〜3月は前年同月を上回る好調なスタートとなったものの、4月以降は8、10、11月を除き前年同月を下回った。特に5、6月がそれぞれ同30.9%減、同33.0%減と大幅に減少した結果、通期で見ると前年同期比3.7%減の121万1021トンとなった。
 11月の輸出量を主要輸出先別に見ると、首位の日本向けは前年同月比1.9%増の2万8639トン、第2位の韓国向けも同4.8%増の2万3703トンと小幅な増加だったが、第3位のメキシコ向けは同48.7%増の2万291トンと大幅に増加した。
 また、中国向けは7月以降毎月のように単月での過去最高数量を記録しており、11月も同約7.4倍の1万675トンと大幅に増加した(図1)。2020年通期(1〜11月)で見ても前年同期比約3.5倍となる4万1833トンとなった。

 
 11月の牛肉輸出状況について、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、「世界中の小売部門からの米国産牛肉に対する需要は非常に力強く、2021年もこの傾向が続くと期待している。一方、残念なことに、フードサービス部門は現在も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による困難に直面している。2021年の中ごろからは同部門は全体的に回復に向かうと予想されるが、国によっては依然として厳しい状況が続くと思われる」としている。
 また、「2020年11月の牛肉輸出量は2019年7月以降で最大となり、特に中国、台湾向けの輸出が好調であり、メキシコ向けでも大きな回復が見られた。中国向けについては記録を更新し続けている。同年2月に第1段階の米中経済貿易協定が発効し、夏場以降は中国のフードサービス部門の需要が回復したため、需要が伸びている。9月以降は月間牛肉輸出量において豪州を抜いて米国が首位に立ち、中国向け穀物肥育牛肉の最大の輸出国となっている」と分析している。
 さらに、「メキシコの牛肉需要はCOVID-19の影響を大きく受けており、2020年の同国向け輸出量は大幅に減少していたが、11月はCOVID-19拡大前の水準まで回復しており、今後に期待が持てる結果となった。台湾向けについては、過去最高を記録した2019年を上回るペースで推移しており、12月の結果次第では年間輸出量の最多記録を更新する可能性がある。米国は台湾における冷蔵牛肉市場を独占し続けており、現在は76%の市場シェアを獲得している」とコメントしている。

2020年の牛と畜頭数は減少したものの、牛肉生産量は前年並み
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2021年1月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2020年12月の牛と畜頭数(連邦検査ベース)は、前年同月比0.8%増の273万4000頭と前年同月をわずかに上回った(図2)。また、同年の年間と畜頭数は、前年比2.8%減の3215万1000頭と、前年をわずかに下回る結果となった。

 
 牛と畜頭数は、いわゆるキャトルサイクルの拡大局面にあることで飼養頭数が増加していることに伴い、2016年以降は4年連続で前年を上回っており、2020年も3月まで増加傾向にあった。しかし4〜5月は、COVID-19の拡大に伴い多くの食肉処理場で従業員の感染が拡大し、処理場の一時閉鎖や操業停止が行われ、同期間におけると畜・加工処理能力が低下した。その後、6、9、12月のと畜頭数は前年同月を上回るなど回復基調を見せたものの、通期で見ると、好調であった前年の水準には届かなかった。
 また、2020年の牛肉生産量(枝肉重量ベース)は前年並みとなる1231万6000トンなった。と畜頭数が減少したにもかかわらず牛肉生産量が前年並みとなった要因として、同年4、5月において、COVID-19の拡大に伴う食肉処理場の閉鎖やと畜能力の低下により、フィードロットで飼養され、出荷適期に達した肥育牛が出荷できなくなり、肥育期間が必要以上に長期化するなど、通常は計画的に行われているフィードロット経営に混乱が生じたことが挙げられる。この状況は徐々に改善されたものの、2020年通期で見ると、肥育期間の長期化に伴う出荷時生体重の増加や1頭当たり枝肉重量の増加といった現象が生じたため、と畜頭数と牛肉生産量の増減率に乖離かいりが生じたものと考えられる。

(調査情報部 藤原 琢也)