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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年5月号

大雨の影響で肉牛取引価格が反発、輸出量は依然として低水準で推移

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東部地区若齢牛指標(EYCI)価格が再び過去最高水準まで上昇
 豪州食肉家畜生産者事業団(以下「MLA」という)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、本年1月28日に1キログラム当たり888.25豪セント(764円:1豪ドル=86円)を記録した以降は下落傾向で推移していたが、直近では900豪セントに迫る勢いで反発しており、3月29日には同896.50豪セント(771円)と過去25年間で最高値を記録した(図6)。これは100年に一度とも言われる豪州東部の豪雨による洪水の影響で道路が閉鎖されるなど、家畜市場での取引が減少したことが要因であるとされている。家畜の移動への影響は、雨水が引けば解消されるとみられ、今後の気象状況が注目される。
 

成牛と畜頭数は、前年同月の約8割、2年前同月の約6割の水準で推移
 MLAによると、成牛と畜頭数は昨年まで減少傾向で推移していたものの、2021年に入ってからはいったん増加し、2、3月はほぼ横ばいで推移しており、3月第1週は9万7301頭(前年同月同週比17%減)と前年同期の約8割となっている(図7)。また、2年前の同月同週(15万2378頭)との比較では36%減と大幅に減少している。現地報道によると、最近の豪雨も手伝い、牛群再構築の動きが加速しており、また、イースター時期における施設の定期メンテナンスなどで操業を停止する食肉処理場もあるため、今後しばらくと畜頭数が大きく増加することはないとみられている。通常であれば、今回のような豪雨が発生した際には、数量確保のため、食肉処理業者が奨励金を出して生産者に出荷を促すが、本年は牛の肥育頭数が例年よりも少ないため、このような動きは見られないとも伝えられている。

 2月の牛肉輸出量、前年同月比約3割の減少
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年2月の牛肉輸出量は、と畜頭数に増加の兆しが見えないことから、6万6818トン(前年同月比28.1%減)となった(表3)。なお、牛肉輸出量が前年同月を下回る状況は、1年以上にわたって続いている。
 輸出先別に見ると、最大の仕向け先である日本向けは、2月は同24.6%減の1万7878トンと大幅に減少しているが、前月の1万2541トンからは42.6%増と大幅に増加している。日本向けの内訳は穀物肥育牛肉が55.8%、牧草肥育牛肉が44.2%を占めた(図8)。
 


 日本に次いで多い韓国向けは、1万2110トン(同6.5%減)とかなりの程度減少したが、中東を除く他国向けに比べて減少率は小さかった。また、中国向けは、1万1676トン(同30.2%減)、米国向けは9780トン(同49.8%減)と、ともに大幅に減少した。
 中国におけるアフリカ豚熱の影響や、世界的な牛肉需要の増加、豪州国内の牛群再構築の状況など、今後の豪州産牛肉の輸出動向に影響を与える各種要因について、引き続き注視していく必要がある。
 
(調査情報部 国際調査グループ)