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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報  2021年6月号

2021年の生乳出荷量は前年比1.0%増の見込み

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2021年の1頭当たりの生乳生産量は増加の見込み
 欧州委員会によると、2021年2月の生乳出荷量(EU27カ国)は、前年同月をやや下回る1097万5730トン(前年同月比3.8%減)となった(図15)。

 
 2月の出荷量を国別に見ると、イタリア(同2.6%増)、アイルランド(同4.4%増)が前年同月を上回ったものの、ドイツ(同5.7%減)、フランス(同5.9%減)、オランダ(同5.3%減)、ポーランド(同3.8%減)、スペイン(同2.9%減)、デンマーク(同5.0%減)、ベルギー(同1.2%減)などの主要生産国では、前年同月を下回った(表10)。
 欧州委員会は3月30日に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、乳用牛飼養頭数は減少し続けているとし、2021年初頭の未経産乳用牛の飼養頭数は過去10年間で最も少なくなったとしている。しかし、2021年の生乳出荷量は、飼養頭数のわずかな減少が見込まれる一方で、1頭当たりの生乳生産量の増加により、前年比1.0%増が見込まれている。

 
乳製品価格は引き続き上昇傾向
 欧州委員会によると、バター価格は2021年に入り上昇傾向となっている。同委員会が毎週公表するバターの取引価格は、4月4日に100キログラム当たり400ユーロ(5万3200円:1ユーロ=133円)となり、2019年6月9日以来の400ユーロ台の水準に回復した(図16)。また、バター以外の乳製品価格も同様に上昇傾向となっている。この要因として同委員会は、需給見通しの中でEU域外からの乳製品需要の高まりやEU域内での好調な乳製品消費を挙げている。
 こうした中、EUの平均生乳取引価格は、2020年後半から上げ基調に転じており、2021年に入ってからも100キログラム当たり34ユーロ(4522円)を超える水準で推移し、3月は19カ月ぶりに前年同月を上回る同34.76ユーロ(4623円、前年同月比0.8%高)となった(図17)。

  

 
2020年のチーズの日本向け輸出量は前年からかなり大きく増加
 欧州委員会によると、2020年のEU域外向けの乳製品輸出量は、全粉乳(34万4799トン)が前年比9.3%増、バター(26万1368トン)が同9.0%増、チーズ(140万110トン)が同3.9%増といずれも前年を上回った一方で、脱脂粉乳(83万694トン)は同12.1%減と前年を下回った(表11)。業界団体によると、2020年の脱脂粉乳の輸出量が前年比減となったのは、EUの介入在庫の放出により輸出が増加した2019年の反動によるものとし、輸出自体は堅調に推移したとしている。
 また、EU域外向けのチーズの輸出量は、米国との航空機に対する補助金をめぐる貿易摩擦の影響(注)で同国向けが前年をかなりの程度下回る一方、日本向けは日EU経済連携協定の効果もあり、輸出量は前年をかなり大きく上回り、英国に次ぐ第2位の輸出先となった。
 同委員会は、需給見通しの中でEU域内の乳製品価格は上昇傾向にあるものの、バターや脱脂粉乳は国際競争力を維持していくとしている。2021年の輸出量について、バターは輸出需要が続くことから前年比4.0%増、脱脂粉乳は東南アジアなどからの需要により同6.0%増と見込んでいる。

(注)海外情報「英国農業園芸開発公社による米国の対EU追加関税措置によるEU産乳製品への影響の分析」 (https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002530.html)を参照されたい。
 
 
(調査情報部 小林 智也)