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海外の需給動向【牛肉/中国】 畜産の情報 2021年7月号

牛肉価格は高値で推移、輸入量も増加基調

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2020年の牛肉生産量はわずかに増加
 中国国家統計局によると、2020年の牛肉生産量は前年比0.8%増の672万トンとなった(図6)。同年第1四半期(1〜3月期)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により前年同期を下回って推移したが、中国政府が生産・流通業者に対して業務の再開を奨励したことなどから持ち直し、年間累計ではわずかに増加した。また、21年第1四半期の牛肉生産量は165万トン(前年同期比5.8%増)と増加基調で推移している。中国農業農村部が本年4月に公表した「中国農業展望報告(2021〜30)」によると、今後、牛肉生産量の増加速度は緩やかになり、21年は684万トン、10年後の30年は790万トンと見込まれている(注)
 

(注)海外情報「中国農業展望報告(2021−2030)を発表(牛肉編)」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002969.html)を参照されたい。

 

 

牛肉卸売価格は高値で推移
 2020年の牛肉消費量は、COVID-19の影響により外食需要が減少したものの、家庭内消費の増加や中国国内でのアフリカ豚熱発生による豚肉価格上昇を背景とした代替需要などから、前年比6.1%増の884万トンとなった。こうした牛肉需要の伸びに対し生産量が追いつかないことなどから、牛肉卸売価格は引き続き高値で推移している(図7)。
 


 

 「中国農業展望報告(2021〜30)」によると、21年は同国内でのCOVID-19の収束に伴い、抑制されていた外食需要が回復することなどから、牛肉消費量は前年比1.7%増の899万トンに達すると見込まれている。このため、都市部を中心に今後も牛肉卸売価格は高値で推移するとみられる。
 なお、現地関係者によると、牛肉輸入量の増加に伴い、消費人口の少ない地方都市では市場に相当量の牛肉が供給され始めていることなどから、21年3月以降、価格はわずかに低下傾向にあるとされている。
 

牛肉輸入量は引き続き増加、輸入先の多角化も進展
 国内の供給不足を満たすため、牛肉輸入量は年々増加傾向にあり、2020年の冷凍牛肉の輸入量は前年比27.6%増の207万136トンとなった(表5)。輸入先別の特徴的な動きを見ると、ニュージーランドや豪州などからの輸入量が減少する中で、米国やブラジルなどからの輸入量の増加がみられた。このほか、同年には新たにロシア、ラトビア、ポーランドからの輸入を開始するとともに、チリ、コスタリカ、ボリビアといった中南米諸国からの輸入も増加させるなど、需要の増加に応えるべく、輸入先の多角化が図られている。
 冷凍牛肉に比べて絶対量は少ないものの、国内の需要増加に伴い冷蔵牛肉の輸入量も増加を続けている(表6)。最近の動きに注目すると、冷凍牛肉と同様、米国からの輸入が突出して増加しているほか、アルゼンチンやウルグアイなど南米からの輸入の伸びが目立っている。
 「中国農業展望報告(2021〜30)」によると、国内の供給不足解消のために輸入は継続して行われるが、中国国内の牛肉供給能力が着実に向上することなどから輸入の伸びは鈍化し、21年には215万トン、30年には240万トンになると見込まれている。
 




 

(調査情報部 阿南 小有里)