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海外の需給動向【牛乳・乳製品/NZ】 畜産の情報 2021年7月号

生乳生産は前年を上回り、乳製品輸出も増加

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4月の生乳生産量、前年同月からかなり大きく増加
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2021年4月の生乳生産量は151万4000トン(前年同月比11.7%増)と前年同月をかなり大きく上回り、2020/21年度(6月〜翌5月)の累計も前年同期比2.4%増で推移している(図31)。現地報道によると、酪農主産地である北島は降雨も多く、牧草の生育も良好なことから、例年であれば5月に終了する搾乳期間を延長する農家が多いとされている。このため、5月および年度累計の生乳生産量はこのまま増加基調が続くとみられ、6月から始まる新年度も条件の良い状態で開始できるとされている。
 

中国向け輸出量が増加するも輸出総量は減少
 ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2021年4月の乳製品主要4品目(脱脂粉乳、全粉乳、バターおよびバターオイル、チーズ)の輸出量は、チーズ以外の品目で前年同月を下回った(表17、図32)。これは、主要輸出先である中国国内での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出規制が大幅に緩和され、外食需要などが回復してきた一方で、国際的な物流の混乱によるコンテナ不足などで輸出が停滞したことによるとみられている。
 



 品目別に見ると、脱脂粉乳は2万1288トン(前年同月比27.3%減)と5カ月連続で減少した。主要輸出先である中国向けが6946トン(同8.7%増)とかなりの程度増加したものの、マレーシア向け、フィリピン向けがそれぞれ大幅に減少した。
 全粉乳は、13万707トン(同2.9%減)と前年同月をわずかに下回った。主要輸出先である中国向けが6万1302トン(同25.0%増)と大幅に増加したものの、アラブ首長国連邦向け、アルジェリア向けがそれぞれ大幅に減少した。
 バターおよびバターオイルも、2万8476トン(同23.1%減)と前年同月を大幅に下回った。中国向けが8317トン(同11.3%増)、日本向けが601トン(同51.7%増)と増加したものの、サウジアラビア向けなどが大幅に減少した。
 一方、チーズは、2万8420トン(同20.7%増)と6カ月連続で前年同月を上回った。主要輸出先である中国向けが7174トン(同約3.6倍)と大幅に増加したことが寄与し、全体でも大幅に増加した。

GDT、5月も大きな動きはなし
 2021年5月18日に開催されたグローバルデーリートレード(GDT:乳製品の国際価格の指標の一つであるフォンテラ社主催の電子オークション。月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、前回(5月4日)に続き、大きな動きはなかった。(表18、図33)。
 



 現地報道によると、脱脂粉乳は東南アジアやオセアニア地域で前月に引き続き需要が減少したものの、応札の大部分を占める北アジア(注)の需要が堅調であるため、取引価格は前回比0.4%高の1トン当たり38万3000円にとどまった。全粉乳は、取引数量が増加したにもかかわらず、中国からの応札が多いことで取引価格は同0.2%高の同45万8000円とわずかに上昇した。バターについては、北アジアからの応札が増加したものの、同2.1%安の同54万7000円となった。これは、供給者側であるNZ北島での生乳生産量の増加が要因とされている。また、チーズは、東南アジアから多くの応札があり、同1.1%高の48万円となった。これは、応札に比べ取引数量が少なかったためとされている。
 このように堅調な国際価格を受けてNZ最大の乳業メーカーであるフォンテラ社は5月26日、2021/22年度(6月〜翌5月)の生産者乳価の支払見込みを、乳固形分1キログラム当たり7.25〜8.75NZドル(587〜709円:1NZドル=81円)に設定すると発表した。これは、今年度(20/21年度)の初期生産者乳価であった同5.4〜6.9NZドル(437〜559円)よりも約3割高い設定となっている。

(注) ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。
 
(調査情報部 寺西 梨衣)