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調査・報告 畜産の情報  2021年8月号

一般消費者が「赤身型」牛肉と認知する脂肪交雑程度の定量的な解明

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国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
佐々木 啓介・渡邊 源哉・石田 翔太・本山 三知代・中島 郁世

【要約】

 一般消費者が「赤身型」牛肉と認知する脂肪交雑程度を解明するため、牛肉画像を用いたアンケート調査を行った。脂肪交雑の度合いが異なる23種の牛肉サンプルを収集し画像を撮影し、これを印刷したものを一般消費者40名に配布し、それぞれについて「赤身型」「しもふり型」のいずれであるか判定させるアンケートを実施した。併せて、撮影に供した肉片の画像解析を行い脂肪交雑の外観に関するパラメータを測定するとともに、一般成分を測定した。
 アンケートデータと画像解析パラメータおよび一般成分を併せて一般化線形混合モデルによる解析を行った結果、一般消費者が「赤身型」と認知する脂肪交雑の度合いは、脂肪含量として14.1%以下、画像解析による脂肪面積割合として0.189以下であった。

1 研究の背景と目的

 消費者の国産牛肉に対するニーズには、日本で多く流通している黒毛和種のような脂肪交雑の多い牛肉を好む「しもふり指向型」と、乳用種や日本短角種など脂肪交雑の少ない牛肉を好む「赤身指向型」があることがこれまでに明らかにされている。たとえば、佐々木ら(2006)は、牛肉画像を用いたアンケート調査により、日本人消費者には「赤身・高価格着目群」「脂肪交雑・表示着目群」が存在することを示した。広岡ら(2012)も同様に牛肉画像を活用したアンケートを行い、赤身を指向する消費者群の割合が25%程度存在することを示している。さらに、Sasakiら(2017)は一般消費者を対象とした牛肉の嗜好調査とアンケートを組み合わせて実施し、赤身型牛肉を食べて好ましいと評価する消費者群は、「日本で生産される牛肉は脂肪交雑が高すぎる」という意識を他の消費者よりも強く有することを示している。これらのことから、日本人消費者の中には食べたときの好ましさも含めた「赤身指向」の消費者が一定の割合で存在していることが明らかである。
 しもふり指向型の消費者に向けた牛肉の評価は現行の牛枝肉取引規格において実施され、脂肪交雑度の高い牛肉が市場においても高価で取引される。赤身型牛肉の評価も現行の牛枝肉取引規格に基づき行われているが、一定規模の消費者が赤身型牛肉を指向しているというニーズが価格に反映されていない。このため、赤身指向型消費者に向けた「赤身型」牛肉の評価には、従来の脂肪交雑を基軸としたものとは異なる「赤身型」独自の基準に基づく評価や価格形成の判断基準が必要と考えられている。このことから、これまでに「赤身型」独自の評価基準を確立するための試みがいくつか見られてきたが、「多くの生産者−流通業者−消費者に支持され定着するような評価基準」の確立には至っていない。
 このような「赤身型」独自の評価基準を確立するためには、評価対象である「赤身型」の定義が必要である。しかし、どのような牛肉であれば「赤身型」と呼ぶことが適切であるかについては、生産者−流通業者−消費者のセクター間、あるいは各セクター内で合意可能であるとは言えないのが現状である。例えば、4〜5等級であっても、「もも」などの相対的に脂肪交雑が低い部位であれば「赤身型」と呼ぶ生産者や流通業者が存在する一方、現行の等級であれば2等級を下回る程度のものを「赤身型」として差別化を企図する生産者も存在する。実際に、北海道における日本短角種やアンガスの共励会「赤身賞」の設定、高知県での土佐あか牛の「あか牛らしさ」を重視した独自の「TBR格付」制度の導入といった事例が見られる。また、放牧による肥育や、日本短角種など黒毛和種以外の品種から生産される脂肪交雑の低い牛肉について、環境に対する配慮や動物福祉、ウシの健康への配慮といったストーリーを含めて、「赤身型」牛肉の価値とすることを企図するブランドも見られる。しかし、それらの試みの多くは、一般消費者がどのような牛肉を「赤身型」と認知しているか、すなわち、BMS No.や等級で言えばどの程度から下の牛肉を「赤身型」と判定するかについて客観的な情報を十分持たないままで進めていることが多い。一方、わが国では輸入牛肉が「赤身型」として多く流通しており、乳用種や日本短角種といった国産の「赤身型」とは外観が類似していることから、「競合品」であると考えられている。このように、単に外観をもって競合品と認識されている状況においては、生産コストにおいて劣る国産の「赤身型」牛肉は、TPPなどの新たな貿易の枠組みにおいては不利であり、輸入牛肉とは異なる国産の「赤身」ならではの新たな価値基準を示すことが必要である。
 商品の価値は、生産・販売側が提供しようとする「提供価値」と、消費者が感じる「認知価値」に分けて考えられるが、一般に「モノが売れない原因」の一つに、この提供価値と認知価値のギャップ、すなわち生産・販売側が提供しようとする価値に対して消費者がそれほど魅力を感じない場合があることがマーケティングの分野では良く知られている。「赤身型」牛肉においても、生産者・流通業者が提供しようとする価値に対して消費者はそれほど期待していないといったような「提供価値と認知価値のギャップ」が存在し、生産・流通側による「赤身型」の価値の提案が価格形成に反映されない要因となっている可能性がある。
 そこで本調査研究においては、まず「消費者がどのような牛肉を『赤身型』牛肉と認知するか」を明らかにし、「赤身型」牛肉に関する提供価値と認知価値のギャップ解消の足がかりとすることを最終目的とした。具体的には、一般消費者がどのような牛肉を「赤身型」と認知しているか、脂肪交雑の度合いや部位、脂肪交雑の細かさの影響なども含めて精密かつ定量的に調査解明することを目的とした。

2 材料および方法

 本調査研究では、種々の脂肪含量の牛肉について、実物大画像を一般消費者に送付し、その評価をアンケート調査し、消費者評価と牛肉の脂肪含量や脂肪交雑に関するパラメータとの関係を解明することとした。

(1) 種々の脂肪含量、脂肪交雑の牛肉に関する実物大画像素材作成と脂肪交雑度合に関する成分および画像解析パラメータ測定

 黒毛和種、乳用種、輸入牛について複数の部位の牛肉サンプル23種類を北一ミート株式会社(札幌市)から入手した。
 これらのサンプルから縦50mm×横40mm×厚さ5mmの肉片をサンプル当たり2枚調製し、撮影に供した。撮影にはデジタルスチルカメラ(ニコン D-850型)を内蔵したミラー型撮影装置(早坂理工株式会社 HK-333型)を用いた。撮影のバックは青色のボードとし、印刷の際にサイズを補正するために金属製定規を含めた画像と含めない画像を作成した(図1)。これらの画像データについては株式会社MIJ Labo(帯広市)において画像解析に供し、脂肪面積割合、細かさ指数などを算出した。また、撮影の終了したサンプルについて一般成分分析に供し、水分含量を常圧乾燥法、脂肪含量をソックスレー抽出法、たんぱく質含量を燃焼法にてそれぞれ分析した。
 

 

(2) 実物大牛肉画像素材を用いた消費者アンケート調査

 上記(1)で作成した画像データから実物大の印刷物を作成した。印刷において、画像に含めた金属製定規の目盛りを用いてサイズ調整を行い、L版に1サンプル当たり2枚の肉片が含まれている印刷物を作成した。これらを一般消費者に23枚を1セットとして送付し、アンケート調査に供した。
 アンケート調査は、調査会社であるドゥ・ハウス(東京都)に登録しているモニターより東京都在住の一般消費者から年齢層および性別が均等となるようランダムにサンプリングした40名を対象とし、2020年12月に実施した。実際には、画像については印刷物を回答者に送付し、設問の提示と回答はWebを用いて行った。
 印刷物の送付においては、すべての画像に3桁の乱数をコードとして付すとともに、画像の評価順序が回答に影響を及ぼす可能性を考慮し、回答者ごとに評価順序を変えるよう設計した。この評価順序の設計はラテン方格法によった。
 各画像の評価における主要な設問は以下の2点である。

 1)【XXX番】の画像は「赤身型」と「しもふり型」のどちらだと思いますか。決めにくい場合であっても強引にどちらかに決めてください。
 2)もし「赤身型」「しもふり型」のどちらとも言えないという回答が可能だとした場合、【XXX番】の画像の牛肉は「赤身型」「しもふり型」のどちらだと思いますか。

 設問1)においては、選択肢は「赤身型」「しもふり型」の二つであり、「赤身型」「しもふり型」の境界値を推定することを目的とした。一方、設問2)においては、選択肢として「赤身型」「しもふり型」「どちらとも言えない」を設定し、確実に「赤身型」あるいは「しもふり型」と言える境界値の推定を目的とした。
 これらの他、回答者の年齢層、性別、家族構成、世帯年収などのプロフィールや牛肉の喫食頻度、牛肉に対する知識や意識に関する設問も併せて設けた。
 回答者の基本的なプロフィールは表1の通りである。
 

(3) データ解析

 データ解析は一般化線形混合モデル分析により行った。
 設問1)においては、「赤身型」と判定した回答を「0」、「しもふり型」と判定した回答を「1」とし、「しもふり型」と判定する確率を目的変数、回答者の年齢層と性別、23枚の画像評価において当該画像を評価した順番、そして当該画像の脂肪含量もしくは画像解析で得られた脂肪面積割合を説明変数とし、リンク関数にロジットを用いたモデルを構築し解析した。
 設問2)においては、まず「赤身型」と判定した回答を「確実に赤身型と言える」=「1」、「どちらともいえない」「しもふり型」と判定した回答を「確実には赤身型と言えない」=「0」とし、「確実に赤身型と言える」確率を目的変数として、設問1)と同様に解析した。
 併せて、「しもふり型」と判定した回答を「確実にしもふり型と言える」=「1」、「どちらともいえない」「赤身型」と判定した回答を「確実にはしもふり型と言えない」=「0」とし、「確実にしもふり型と言える」確率を目的変数として、設問1)と同様に解析した。
 さらに、上記モデルについての推定精度を確認するため、23枚の画像に関し、上記モデルによって推定された確率値と、それぞれの設問について判定された回答結果の実測値から算出した確率値の相関について解析した。

3 結果および考察

 画像印刷物を送付した40名の回答者のすべてから有効な回答を得た。

(1) 赤身型−しもふり型の判別について

  2−(2)における設問1)の結果、すなわち各画像を「赤身型」「しもふり型」のいずれかに判別させた回答について、脂肪含量を要因に含めたモデルに関し解析した各効果の検定結果を表2に示す。
 
 

 回答者の性別、年齢層および評価順序は牛肉画像の「赤身型」「しもふり型」の判別に有意な影響を及ぼさなかった(P>0.05)一方、脂肪含量はこの判別に有意な影響を及ぼした。そこで、推定したモデルにおける脂肪含量と回答者の判定の関係を図に表すとともに、「しもふり型」と判定される確率が0.5となる、すなわち「赤身型」「しもふり型」と判定される確率が等しくなる脂肪含量を求めた(図2)。
 

 その結果、脂肪含量が増加するにしたがって「しもふり型」と判定される確率が増加し、脂肪含量が14.1%に到達するとその確率は0.5を超えた。このため、「赤身型」「しもふり型」の判定を分ける脂肪含量の境界値は14.1%であると推定された。
 続いて、同様に各画像を「赤身型」「しもふり型」のいずれかに判別させた回答について、画像解析によって得られた脂肪面積割合を要因として解析した各効果のtype3の検定結果を表3に示す。
 

 回答者の性別、年齢層、および評価順序は牛肉画像の「赤身型」「しもふり型」の判別に有意な影響を及ぼさなかった(P>0.05)一方、脂肪面積割合は、脂肪含量と同様に、この判別に有意な影響を及ぼした。そこで、推定したモデルにおける脂肪面積割合と回答者の判定の関係を図に表すとともに、「しもふり型」と判定される確率が0.5となる、すなわち「赤身型」「しもふり型」と判定される確率が等しくなる脂肪面積割合を求めた(図3)。
 

 その結果、脂肪面積割合についても、脂肪含量と同様に、増加するにしたがって「しもふり型」と判定される確率が増加し、脂肪面積割合が0.189に到達するとその確率は0.5を超えた。このため、「赤身型」「しもふり型」の判定をわける脂肪面積割合の境界値は0.189であると推定された。
 これらのモデルの予測精度について、モデルからの予測値と回答者からの回答データから算出した実測値の関係から検証した(図4)。
 

 その結果、脂肪含量、脂肪面積割合のいずれを説明変数として用いた場合であっても、構築したモデルは回答者における牛肉画像の「赤身型」「しもふり型」判定をよく説明していた。「しもふり型」と判定した確率のモデルからの推定値に関する決定係数は、脂肪含量を説明変数として用いた場合には0.8092、脂肪面積割合を説明変数として用いた場合には0.8922であり、脂肪面積割合を説明変数として用いた方が予測の精度が高いものと考えられた。本研究で用いたサンプルにおける脂肪含量と脂肪面積割合の相関係数は r=0.967と極めて高いが、脂肪含量が15%未満の16サンプルに限れば相関係数はr=0.605と必ずしも高いものではなく、これが説明変数として脂肪含量を用いた場合と脂肪面積割合を用いた場合の「しもふり型」と判定した確率の予測精度の違いの原因と考えられた。

(2) 「確実に赤身型と言える」もしくは「確実にしもふり型と言える」判定について

 2−(2)における設問2)の結果、すなわち各画像を「赤身型」「しもふり型」「どちらとも言えない」から選択させた回答について、「赤身型」と判定した回答を「確実に赤身型と言える」=「1」、「どちらともいえない」「しもふり型」と判定した回答を「確実には赤身型と言えない」=「0」と置いたデータについて、脂肪含量を説明変数としたモデル、および脂肪面積割合を説明変数としたモデルで、(1)と同様の方法で解析を行った。
 併せて、2−(2)における設問2)の結果、すなわち各画像を「赤身型」「しもふり型」「どちらとも言えない」から選択させた回答について、「しもふり型」と判定した回答を「確実にしもふり型と言える」=「1」、「どちらともいえない」「赤身型」と判定した回答を「確実にはしもふりと言えない」=「0」と置いたデータについて、脂肪含量を説明変数としたモデル、および脂肪面積割合を説明変数としたモデルで、(1)と同様の方法で解析を行った。
 その結果、「確実に赤身型と言える」判定および「確実にしもふり型と言える」判定に対しても、脂肪含量および脂肪面積割合は統計的に有意(P<0.05)な効果を有していた。具体的には、脂肪含量および脂肪面積割合が増加するに従って「確実に赤身型と言える」と判定される確率が低下した。脂肪含量および脂肪面積割合が増加するに従って「確実にしもふり型と言える」と判定される確率が上昇した。これらの解析結果から、「確実に赤身型と言える」判定の境界となる脂肪含量および脂肪面積割合、「確実にしもふり型と言える」判定の境界となる脂肪含量および脂肪面積割合を求めた。
 (1)の結果も含めると、脂肪含量については、一般消費者が「確実に赤身型」であると判定するためには11.6%を下回る必要があり、「赤身型」「しもふり型」の境界は14.1%(注)、「確実にしもふり型」と判定するためには14.6%を上回る必要があるものと推定された。また、脂肪面積割合については、一般消費者が「確実に赤身型」であると判定するためには0.15を下回る必要があり、「赤身型」「しもふり型」の境界は0.189(注)、「確実にしもふり型」と判定するためには0.207を上回る必要があるものと推定され、一般消費者が牛肉を「赤身型」と判定する脂肪交雑の度合いを推定することができた。

(注)(1)の分析結果

(3) 総合考察

 日本食品標準成分表2020年版(八訂)においては、「リブロース」「赤肉」の脂肪含量は和牛肉において40.0%、乳用肥育牛肉において17.8%、交雑牛肉において32.3%、輸入牛肉においては9.1%であり、前節で示した基準による推定を行う場合は、輸入牛肉以外の乳用肥育牛肉を含めたすべてが、少なくとも「赤身型とは言えない」ということとなる。また、熊本系の褐毛和種における「赤身を強調した」「赤毛和牛『評価基準』」策定において、肉質については「BMS No2〜4」、粗脂肪含量の実測値として10〜30%程度までが含まれることが要件とされている(守田、2017)が、前節の結果からは、「赤身を強調した」基準で評価されているものであっても、一般消費者においては「しもふり型」であると認知される可能性が高いと考えられる。このように、黒毛和種以外の牛肉を「赤身型」を差別化要素として消費者に訴求しようとしても、消費者の「赤身型」に対する認知とはずれが出てしまうという、「背景と目的」で指摘した「認知価値と提供価値のギャップ」に当てはまってしまう可能性がある。
 脂肪面積割合については、一般消費者が「確実に赤身型」であると判定するためには0.150を下回る必要があり、「赤身型」「しもふり型」の境界は0.189、「確実にしもふり型」と判定するためには0.207を上回る必要があるものと推定された。深谷ら(2019)によれば、格付BMS.Noが3の牛枝肉切開面のロース芯においても脂肪面積割合は0.2を上回っているとともに、BMS.Noが2の場合であっても脂肪面積割合のみでは0.1を少し上回るものから0.3を大きく上回るものまでレンジが極めて広い。これらの数値を前節の結果に単純に当てはめた場合、BMS.Noが3であっても一般消費者は基本的には「しもふり型」と認識するものと考えられるとともに、BMS.Noが2であってもすべてが「赤身型」と認識されるとは限らないと考えられる。他方、BMS.Noは脂肪面積割合のみでは正確に判定ができず、粗ザシや小ザシの程度を表す「あらさ指数」や「新細かさ指数」といった脂肪交雑の形状に関する画像解析形質(口田、2015)をモデルに含める必要があることが明らかになっている(深谷ら、2019ほか)。一般消費者における「赤身型」「しもふり型」の判定においては、図4で示した通り、脂肪含量よりも実際の外観である脂肪面積割合を説明変数として用いる方が推定の精度が高いが、より消費者による判定を精度高く推定するためには、BMS.Noの推定と同様に脂肪交雑の形状に関するパラメータも含める必要がある。
 

4 まとめと今後の展望

  本調査研究においては、東京都に在住する一般消費者40名を対象にしたアンケートにより、一般消費者が「赤身型」と認知する脂肪交雑度合いの推定を試み、その結果「赤身型」「しもふり型」の境界となる数値を推定することができた。一方、消費者の牛肉に対するニーズや食経験は多様であることから、より多くの地域に在住する、しかもより多くの少なくとも100名を超える消費者を対象としてさらにデータを蓄積し、消費者の意識や知識、経験との関係についても解明をする必要がある。さらに、本調査研究の最終目標は「赤身型」牛肉に関する認知価値と提供価値のギャップを解消する方策を提案することにある。これを達成するためには、食肉の流通、特に卸売に携わる事業者や格付に携わる専門家などにおいても同様の調査を行い、食肉を提供する立場からの「赤身型」判定基準を明らかにし、一般消費者との違いを検証する必要がある。

引用文献
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