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国内の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2021年9月号

鶏卵卸売価格は下落も例年を上回る水準で推移

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 令和3年7月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり245円(前年同月比92円高)と5カ月連続で前年同月を上回り、直近5カ年の7月の同価格の中で最も高い水準となった(図19)。鶏卵卸売価格は、例年、気温の上昇に伴い低下し、夏場の不需要期に底を迎える傾向がある。7月も例年同様、前月よりも下落したものの高い水準にあり、高病原性鳥インフルエンザの発生による今シーズンの採卵鶏における殺処分羽数が多かったことなどが影響し、今年は例年とは異なる価格動向となっている。
 なお、7月の日ごとの価格の推移を見ると、月初に同255円であった同価格は、徐々に下落し、26日には20円下落の同235円となった。
 今後について、供給面を見ると、え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月後とされるが、鶏卵供給量に影響を与える一因となる採卵用めすの出荷・え付け羽数(注)は、一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、3年6月は959万3000羽(前年同月比7.8%増)と前年同月をかなりの程度上回った。3年1〜6月を見ると5205万1000羽(前年同期比2.9%減)と前年同期をわずかに下回っているものの、4〜6月の3カ月を見ると同2.4%増と、わずかに増加しており、今後の同羽数の動向が注目される。
 一方、需要面を見ると、東京都などへの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用が決まる中、例年と比べると内食および中食の堅調な需要が期待されるものの、外食需要の回復は見通すことが難しいとみられる。

(注)一般社団法人日本種鶏孵卵協会調査の報告羽数の集計値であって、全国の推計値ではない。

 
3年上半期の鶏卵輸出量は、前年同期比26.2%増
 近年、鶏卵の輸出量は、生食可能な品質が評価され、増加傾向で推移している。令和2年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、輸出金額のうちほとんどを占める香港において内食化が進んだことなどから輸出量、輸出金額ともに大幅に増加した(図20)。3年上半期についても、引き続き香港からの引き合いが堅調であることから、鶏卵(殻付き卵)の輸出量は9925トン(前年同期比26.2%増)、輸出金額は26億383万円(同30.2%増)となった。
 3年上半期の輸出先は、香港(9789トン、25億5421万円)、シンガポール(134トン、4880万円)、マカオ(2トン、82万円)で、輸出量の98.6%が香港向けとなっている。
 鶏卵輸出については、鳥インフルエンザの発生に伴い発生県からの輸出が一時停止されていたものの、輸出再開が進み、最大の輸出先である香港向けについては、7月9日に千葉県および栃木県からの輸出が再開されたことからすべての発生県からの輸出が再開されている。なお、これにより、現在、主な輸出先国・地域への輸出は全国から可能となっている。

 

(畜産振興部 前田 絵梨)