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海外の需給動向【豚肉/中国】 畜産の情報 2021年9月号

豚飼養頭数は7期連続で回復、価格は下落傾向

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豚飼養頭数は2017年水準に回復
 中国国家統計局によると、2021年6月末時点(四半期ごとに公表)の総飼養頭数は前年同月比29.2%増の4億3911万頭と7期連続で増加し、アフリカ豚熱発生前の17年末時点の99.4%まで回復している(図15)。このうち、繁殖雌豚頭数は同25.7%増の4564万頭となった。中国国家統計局は、政府による各種支援策により、養豚場の新設や規模拡張が進んだことで生産能力が急速に回復しているとみている。
 

 2021年5月の豚と畜頭数は過去3カ年で最多を記録
 2021年3月以降の豚と畜頭数は前年同月を上回る水準で推移しており、5月は前年同月比44.1%増の1995万6500頭と単月実績では過去3カ年で最も多い頭数を記録した(図16)。総飼養頭数の回復を背景にアフリカ豚熱の再発生および豚肉価格の低下に対する懸念から、と畜を急ぐ生産者もいたとされている。
 

豚肉生産量は引き続き前年同期を大幅に上回る
 中国国家統計局によると、2021年上半期(1〜6月)の豚肉生産量は前年同期比35.9%増の2715万トンとなり、供給量は大幅に回復している(図17)。
 
 
子豚価格、豚肉価格ともに下落傾向
 豚肉供給量が大幅に回復する中、豚肉価格は2月以降、子豚価格は4月以降いずれも下落傾向にある。2021年6月の豚肉価格は前月比19.0%安の1キログラム当たり27.0元(464円:1元=17.2円)、子豚価格は前月比25.3%安の1キログラム当たり55.4元(953円)となった(図18)。中国農業農村部によると、21年初めの寒波で子豚の生存率がやや低下したことから、一部の養豚業者は需要拡大が見込まれる6月の端午節に向けて値上がりを期待し出荷を控えたものの、期待した値動きとはならず、投げ売りを行ったことも豚肉価格低下の一因とされている。
 

 豚肉価格の下落が続く一方、飼料価格の高騰から養豚業者の経営環境は悪化しているとされている。このため、中国国家発展改革委員会は6月28日、「政府の豚肉備蓄調整メカニズムを改善し、豚肉市場の供給と価格の安定化を図る準備計画」に基づき、中央政府および地方政府による国家備蓄のための豚肉の買い入れおよび保管を開始すると発表した(注1)。同委員会によると、今回の措置は、6月21〜25日の豚/穀物比(注2)が4.90:1となり、生体豚価格が過度に下落した状況での警戒レベルで最も深刻な「1級」となったことから実施されるとされ、価格の低下に歯止めがかかることが期待されている。なお、8月4日時点で3回(7月7、14、21日)の買い付け(買付枠:5万3000トン)が実施されている。

(注1) 海外情報「豚肉価格下落を受けて国家備蓄のための豚肉の買入・保管を開始(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002983.html)を参照されたい。

(注2) 政府による養豚生産者の収益性の指標値。算出方法は、1キログラム当たり生体豚出荷価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は7:1とされる。


輸入量は引き続き高水準も、やや落ち着きを見せる
 豚肉輸入量は引き続き高水準で推移しているものの、一時期の輸入量に比べると落ち着きを見せており、4月以降の輸入量は減少傾向にある。2021年1〜6月の輸入量は前年同期比7.7%増の223万3703トンとなった(表8)。これを輸入先別に見ると、EUの主要輸入先の一つであったドイツでのアフリカ豚熱発生の代替として、引き続き大幅に増加しているスペインからの輸入量は同94.4%増の72万583トンとなった。また、デンマークからの輸入量も同15.0%増の20万6844トンと前年をかなり大きく上回った。一方で、米国からの輸入量はアフリカ豚熱および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により増加した前年同期の反動で同33.2%減の27万2384トンとなったが、3月以降、毎月4〜5万トン台とおおむね安定的に輸入され、現時点で19年の年間輸入量を超過している状況にある。
 
 
(調査情報部 海老沼 一出)