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国内の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2021年10月号

鶏卵卸売価格は2カ月連続で前月を下回る

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 令和3年8月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり215円(前年同月比70円高)と6カ月連続で前年同月を上回り、直近5カ年の8月の同価格の中で最も高い水準となった(図22)。鶏卵卸売価格は、気温の上昇に伴い低下し、夏場の不需要期に底を迎え、年末の需要期に向けて上昇する傾向がある。3年に入り、高病原性鳥インフルエンザの発生による採卵鶏における殺処分羽数が多かったことなどが影響し、同価格は高い水準で推移しているものの、気温の上昇に伴う需要の減少などにより、夏場に入り下落傾向で推移しており、例年と同様の傾向がみられる。8月の日ごとの価格の推移を見ると、月初に同225円であった同価格は、徐々に下落し、16日には15円下落の同210円となった。3年で最も高値であった6月の同価格は前年同月比99円高の同259円まで上昇したものの、その後、前年同月の価格との差は縮まってきており、8月はその差が70円となった。
 今後について、供給面は、残暑が過ぎて気温が低下してくると卵重が回復すると考えられることから、今後の天候が注目される。
 需要面は、東京都などへ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用される中、外食需要の回復はしばらく先になるとみられるものの、秋に向かい、大手外食チェーンのプロモーションやおでんといった季節商品による需要の増加が期待される。なお、7月の鶏卵の家計消費量(全国1人当たり)は、903グラム(同6.5%減)と巣ごもり需要の拡大により消費量が伸びた前年同月をかなりの程度下回ったものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生前の過去5カ年(平成27年〜令和元年)の7月の平均消費量(同857グラム)と比べると高い水準にあり、この傾向は継続すると見込まれる(総務省「家計調査」)。


3年1〜7月の採卵用めすの出荷・え付け羽数、前年同期をわずかに下回る
 え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月後とされるが、鶏卵供給量に影響を与える一因となる採卵用めすの出荷・え付け羽数(注1)は、一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、令和3年7月は936万3000羽(前年同月比0.0%増)と前年同月並みとなった(図23)。3年1〜7月を見ると6141万4000羽(前年同期比2.4%減)と前年同期をわずかに下回っているものの、4〜7月の4カ月を見ると同1.8%増とわずかに増加しており、今後の同羽数の動向が注目される。

(注1)一般社団法人日本種鶏孵卵協会調査の報告羽数の集計値であって、全国の推計値ではない。


 3年1〜7月を地域別に見ると、北日本が1351万3000羽(同2.8%減)、関東が1903万6000羽(同7.1%減)、中四国が1380万7000羽(同1.2%減)、九州が798万2000羽(同2.4%減)と減少した一方、中部が707万6000羽(同10.6%増)、と増加した(図24)。中部(12府県)について見ると、福井県、静岡県、岐阜県、三重県、滋賀県、奈良県と半数が増加したが、中部のシェアは全体の約1割となっている。
 なお、2年の鶏卵生産量の都道府県別上位10道県(注2)を見ると、前年同期比増となったのは岡山県(同1.3%増)および広島県(同7.9%増)のみで、その他の道県では減少した。また、前年同期と比べ最も減少したのは鳥インフルエンザの発生による採卵鶏における殺処分羽数が多かった千葉県(同21.2%減)であった。

(注2)茨城県、鹿児島県、千葉県、広島県、岡山県、栃木県、青森県、愛知県、北海道、兵庫県(令和2年の鶏卵生産量が多い順)。


(畜産振興部 前田 絵梨)