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海外の需給動向【豚肉/EU】 畜産の情報 2021年10月号

EU域外向けの豚肉輸出量の増加率が鈍化

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5月の豚肉生産量は前年同月比5.4%増
 欧州委員会によると、2021年5月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比5.4%増の187万8090トンとなった(図14)。また、と畜頭数は同5.0%増の1987万頭、1頭当たり枝肉重量は同0.4%増の94.5キログラムとなった。同月の生産量を主要生産国別に見ると、ドイツ(同1.0%減)のみ前年同月を下回り、スペイン(同4.8%増)、フランス(同4.0%増)、ポーランド(同6.7%増)、デンマーク(同12.3%増)、オランダ(同10.9%増)、イタリア(同15.6%増)は前年同月を上回った(表6)。
 英国農業・園芸開発委員会(AHDB)によると、ドイツの生産量が前年同月を下回ったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う各種制限から外食などの国内需要の減退に加え、昨年9月以降散発しているアフリカ豚熱により、中国などアジア諸国を中心に輸入停止措置が取られていることが影響しているとしている。




 
豚肉輸出量は中国向けが減少
 欧州委員会によると、2021年5月のEU域外への豚肉(生鮮・冷蔵、冷凍)輸出量(EU27カ国)は、前年同月比5.7%増の31万7137トンと前年同月をやや上回った(図15)。
 主要輸出先別に見ると、輸出量の56.7%を占める最大の輸出先である中国向け(同2.4%減)や、輸出量の7.3%を占め2番手となる日本向け(同2.1%減)が減少した。一方で、3番手以下の韓国向け(同2.9%増)、フィリピン向け(同4.6倍)、ベトナム向け(同3.3倍)、米国向け(同17.4%増)は増加した。フィリピンとベトナム向けは、両国でのアフリカ豚熱の発生による豚肉供給不足に伴い、前年同月を上回って推移している。一方、中国向けは同国内の豚肉供給量の回復に伴い、輸出量は2カ月連続で前年同月を下回った。その結果、二桁の増加率で推移してきたEU域外向けの輸出量の伸びは鈍化し、増加率は前年同月を上回ったものの、20カ月ぶりに一桁となった。


豚枝肉卸売価格は、10週連続で前週を下回る
 欧州委員会によると、2021年7月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比1.0%高の100キログラム当たり153.5ユーロ(2万109円:1ユーロ=131円)となった。同価格は、20年3月以降、COVID-19拡大による需要減退やドイツでのアフリカ豚熱の発生確認を受けて下落していた。その後、中国への輸出需要やCOVID-19に伴う規制が緩和され、外食需要などの回復もあり、本年1月以降は上昇基調にあったが、7月は前月比でマイナスとなった。
 同価格の動向を週ごとに見ると、6月14日の週を境に下落傾向に転じ、直近8月16日の週は10週連続で前週を下回り前週比1.3%安の同144.92ユーロ(1万8985円)となった(図16)。
 現地報道によると、同価格の下落要因について、夏の豚肉需要が予想よりも低調となったことや中国向けの輸出量の減少が挙げられている。中国向けの輸出量が2カ月連続で前年同月を下回る中、ドイツの供給過多による国内価格の下落がEU域内の他の豚肉輸出国の価格を引き下げているとの指摘もあり、今後の同価格の推移が注目されている。


(調査情報部 小林 智也)