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国内の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2021年11月号

9月の鶏卵卸売価格は前月を下回るも月内は上昇傾向で推移

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 令和3年9月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり213円(前年同月比60円高)と7カ月連続で前年同月を上回り、直近5カ年の9月の同価格の中で最も高い水準となった(図16)。鶏卵卸売価格は、気温の上昇に伴い低下し、夏場の不需要期に底を迎え、年末の需要期に向けて上昇する傾向がある。本年も気温の上昇に伴う需要の減少などにより、夏場は下落傾向で推移したものの、昨冬の高病原性鳥インフルエンザの発生による採卵鶏における殺処分羽数が多かったことなどが影響し、同価格は引き続き前年を上回って推移している。
 

 過去4カ年の9月の同価格を見るといずれの年も前月の価格を上回っているものの、3年9月は前月を2円下回った。しかしながら、日ごとの価格の推移を見ると、月初の同210円から28日には同220円まで上昇し、大手外食チェーンのプロモーションや季節的な需要の増加などにより、例年と同様に月内は上昇傾向で推移した。
 今後について、供給面は、産卵に適した時期を迎え、気温の低下に伴い卵重の増加や産卵率の上昇が見込まれる。なお、え付けしたひなが産卵を開始するのは約5カ月後とされるが、鶏卵供給量に影響を与える一因となる採卵用めすの出荷・え付け羽数(注)は、一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、3年8月は788万1000羽(前年同月比1.9%減)と前年同月をわずかに下回った。3年1〜8月を見ると6929万5000羽(前年同期比2.4%減)と前年同期をわずかに下回っているものの、4〜8月の5カ月を見ると同1.1%増とわずかに増加しており、今後の同羽数や昨冬の高病原性鳥インフルエンザで影響を受けた生産量の回復の動向が注目される。需要面は、9月末日をもって全国の緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が解除されたことから外食需要の回復が期待されるとともに、おでんなどの季節需要の高まりや最需要期の年末に向け、業務・加工用の需要の増加が見込まれる。

(注)一般社団法人日本種鶏孵卵協会調査の報告羽数の集計値であって、全国の推計値ではない

3年1〜8月の鶏卵輸入量は、前年同期をわずかに下回る
 近年、鶏卵(ふ化用除く)の輸入量(殻付き換算)は、国内消費量の4%程度で推移している。輸入量全体のうち約9割は保存性や輸送コストなどに優れる加工原料用の粉卵が占めており、主にオランダ、イタリアおよび米国から輸入している。なお、粉卵の輸入量のうち8割は卵白粉であり、ハム・ソーセージのつなぎの原料などに使用されている。
 令和2年の輸入量は、10万5582トン(前年比7.9%減)と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による需要の減少などにより、前年をかなりの程度下回った。
 鶏卵の輸入量は、対前年同月で見ると月によって増減幅が大きくなっているが、3年1〜8月の輸入量で見ると7万2898トン(前年同期比0.8%減)となり前年同期をわずかに下回った(図17)。
 
 
(畜産振興部 前田 絵梨)