畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 食料需給表

国内の需給動向【食料需給表】 畜産の情報 2021年11月号

食料需給表

印刷ページ

令和2年度の食料自給率、前年度から1ポイント低下の37%

令和2年度の食料自給率、前年度から1ポイント低下の37%
 農林水産省は8月25日に令和2年度の「食料需給表(概算値)」(注1)、「令和2年度食料自給率・食料自給力指標について」(注2)を発表した。
 2年度の供給熱量ベース(カロリーベース)の総合食料自給率は、原料の多くを輸入している砂糖、でん粉、油脂類などの消費が減少したものの、米の需要が長期的に減少していること、小麦が特に作柄が良かった前年に比べて単収が減少したことにより、37%と前年度から1ポイント低下した(表2)。食料国産率(注3)は畜産物の生産が増加したことにより、前年度同の46%となった。
 

  2年度の生産額ベースの総合食料自給率は、牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類などの輸入額が減少した一方で、豚肉、鶏肉、野菜、果実などの国内生産額が増加したことなどにより、67%と前年度より1ポイント上昇した。また、食料国産率についても、71%と前年度より1ポイント上昇した。
 品目別自給率(以下、重量ベースとする)を見ると、肉類(鯨肉を除く、以下同じ)は、すべての品目で生産量が増加したことなどにより、前年度から1ポイント高の53%と、2年連続で上昇した。また、肉類全体の国民1人・1年当たり供給純食料は、33.5キログラムと前年度と同水準となった。
 飼料自給率は25%と前年度と同水準となった。肉類についてはいずれも輸入飼料依存度が高く、飼料自給率を考慮した肉類の食料自給率は7%と、前年度と同水準となった。
 各畜産物の品目別自給率および国民1人・1年当たりの供給純食料については以下の通り。

(注1)「食料需給表」とは、1年間に国内で供給される食料の生産から最終消費に至るまでの総量を明らかにするとともに、国民1人1日当たりの供給純食料および栄養量が取りまとめられたものであり、上述の食料自給率算出の基礎として活用される。
(注2)「食料自給率」とは、国内の食料全体に対する国内生産の割合を示す指標であり、分子を国内生産、分母を国内消費仕向(国内生産および輸入から輸出を除いた数量に在庫の増減を加えたもの)として計算される。
(注3)「食料国産率」とは、畜産物の算定において飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内で実際に生産された畜産物の食料全体の供給に占める割合である。

1 牛肉

令和2年度の牛肉自給率、前年度から1ポイント上昇の36%
 令和2年度の牛肉自給率は、36%と前年度から1ポイント上回り、6年ぶりの上昇となった(図18)。
 

  枝肉換算ベースの国内生産量は乳用種および交雑種が減少したものの、肉専用種が増加したことにより、47万9000トン(前年度比1.7%増)と前年度からわずかに増加した。輸入量は過去4年度において増加傾向であったものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による海上輸送の遅れや外食需要の減少などから、2年度は84万5000トン(同5.1%減)と前年度をやや下回った。需要量を示す国内消費仕向量は132万9000トン(同0.7%減)と前年度からわずかに減少した。
 近年は、肉ブームの高まりを背景に国内の牛肉需要が好調となっていたが、2年度は、COVID-19の影響によりインバウンド需要や外食需要が減少した一方で、内食需要が増加したことなど、動向に変化が見られた。
 国民1人・1年当たり供給純食料(精肉換算ベース)は、6.5キログラムと前年度と同水準となった。また、飼料自給率を考慮した牛肉自給率は、平成6年度以降は10%前後で推移しており、令和2年度は9%と前年度と同水準となった。

2 豚肉

令和2年度の豚肉自給率、前年度から1ポイント上昇の50%
 令和2年度の豚肉自給率は、50%と前年度より1ポイント上回り、2年連続で上昇した(図19)。
 

  枝肉換算ベースの国内生産量は、と畜頭数の増加により、131万トン(前年度比1.6%増)と前年度からわずかに増加した。輸入量は、冷凍豚肉在庫が高水準の中、COVID-19の影響により業務用需要が減少したことなどから、129万8000トン(同7.3%減)と前年度よりかなりの程度減少した。需要量を示す国内消費仕向量は、264万4000トン(同0.7%増)と前年度からわずかに増加した。
 近年は、豚流行性下痢(PED)の影響により生産量が平成26年度に減少した後、徐々に回復傾向で推移する中、令和2年度はCOVID-19の影響により牛肉同様に外食需要などが減少する一方で、巣ごもり需要が旺盛だったことから、消費の約5割が家計消費となる豚肉の自給率は4年ぶりの50%台となった。
 国民1人・1年当たりの供給純食料(精肉換算ベース)は、好調な内食需要を背景に前年度よりも0.1キログラム多い12.9キログラム(同0.8%増)と過去最高となった。また、飼料自給率を考慮した豚肉自給率は、昭和60年代から1桁台で推移しており、令和2年度は前年度と同水準の6%となった。

3 鶏肉

令和2年度の鶏肉自給率、前年度から2ポイント上昇の66%
 令和2年度の鶏肉自給率は、66%と前年度より2ポイント上昇した(図20)。
 

 骨付肉換算ベースの国内生産量は、165万6000トン(前年度比1.5%増)と前年よりわずかに増加した。これは、近年の旺盛な需要を受け、生産者の増産意欲が高まっていることが背景にあるとみられる。輸入量は国内の在庫水準に左右され、年度によって増減はあるものの、2年度は、COVID-19の影響による業務用需要の減少などにより、85万9000トン(同6.2%減)と前年度をかなりの程度下回った。需要量を示す国内消費仕向量は、251万6000トン(同0.8%減)と前年度よりわずかに減少した。
 近年は、健康志向の高まりや食肉の中での価格の優位性を背景に、鶏肉の需要は好調で、2年度は、COVID-19の影響により巣ごもり需要が旺盛となり、主に家計消費用に仕向けられる国産鶏肉の需要が増加した一方、主に業務用に仕向けられる輸入鶏肉の需要は減少したことから、自給率は6年ぶりの上昇となった。
 国民1人・1年当たり供給純食料(正肉換算ベース)は、13.9キログラムと過去最高を記録した前年度と同水準となった。また、飼料自給率を考慮した鶏肉の自給率は昭和60年代から1桁台で推移しており、令和2年度は前年度と同じ8%となっている。

(注5)鶏肉の計測期間は、平成21年以降、暦年(1-12月)となっている。
 

4 牛乳・乳製品

令和2年度の牛乳・乳製品自給率、前年度から2ポイント上昇の61%
 令和2年度の牛乳・乳製品の自給率(生乳換算ベース)は、2ポイント上昇し61%となった(図21)。牛乳・乳製品の自給率は、国内消費仕向量が平成22年度から30年度にかけて回復基調となる一方で、生乳生産量が28年度から30年度まで減少傾向で推移していたことから低下傾向で推移してきたが、令和2年度は昨年度の維持から上昇に転じた。
 

  国内生産量は、生乳生産量の増加により743万4000トン(前年度比1.0%増)と前年度より7万2000トン増加し、2年連続の増加となった。また、輸出量は4万7000トン(同34.3%増)と増加した一方で、輸入量は、498万7000トン(同4.8%減)と前年度より25万1000トン減少した。なお輸入量は平成29年度以降、増加傾向で推移していたが、4年ぶりに前年度を下回った。また、COVID-19の拡大に伴い、休校によって学校給食用牛乳の需要が大きく減少したことや、外出自粛に伴う業務用乳製品需要の減少などにより、需要量を示す国内消費仕向量は1221万5000トンと前年度より19万8000トン減少した(同1.6%減)。こうした中、需給調整の役割を持つ脱脂粉乳・バターが増産される結果となった。
 近年の動向を主要乳製品別に見ると、乳製品の1人当たり消費量は、食生活の多様化などに伴い、チーズ、生クリームの消費が拡大している。特に、消費が伸びているチーズは、国内生産が横ばいで推移していることから、輸入量は増加傾向で推移している。
 国民1人・1年当たり供給純食料(生乳換算ベース)は、94.3キログラム(同1.3%減)となった。前年度を下回ったものの、27年度以降90キログラム台を維持している。なお、飼料自給率を考慮した牛乳・乳製品自給率は、26%(同4.0%増)となった。

5 鶏卵

令和2年度の鶏卵自給率、前年度から1ポイント上昇の97%
 令和2年度の鶏卵自給率は、前年度から1ポイント高の97%となり、引き続き畜産物の中で最も高い水準を維持した(図22)。
 
 
 殻付換算ベースの国内生産量は、高病原性鳥インフルエンザの発生による採卵鶏の殺処分羽数が約900万羽に上ったことなどから、259万6000トン(前年度比2.0%減)と前年度よりわずかに減少した。輸入量は、約9割を加工原料用の粉卵が占めており、2年度はCOVID-19の影響による業務用需要の減少などから、10万2000トン(同9.7%減)と前年度よりかなりの程度減少した。需要量を示す国内消費仕向量は、267万8000トン(同2.7%減)と前年度をわずかに下回った。
 鶏卵自給率の推移を見ると、半世紀にわたって90%台後半の水準を維持している。この自給率の高さについては、国内消費の約半分を占めるテーブルエッグの多くが生食で消費されるという食文化から、鮮度や品質が重視されることに加え、殻が割れやすく、長距離輸送に適さないことなどから輸入品による代替が難しく、生産から流通までの効率化により、安価で良質な鶏卵の供給を維持してきたことなどが背景にある。
 国民1人・1年当たり供給純食料(重量ベース(付着卵白および殻を除く))は、前年度よりも0.5キログラム減の17.1キログラム(同2.8%減)となった。また、飼料自給率を考慮した鶏卵自給率は、昭和50年代から10%台前半で推移しており、令和2年度は前年度と同水準の12%となっている。
 
(食肉、鶏卵:畜産振興部 田中 美宇)
(牛乳・乳製品:酪農乳業部 小木曽 貴季)