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海外の需給動向【豚肉/カナダ】  畜産の情報 2021年11月号

総飼養頭数はわずかに増加するも、と畜頭数は減少し、生体豚輸出は増加

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豚総飼養頭数はわずかに増加
 カナダ統計局によると、2021年7月1日現在の豚総飼養頭数は1424万9400頭(前年同月比1.0%増)とわずかに増加した(表3)。
 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、カナダの繁殖豚の飼養頭数は比較的安定した推移を見せており、2017年のPED(豚流行性下痢)流行後、生産者が衛生対策を強化したことで繁殖成績は向上していると報告されている。ただし、カナダ西部やオンタリオ州の一部で発生している干ばつの影響による飼料コストの上昇次第で、今後の生産動向に変化が表れる可能性も示唆されている。
 


 

と畜頭数は前年を下回るも、生体豚輸出は増加
 カナダ農業省(AAFC)の「Hog Slaughterings at Federally and/or Provincially Inspected Packing Plants」によると、2021年5月以降の豚と畜頭数は前年を下回って推移している(図8)。これは、ケベック州の大規模豚肉処理・加工場で4カ月以上続いたストライキの影響が大きいとされ、当該州を中心に肥育豚は農場に滞留、もしくは米国に輸出されている状況にあった(注1)
 

(注1) 4月28日に始まったストライキは、8月末に合意し、現在稼働率を落として工場は再開している。詳細は、海外情報「ケベック州の大規模豚肉処理場で4カ月間以上続いたストライキが終了(カナダ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003044.html)を参照されたい。
 


 それ以前から、米国の豚肉需要増に伴いカナダから米国向け生体豚の輸出は前年を大きく上回って推移している(図9)。USDA/FASは、9月に同じケベック州にある別の豚肉処理・加工場の処理能力が増強されることもあり、今秋には農場での肥育豚の滞留は解消されるとしている。このため、今後、米国向け生体豚輸出は減少していくと分析している。



 

肥育豚価格は堅調に推移
 2021年8月の肥育豚価格は、米国からの生体豚需要およびカナダ国内の堅調な需要を反映し、前年同月比55.1%高の100キログラム当たり278カナダドル(2万4742円:1カナダドル=89円(注2))と前年同月を大幅に上回って推移している(図10)。
 

(注2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の月末TTS相場。



 

中国向け豚肉輸出は大幅減も、引き続き輸出は安定と予測
 カナダ統計局によると、2021年7月の豚肉輸出量は8万1300トン(前年同月比18.3%減)と大幅に減少した(表4、図11)。輸出先別に見ると、近年、輸出先のトップにあった中国向けが中国国内の豚肉生産の回復から1万7900トン(同63.4%減)と大幅に減少し、米国向けが首位(2万1700トン、同38.0%増)となった。また、USDA/FASによると、作業員の新型コロナウイルス感染が確認された食肉処理・加工場からの中国向けの輸出を一時停止しており、カナダの豚肉生産の60%に相当する処理・加工場がこれに該当していることが影響したと分析している。ただし、世界経済の回復基調による堅調な食肉需要や、アフリカ豚熱発生により国内生産量が減少したフィリピンなど中国以外の国からの需要、また、カナダドル安で推移する為替などを要因に、引き続き豚肉輸出は安定して推移すると予測している。





(調査情報部 上村 照子)