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調査・報告 畜産の情報  2022年1月号

令和3年度上半期の和牛肉および豚肉の販売動向について

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畜産振興部

【要約】

 令和3年度上半期の卸売業者における販売状況は、新型コロナウイルス感染症の影響による前年の内食需要の増加の反動などから前年同期には及ばなかったものの、量販店・食肉専門店向けが堅調であったことから、和牛肉および豚肉で同程度が多い結果となった。一方、小売業者における販売状況は、量販店において前年の内食特需の反動により、和牛肉および豚肉でおおむね減少傾向との結果となった。

1 はじめに

 当機構では、食肉の消費・販売動向を把握するため、年に2回、卸売業者および小売業者(量販店および食肉専門店)の協力を得て、食肉の取扱割合や販売見通しに関する調査を実施している。今回、令和3年7〜8月に実施した「食肉販売動向調査結果(2021年度下半期)」を見ると、3年度上半期の卸売業者における牛肉全体の取扱状況(重量ベース、以下同じ)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けた2年度下半期との比較では「同程度」の回答が5割と多い中、「減少」が「増加」を上回った(図1)。豚肉の取扱状況を見ても、全ての区分で「同程度」が最も多かった(図2)。以後は、「和牛肉」および「豚肉」の販売動向(3年度上半期実績および同年度下半期の見通し)について報告する。



2 卸売業者における仕向け先別販売割合

(1)和牛肉

 令和3年度上半期の卸売業者における和牛肉の仕向け先別販売割合の実績(重量ベース、以下同じ)を見ると、冷蔵和牛肉は「量販店・食肉専門店」仕向けが最も多く51%となった(図3)。また、冷蔵和牛肉の「二次卸売業者」の最終仕向け先のうち28%が「量販店・食肉専門店」向けであった(図4)。これらのことから、冷蔵和牛肉の「量販店・食肉専門店」向けの仕向け割合は58%になると推計される。なお、和牛肉の構成比は、冷蔵が88%、冷凍が12%であった。





 一方で、冷凍和牛肉を見ると、「外食店」向けが最も多く、32%となった(図5)。また、冷凍和牛肉の「二次卸売業者」の最終仕向け先のうち44%が「外食店」向けであった(図6)。これらのことから、冷凍和牛肉の「外食店」向けの仕向け割合は44%になると推計される。このように、「二次卸売業者」の最終仕向け先を加味すると、「量販店・食肉専門店」向けの仕向け割合は24%と推計されることから、冷凍和牛肉については業務用向けの利用が中心であることがうかがえる。
 3年度上半期の卸売業者における和牛肉の等級別の主な販売先(件数ベース)を見ると、5等級は「量販店」および「食肉専門店」、2〜4等級は「量販店」へ仕向けるとの回答が最も多かった(図7)。2年度上半期と比較すると、「量販店」への仕向けは5等級および2等級で減少したものの、4等級で同水準、3等級でわずかに増加していることから、前年同期ほどではなかったものの、和牛肉は内食需要の高まりを背景に小売店に多く出回ったとみられる。
 





 

(2)豚肉

 3年度上半期の卸売業者における豚肉の仕向け先別販売割合の実績を見ると、輸入品(冷凍)を除いた全ての区分で「量販店・食肉専門店」向けの仕向け割合が最も多く、テーブルミートとしての需要が高いことがうかがえる(図8)。また、国産品(冷蔵)については、「二次卸売業者」の最終仕向け先のうち19%が「量販店・食肉専門店」向けであった(図9)。これらのことから、国産品(冷蔵)の「量販店・食肉専門店」向けの仕向け割合は69%となると推計される。



3 卸売業者における販売見通し

(1)和牛肉

 3年度下半期の卸売業者における和牛肉(4、5等級)の販売先別販売見通し(重量ベース、以下同じ)について、2年度下半期と比較すると、前回は「量販店」および「食肉専門店」以外で「増加」の回答は少なかったが、今回は外食向けおよび輸出向けの区分において「増加」の回答が増加した(図10)。特に、「輸出」は約6割まで増加し、COVID-19の影響下においても輸出向け需要への期待が高まる結果となった。
 一方で、「量販店」の減少理由として、「外出の制限・自粛」、「相場高」、「消費者の低価格志向」が多く挙げられた。


 

(2)豚肉

 3年度下半期の卸売業者における豚肉の部位別販売見通し(重量ベース)について、2年度下半期と比較すると、国産品は「増加」が「減少」を上回った(図11)。増加理由としては、「輸入品の仕入価格高騰による国産品へのシフト」、「消費者の低価格志向」などが挙げられた。また、輸入品については「ヒレ(冷蔵)」および「ばら(冷凍)」を除いた全ての部位において「同程度」が最も多かった。「減少」が「増加」を上回るものが多かった冷凍品の減少理由としては「外食の動向次第であるが苦戦する見込み」などが挙げられた。

4 小売業者における和牛肉仕入れ時の選定基準

(1)量販店

 3年度上半期の量販店における和牛肉仕入時に優先した選定基準は、「肉質」が70%と最も多く、次いで「価格」が55%、「生産者・牧場」が40%となった(図12)。具体的な回答として、肉質については、「品質面で優位な雌牛を取り扱う」「しまり、脂肪交雑の状態を総合して選定している」「相場を見て、肉質の良い牛を仕入れる」などが挙げられた。価格については、「かた、そとももなど価格の安い部位を選択し販売する」などが挙げられた。生産者・牧場については、「自社牧場で生産している牛肉のみ販売」「当社ブランド牛肉は生産者・牧場指定」「地産地消で販売強化」などが挙げられた。

 

(2)食肉専門店

 3年度上半期の食肉専門店における和牛肉仕入時に優先した選定基準は、「肉質」が65%と最も多く、次いで「価格」が49%、「産地銘柄」が38%となった(図13)。量販店との比較では、1位と2位は同じであったが、3位は異なる結果となった。量販店では、自社牧場で生産している場合もあるため、生産者・牧場が選択基準として上位にある一方で、専門店は産地銘柄が重視されることがうかがえる。また、具体的な回答として、肉質については「雌牛を中心にしまり、脂肪、肉色などが優れた食肉を仕入れる」「安定した品質の食肉をそろえることが重要」などが挙げられた。価格については、「相場高なので、良品を安く仕入れる」「低価格品の仕入を狙っている」などが挙げられた。量販店および食肉専門店ともに和牛肉仕入時に「肉質」は重要な選定基準の一つであることがうかがえる。

5 小売業者における和牛肉の等級別取扱割合

 3年度上半期の量販店における和牛肉の等級別取扱割合の実績(重量ベース、以下同じ)を見ると、4等級が56%と最も多く、次いで3等級が23%、5等級が18%、2等級が3%となった(図14)。4等級の主な取扱部位は「もも」が最も多く、次いで「ばら」であったことから、低級部位の取り扱いが増えており、比較的安価な部位の需要が増えているとみられる。
 一方で、3年度上半期の食肉専門店における和牛肉の等級別取扱割合の実績を見ると、5等級が46%と最も多く、次いで4等級が37%、3等級が12%、2等級が5%となった。主な部位として5等級は「リブロース・サーロイン」、4等級は「リブロース・サーロイン」および「もも」が最も多く、取扱部位の変化などは見られなかった。
 

6 小売業者における販売量の増減割合

(1)量販店

 2年度上半期と比較した3年度上半期の量販店における和牛肉の販売量の増減割合を見ると、2、3等級は75%、4、5等級は63%が「減少」と回答した(図15)。販売量の減少理由は「COVID-19による内食特需の反動」「仕入価格高騰による販促減少や販売価格への転嫁」などが挙げられた。さらに、豚肉の販売量の増減割合を見ると、国産豚肉は65%、輸入豚肉は55%が「減少」と回答した。国産豚肉の減少理由としては、和牛肉と同様に「COVID-19による内食特需の反動」や「仕入価格高騰による販促減少」などが挙げられた。また、輸入豚肉については、「原料価格高騰による特売の減少」なども挙げられた。COVID-19の影響による前年の内食需要の増加の反動に加え、仕入価格の上昇が量販店における和牛肉および豚肉の取り扱いを減らしている状況がうかがえる。


 

 (2)食肉専門店

 2年度上半期と比較した3年度上半期の食肉専門店における和牛肉および豚肉の販売量の増減割合を見ると、「変わらない」が最も多い結果となった(図16)。また、「減少」が「増加」を上回ったものの、量販店と比較すると「減少」の割合は少なかった。
 和牛肉および豚肉の減少理由としては、量販店と同様、「COVID-19による内食特需の反動」や「仕入価格高騰による販売価格上昇」などが挙げられた。量販店と比較して「減少」と答えた割合が小さかった理由としては、前年度の増加割合が低かったことから、COVID-19の影響による前年の内食需要の増加の反動が量販店よりも小さかったと考えられる。

7 小売業者における販売見通し

(1)量販店

 2年度下半期と比較した3年度下半期の量販店における食肉販売見通し(重量ベース、以下同じ)については、全ての区分で「減少」が最も多い結果となった(図17)。減少割合が高い理由として、比較対象である2年度下半期はCOVID-19の影響により販売量が増加傾向であったことから、前年の増加に伴う反動と見られる。一方で、増加割合が高い理由として和牛肉、国産豚肉および輸入豚肉では、「特売回数の増加」が多く挙げられた。


 

(2)食肉専門店

 2年度下半期と比較した3年度下半期の食肉専門店における食肉販売見通しについては、全ての区分で「同程度」が最も多い結果となった(図18)。中でも、和牛肉の減少割合が高い理由として「仕入価格上昇分の価格転嫁」が最も多く挙げられた。国産豚肉の「増加」の理由としては「牛肉からの需要のシフト」「消費者の低価格志向」が多く挙げられた。

8 小売業者における和牛肉の等級別販売見通し

(1)量販店

 2年度下半期と比較した3年度下半期の量販店における和牛肉の等級別販売見通し(重量ベース、以下同じ)については、5等級は「減少」が47%と最も多く、4等級は「変わらない」が53%となった。3等級は「増加」と「変わらない」が同水準となり、2等級は「減少」と「変わらない」が同水準となった(図19)。減少理由としては「相場高」が多く挙げられた。

(2)食肉専門店

 2年度下半期と比較した3年度下半期の食肉専門店における和牛肉の等級別販売見通しについては、全ての等級で「変わらない」が最も多い中、2等級および5等級は「減少」が「増加」を上回った一方、3等級および4等級では「増加」が「減少」を上回った(図20)。増加理由として4等級は「小売向け需要の増加」、3等級は「消費者の赤身志向による5等級からのシフト」が多く挙げられた。5等級の減少理由としては「消費者の低価格志向」と「景気の悪化」が多く挙げられた。

9 小売業者における食肉の販売拡大に向けた対応

(1)量販店

 量販店における販売拡大に向けた対応については、牛肉(和牛、交雑牛、乳用牛、輸入品を含む。以下同じ)では1位が「総菜や味付け肉の強化」、2位が「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品ぞろえ強化」、3位が「低級部位や切り落としを増やす」となった(図21)。豚肉では1位が「総菜や味付け肉の強化」、2位が「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品ぞろえ強化」、3位が「低級部位や切り落としを増やす」となった。3年度上半期と比較すると、牛肉は順位に変動がなかったが、豚肉は3位だった「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品揃え強化」の割合が大きく増加した。牛肉・豚肉どちらも、「総菜や味付け肉の強化」という回答が多く、テーブルミート向けのさらなる拡大に向けて、時短・簡便商品の取り扱いを増やしていることがうかがえる。具体的な対応としては「顧客の来店頻度が減少する想定で、頻度品を中心に大容量パックを強化する」「COVID-19の収束が見えない中、保存がきく冷凍肉商材と大型パック商材の品ぞろえを充実させる」「味付け肉を中心に時間短縮、簡便商材も強化する」などが挙げられた。

 

(2)食肉専門店

 食肉専門店における販売拡大に向けた対応については、3年度上半期と比較すると、牛肉および豚肉の割合は大きく変動した。牛肉では1位が「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品ぞろえ強化」、2位が「総菜や味付け肉の強化」、3位が「低級部位や切り落としを増やす」となった(図22)。食肉専門店では総菜や低価格の部位や切り落としの強化よりも、顧客の嗜好に対応した品ぞろえを強化している状況がうかがえる。豚肉では1位が「特定の年齢層・家族形態を対象とした商品の品ぞろえ強化」、2位が「低級部位や切り落としを増やす」および「総菜や味付け肉の強化」となった。販売拡大に向けた具体的な対応として、「お持ち帰り弁当やおかずパックに力を入れる」「コロナ禍で宅配が増えているので、メニューを充実させて顧客の要望に臨機応変に対応する」などが挙げられた。

10 おわりに

 令和3年度上半期の卸売業者における販売状況は、外出自粛による外食需要の回復の遅れや前年の内食需要の増加の反動から前年同期には及ばなかったものの、量販店・食肉専門店向けが堅調であったことから、和牛肉および豚肉で同程度が多い結果となった。3年度下半期の販売見通しでは、「外出の制限・自粛の継続による外食向けの減少」といった意見の一方で、「制限・自粛の緩和による景気回復」との声も挙げられた。また、和牛肉の4、5等級については、「COVID-19の収束を期待して、輸出向けを増加させる」といった声が挙がったものの、おおむね変わらないとの見方が多い結果となった。部位別に見ると和牛肉については、「切り落とし」の「増加」が比較的多く、消費者の低価格志向が強まっていることがうかがえる。
 一方、3年度上半期の小売業者における販売状況は、量販店においてCOVID-19の影響による前年の内食特需の反動により、和牛肉および豚肉でおおむね減少傾向との結果となった。3年度下半期の販売見通しでは、「COVID-19による内食特需の反動」や「仕入価格上昇分の価格転嫁」という声も挙がり、おおむね減少傾向との見方が多い結果となった。
 

(参考)調査の概要
1.調査方法
 アンケート調査

2.調査対象先と回収率
 下表の通り

3.調査期間
 2021年7月26日〜8月17日
 


 

なお、調査結果については、当機構ホームページにて掲載しております。
https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000060.html