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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2022年1月号

日本、韓国、中国の3カ国が輸出をけん引

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中国向け輸出の増加が顕著
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2021年9月の牛肉輸出量は、13万971トン(前年同月比20.9%増)と引き続き好調に推移した(表)。
 輸出先別に見ると、輸出量第1位の日本向けは3万1430トン(同10.3%増)、同2位の韓国向けは2万9284トン(同9.9%増)と、いずれも前年をかなりの程度上回った。米国食肉輸出連合会(USMEF)によると、両国向けは冷蔵牛肉が大きく伸びており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるレストランなど外食産業への規制が緩和されたことで、引き続き高い輸出が期待されるとしている。同3位の中国向けは、米中経済貿易協定の第一段階合意以降の米国産牛肉に対する高い需要を背景に2万3738トン(同約4.1倍)と、9月の輸出増加の最大の要因となった。これら上位3カ国で輸出量全体の6割以上を占めた。そのほか、メキシコ向けは、1万381トン(同14.1%増)と経済活動の再開に伴い輸入需要は回復傾向にあるが、COVID-19流行前の水準には及んでいない。


 一方、香港向けは、4565トン(前年同月比47.9%減)と大幅に減少したが、現地報道によると、香港経由で中国本土に輸入されていた製品の一部が、直接中国に向けられたのは明らかとされている(図1)。


価格は引き続き堅調に推移も、消費への影響を懸念
 USDA/ERSの「Livestock and Meat Domestic Data」によると、今年に入ってからの国内外の高い牛肉需要を反映して、21年10月の牛肉卸売価格は、前年同月比34.6%高の100ポンド当たり285.97米ドル(1キログラム当たり725円:1米ドル=115円(注))と引き続き前年同月を大幅に上回って推移した(図2)。また、21年初頭からの牛群縮小による供給頭数の減少見込みもある中で、牛肉処理業者の需要が引き続き堅調なことから、同年10月の肥育牛価格は、前年同月比17.4%高の100ポンド当たり124.91米ドル(同317円)と高値で推移した(図3)。
 USDAは、育成牛の冬の放牧環境が改善見込みであることや高水準にある肥育牛価格を要因に、21年第4四半期の肥育もと牛価格、肥育牛価格は、いずれも堅調に推移すると予測している。
 一方、牛肉価格の急騰により、消費者は外食の機会を減らし、家庭で調理する傾向が見られ、需要が期待された外食産業への支出が伸び悩んでいる。現地報道によると、消費者が価格高騰から牛肉製品の購入機会を減らすのではないかと懸念する声もあり、今後の価格動向が注目されている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年11月末TTS相場。
 



 
(調査情報部 上村 照子)