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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2022年1月号

牛群再構築は2022年まで継続と予想

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2021年の牛の需給は引き続きひっ迫
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、最新の牛肉生産量などの見通しとなる「Industry projections 2021−November update」を公表した(表1)。
 


 

 これによると、2021年の牛飼養頭数は、ラニーニャ現象の発生(後述)による安定的な降雨を背景に、引き続き良好な放牧環境が見込まれ、生産者における保留意欲の継続が見込まれることから、2636万1000頭(前年比7.1%増)とかなりの程度増加し、23年には2864万3000頭に達すると予測している。
 一方、21年のと畜頭数は、継続している降雨の状況を踏まえた牛群再構築の流れを受けて、前回見通しから下方修正され600万頭(同16.3%減)と大幅に減少し、過去36年間で最低水準になると見込んでいる。また、同年の1頭当たり枝肉重量は308キログラム(同4.5%増)と見込んでおり、と畜頭数の減少を一部相殺する形で、牛肉生産量は184万8000トン(同12.5%減)とかなり大きく減少すると見込んでいる。その後は牛飼養頭数の増加から、23年のと畜頭数は745万頭、牛肉生産量は230万8000トンにそれぞれ回復すると予測している。
 21年の牛肉輸出量は、生産量の減少に伴い91万8000トン(同11.6%減)とかなり大きく減少すると見込んでいるが、23年は生産量の回復に伴い、114万トンに回復すると予測している。
 生体牛輸出頭数については、豪州の牛価格高騰により主要輸出先であるベトナムなどの海外の輸入業者が、ブラジルなどの代替市場からより安価な生体牛を輸入していることもあり、21年は70万5000頭(同30.2%減)と大幅な減少を見込んでいる。しかし、牛群再構築の進展により、今後2年間で徐々に牛価格が下落することが見込まれるため、23年には83万頭に回復すると予測している。
 MLAは見通しの中で、豪州では牛の供給不足に加え、労働力不足、輸送コストや豪ドルの高騰など、国内の加工業者や輸出業者をめぐる情勢は、大変厳しいものとなっているとしている。また、豪州気象庁(BOM)が、太平洋で2年連続となるラニーニャ現象が発生していることを背景に、豪州北部および東部のほとんどの地域で夏季(12月〜翌2月)の降雨量が年平均値を上回ると予測していることから(図1)、牛群再構築が2022年まで継続されると予想している。
 


 

肉牛生体取引価格は1100豪セントを突破
 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、11月22日に過去最高となる1キログラム当たり1105豪セント(917円:1豪ドル=83円(注1))を記録した(図2)。
 

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年11月末TTS相場。)



 

 現地報道によると、今般の高騰要因には牛群再構築に伴う牛の需給のひっ迫などが挙げられており、肉牛価格の高値基調は今後も継続するとしている。
 他方で、豪州フィードロット協会(ALFA)とMLAが11月19日に公表した全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2021年7〜9月期)では、フィードロットの稼働率が77.3%と過去5年間平均稼働率である76.5%を超える結果となった。ALFAは、牛群の再構築が進み、牛の供給がひっ迫しているにもかかわらず、稼働率が75%を上回っていることは、フィードロットでの需要が安定していることの裏付けであるとしている(注2)
 

(注2)海外情報「フィードロット飼養頭数は15期連続で100万頭超(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003107.html)を参照されたい。


韓国向けが増加もセーフガード数量に迫る
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年10月の牛肉輸出量は7万4333トン(前年同月比8.6%減)とかなりの程度減少した(表2)。一方、同年1〜10月の累計(累計期間は以下同じ)では73万4908トン(前年同期比16.0%減)と大幅に減少している。
 


 

 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは1万8769トン(前年同月比16.1%減)と大幅に減少し、累計でも19万6760トン(前年同期比11.1%減)と、前月に比べ減少率が拡大した。
 続く韓国向けは、1万4920トン(前年同月比7.9%増)とかなりの程度増加し、累計では13万1635トン(前年同期比2.9%増)となった。なお、累計輸出量は豪韓FTAに基づく2021年のセーフガード発動数量(17万7569トン)に近づいており、セーフガードが発動された場合、豪州産牛肉の関税は残りの暦年で18.6%から30%に引き上げられるため、今後の韓国向け輸出の動向が注目される。
 米国向けは、1万3587トン(前年同月比6.2%減)とかなりの程度減少した。累計でも12万1494トン(前年同期比35%減)と大幅に減少し、輸出先として第3位に後退した。MLAや現地報道によると、米国での干ばつにより同国の牛肉生産量が多いことに加え、豪州国内の需給ひっ迫などを背景にした豪州産牛ひき肉の輸出価格の高騰が要因とされている。
 

(調査情報部 国際調査グループ)