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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報  2022年1月号

10月の生乳取引価格は、前年同月をかなりの程度上回る

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9月の生乳出荷量、上位3カ国の減少により前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2021年9月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに下回る1138万4890トン(前年同月比0.5%減)となった(表)。
 同月の出荷量を国別に見ると、イタリア(同5.7%増)、アイルランド(同7.4%増)、スペイン(同0.7%増)が前年同月を上回った一方で、主要生産国上位のドイツ(同2.4%減)、フランス(同2.4%減)、オランダ(同4.1%減)は、いずれも前年同月を下回った。
 


 

 四半期ごとの推移を見ると、第1四半期は冬場の寒波が例年以上に厳しかったことにより前年同期を下回ったものの、第2四半期は天候の回復から牧草の生育状況が良好だったこともあり、前年同期を上回った(図1)。また、第3四半期はEU南部が夏の高温・乾燥に見舞われたため、こうした地域では牧草の生育に影響が出たものの、主要生産国の多くで牧草の生育に適した天候が続いたことから前年同期並みを維持した。この結果、第1〜3四半期の生乳出荷量は1億1005万トンと前年同期並みとなった。
 


 

米国向け輸出増などから、チーズ生産量は前年同期を上回る
 欧州委員会によると、2021年1〜9月のEUの主要な乳製品の生産量は、チーズを除きいずれも前年同期を下回った(図2)。品目別に見ると、チーズは694万9610トン(前年同期比2.3%増)と前年同期を上回った。これは、航空機補助金をめぐる米国の追加関税措置が停止されたことで、米国向け輸出が大幅に増加したことに加え、中国向け輸出の拡大が生産量の増加につながったものとみられる(注1)。その他の主要乳製品では、チーズ向け生乳の仕向け割合が高かったことが影響し、バターは159万2424トン(同1.3%減)、脱脂粉乳は101万2260トン(同4.2%減)、全粉乳は44万7964トン(同10.4%減)と、いずれも前年同期を下回る結果となった。
 

(注1)海外情報「EUと米国、航空機補助金を巡る追加関税措置の停止を合意(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002968.html)を参照されたい。



 

生乳取引価格は高い水準も、コスト上昇が懸念
 欧州委員会によると、10月のEUの平均生乳取引価格(推定値)は、100キログラム当たり38ユーロ(4937円、1ユーロ:129.91円(注2))と前年同月比8.4%高となった(図3)。例年、同価格は生乳出荷量が増加する夏場に下落し、生乳出荷量が減少する冬場に向けて上昇するという季節傾向があるが、2021年は、中国の輸入需要に伴う乳製品国際相場の上昇や乳製品価格が好調に推移していることもあり、夏場に下落することなく、上昇を続けている。
 同価格は上昇を続けているものの、酪農経営に影響を及ぼす飼料価格やエネルギーコストは上昇している。直近の11月15日の週では、過去4週間の平均と比較して飼料価格は1.4%高、エネルギーコストは0.5%高となっている。同価格の上昇率に比べると、投入コストの上昇率は低い水準にあるものの、今後の生乳生産への影響が懸念される。
 

(注2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年11月末TTS相場。
 


 

(調査情報部 小林 智也)