と畜頭数および豚肉生産量は前年比増、輸入量は大幅減

2021年の豚と畜頭数と豚肉生産量は引き続き高水準で推移
　中国農業農村部によると、豚と畜頭数は引き続き前年同月を上回る水準で推移しており、2021年11月は前年同月比62.9%増の2649万頭と前年を大幅に上回った（図2）。今冬は豚肉価格が近年に比べ安価で推移していることから（後述）、春節に向けた冬場の豚肉の塩漬けや薫製などのハム、ソーセージ製造が例年よりも早く行われたとされており、これが10、11月のと畜頭数増加の一因になっているとみられる。
 

　豚と畜頭数と同様に豚肉生産量も引き続き前年を上回った。中国国家統計局によると、21年の豚肉生産量は前年比28.8%増の5296万トンとなった（図3）。21年9月に繁殖雌豚頭数が減少に転じたこと、妊娠から出荷まで10カ月以上かかることを考慮すると、と畜頭数および豚肉生産量の本格的な減少は22年第3四半期以降と推測される。

豚肉価格、子豚価格ともに10月に反転も、低水準で推移
　2021年は春先から豚肉価格および子豚価格は下落傾向にあったが、中央政府による同年4回目の豚肉の買い入れおよび保管が実施された10月^（注1）に底を打ち、それ以降は少しずつ上昇に転じている。12月の豚肉価格は前月比3.5%高の1キログラム当たり28.4元（523円：1元=18.4円^（注2））、子豚価格は同6.5%安の同28元（515円）となった（図4）。
　10月以降の豚肉価格上昇は、春節向けの塩漬けをはじめとした加工品製造が前倒しされたことによる季節的な消費需要に下支えされたものとされるが、1月に入ると例年の春節前需要を見越した出荷が行われたため、再度、下落傾向で推移しており、例年需要が落ち着いてくる春節以降の価格推移が懸念される。中国国家発展改革委員会によると、21年11月〜22年1月上旬まで、豚/穀物比^（注3）は6：1以上で推移していたものの、中旬は「政府の豚肉備蓄調整メカニズムを改善し、豚肉市場の供給と価格の安定化を図る準備計画」^（注4）の第三級および第二級警報水準に当たる5：1台で推移している。
　現地報道によると、10月以降の一時的な豚肉価格の上昇に伴い子豚価格も一時的に上昇に転じているが、今後の豚肉価格の上昇を見込みにくいこと、飼養コストの増加、冬場の疾病リスクの増大などにより、子豚需要は様子見の状況とされている。

_{（注1）海外情報「豚肉価格低迷で国家備蓄による買入・保管を再度実施（中国）」（https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003064.html）を参照されたい。
（注2）三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年1月末TTS相場。
（注3）政府による養豚生産者の収益性の指標値。算出方法は、1キログラム当たり生体豚出荷価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は7：1とされる。
（注4）海外情報「豚肉価格下落を受けて国家備蓄のための豚肉の買入・保管を開始（中国）」（https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002983.html）を参照されたい。}

 

2021年豚肉輸入量は前年比で大幅に減少
　2021年の豚肉輸入量は、前年比16.9%減の357万4385トンと大幅に減少した（表）。12月単月で見ると前年同月比62.1%減、前月比17.4%減の16万3976トンと大幅に減少している。同年の輸入量を輸入先別に見ると、スペイン、ブラジル、オランダからの輸入量は前年を上回る数量となった。一方、豚肉価格の高騰や労働者不足が問題となっている米国や、洪水被害により物流の混乱が発生したカナダからの輸入量は大幅に減少した。なお、中国国務院は22年1月1日より一部の輸入品に対する輸出入関税率を調整する通知を発表した。これに伴い、豚肉の輸入暫定税率は現行の8%から12%の最恵国税率に戻されることとなった。中国農業科学院によると、国内生産の回復に伴い輸入豚肉の需要は徐々に減少すると見込まれるが、輸入品と国産品との価格差はいまだに輸入品に有利な水準にあることから、合理的な関税率の調整は国内市場の供給を確保するとともに豚肉価格の安定化に効果的であるとしている。