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海外の需給動向【牛乳・乳製品/米国】 畜産の情報  2022年3月号

生乳供給量の伸び悩みにより乳製品価格が上昇

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飼養頭数・生乳生産量ともに減少
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Milk Production」によると、2021年12月の乳用経産牛飼養頭数は前年同月比0.7%減の937万5000頭となった。乳価の上昇に後押しされる形で増加傾向で推移してきた飼養頭数であるが、同年5月をピークに減少に転じ、10月から3カ月連続で前年同月を下回って推移している(図1)。


 12月の生乳生産量は、同0.1%減の853万9000トンとなった(図2)。飼料および労働力確保などのコスト上昇が生産者の経営に影響を及ぼし、一部の生産者では乳牛の淘汰とうたも行われ、生乳生産量の伸びが抑制されている。


バターおよび脱脂粉乳の価格は上昇
 乳製品価格が全体的に堅調に推移している中、バターおよび脱脂粉乳の価格上昇が顕著になっている。
 USDA/NASSの「Cold Storage」によると、2021年11月のバターの期末在庫は、前年同月比15.9%減の9万6100トンとなり、同年6月をピークに5カ月連続で減少している(図3)。現地報道によると、生乳生産量が伸び悩んでいる状況下で、チーズの生乳仕向け量が増加していること、また、輸出向けやクリスマス需要などの国内外からの需要が堅調であること、さらに、サプライチェーン(供給網)の混乱に伴う不安定な供給などが要因として挙げられている。特に労働力不足は深刻な問題となっており、生産性が大きく損なわれている工場もあるとされている。


 また、トラックのドライバー不足も続いており、バター原料に用いられるクリームの出荷に影響を及ぼしているとの報道もある。このような状況を受け、同年後半に入りバターの価格は上昇しており、12月のバター卸売価格は、前年同月比45.5%高の1ポンド当たり2.16米ドル(1キログラム当たり552円:1米ドル=116円(注))となった(図4)。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年1月末TTS相場。
 

 
 また、脱脂粉乳在庫量も同年6月から減少を続けており、11月の期末在庫量は、前年同月比21.0%減の8万9100トンと大幅に減少している(図5)。在庫の減少は、バター同様、好調な輸出と脱脂粉乳に向けられる生乳量が少なかったことが要因とされている。そのため、脱脂粉乳の卸売価格は同年夏から上昇を続け、12月は、前年同月比41.2%高の1ポンド当たり1.59米ドル(1キログラム当たり407円)と数年来の高値を記録した(図6)。現地報道では、在庫量の回復には時間がかかるため、今後しばらくの間、価格は堅調に推移すると見込まれている。



輸出は引き続き好調に推移
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の「Dairy Data」によると、2021年11月の乳製品輸出量は引き続き堅調に推移している(表)。

 品目別で見ると、脱脂粉乳の輸出量は7万6400トン(前年同月比22.9%増)と大幅に増加している。東南アジア向けが輸出量の増加をけん引しているほか、南米、メキシコ、中米、中国などほとんどの主要市場で大幅に増加している。米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、西海岸の港湾の混雑の影響により滞留していた東南アジア向け製品の輸出が行われたことが11月の数量増加に起因しているとしている。
 チーズは、日本やメキシコなどの輸出先からの強い需要に加え、競合国などの生産力低下により、3万3500トン(同39.9%増)と大幅に増加した。特にメキシコ向けが好調であったほか、南米諸国、韓国、豪州向けも好調に推移した。また、品目では特にチェダーチーズの輸出量が増加している。USDECによると、日本が加工用チェダーチーズの購入を増やしたことによることが大きいとしている。
 一方、ホエイの輸出量は1万8000トン(同7.1%増)、タンパク質濃縮ホエイ(WPC)の輸出量は1万700トン(同15.2%減)となった。両品目の主な輸出先である中国向けは大幅に減少したが、東南アジア、日本、韓国、メキシコ向けなどの増加により相殺されている。USDECによると、米国産WPCの輸出量の減少は、輸出価格が高くなっていることに加え、堅調な国内需要から輸出可能量が少なくなっている可能性を挙げている。
(調査情報部 上村 照子)