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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2022年4月号

肉牛取引価格、牛群再構築の進展により下落傾向

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2022年の牛肉生産量、輸出量は増加の見込み

豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、最新の牛肉生産量などの見通しとなる「Industry projections 2022-February update」を公表した(表1)。


 これによると、2022年の牛飼養頭数は2720万9000頭(前年比4.2%増)と前年から109万8000頭の増加を見込んでおり、成牛と畜頭数は670万頭(同11.7%増)、牛肉生産量も208万4000トン(同12.8%増)とかなり大きく増加するとしている。また、フィードロット飼養頭数の増加などから枝肉重量も高い水準で推移すると予測されており、牛肉輸出量も106万トン(同15.5%増)とかなり大きく増加すると見込んでいる。
 一方で、牛肉生産に関連する牛群再構築の状況についてMLAは、州ごとに進捗(しんちょく)状況が異なるとしている。このうち、肉牛飼養頭数の多いクイーンズランド(QLD)州では牛群再構築への着手が比較的遅かったことから、今後も継続して増頭が図られる見込みであるとしている。しかし、ニューサウスウェールズ(NSW)州とビクトリア州では、すでに繁殖用雌牛が順調に増頭しており、牧草の良好な生育状況を背景に、22年の春ごろ(9〜11月ごろ)には多数の子牛が生産されるとしている。
 

肉牛生体取引価格は下落傾向

 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、これまで上昇してきた価格が2022年1月25日に下落に転じて以降、1キログラム当たり1125豪ドル(956円:1豪ドル=84.95円(注1))前後で推移しており、もちあいの状況が続いている(図1)。ただし、過去5カ年平均との比較では、依然として2倍近くの高水準となっている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。


 今後のEYCI価格の動向についてMLAの価格予測調査では、22年6月末は同998豪セント(848円)とされているほか、豪州の畜産調査会社のトーマスエルダーマーケッツは、22年の年間平均価格を同828豪セント(703円)と予測するなど、牛群再構築の進展に伴い、EYCI価格の下落が見込まれている。
 また、豪州東部地区の主要州の肉用牛生産者販売価格も、22年1月に入り下落に転じている。同月のNSW州の若齢牛価格は同632豪セント(537円)、また、主に日本市場向けとされるQLD州の去勢肥育牛価格は同662豪セント(562円)、主に米国向けのハンバーガー用パテとして使用される経産牛の価格は同652豪セント(554円)となっている(図2)。
 
 

1月の牛肉輸出量は記録的な低水準

 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2022年1月の牛肉輸出量は4万3362トン(前年同月比12.6%減)とかなり大きく減少した(表2)。現地報道によると、過去5年間の平均よりも約3割低い水準となっており、牛群再構築によると畜頭数の減少に加え、新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大により、従業員の欠勤や隔離が発生した結果、食肉処理施設の稼働率が低下したことが一因とされている。なお、22年2月末現在では、感染者数の減少とともにこれらの影響はおおむね解消したとされている。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは、1万214トン(前年同月比18.6%減)と大幅に減少した。韓国向けは、唯一前年同月を上回っており、9288トン(同10.3%増)とかなりの程度増加した。中国向けは8780トン(同4.2%減)とやや減少した。
 現地報道によると、豪州の食肉加工大手テイズ社のナラコート工場(南オーストラリア州)では、22年1月29日以降の中国向けの牛肉輸出が停止したとされている。これにより、中国向けの牛肉輸出が停止されている豪州の食肉加工処理場は8カ所(注2)となるが、依然として輸出再開の目途は立っていない。このような状況を踏まえ、豪州のダン・テハン貿易・観光・投資相は、本年末ごろの発効が予定されている豪英FTAの重要性を訴えるとともに、EUやインドとのFTA妥結に向けた交渉状況の発信を強化している。
(注2)『畜産の情報』2021年12月号「牛肉輸出量は増加傾向、 牛群再構築は継続中」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001885.html)を参照されたい。


 
(調査情報部 国際調査グループ)