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海外の需給動向【豚肉/米国】 畜産の情報 2022年4月号

2021年の輸出量は好調を維持、肥育豚価格は堅調の見込み

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中国向けは減少も、メキシコ向けなどの増加で微減にとどまる

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の「Livestock and Meat International Trade Data」によると、2021年12月の豚肉輸出量は24万1100トン(前年同月比16.5%減)と前年同月を大幅に下回った(表)。この結果、21年(1〜12月)の総輸出量は、同年前半の好調な輸出が相殺され、前年比3.4%減の318万9000トンとなった。
 21年の輸出量について輸出先別に見ると、昨年首位であった中国・香港向けが53万7500トン(前年比44.5%減)と大幅に減少し、輸出先の3位となった。中国では、アフリカ豚熱により減少した豚飼養頭数が回復し、国内の豚肉生産が回復していることにより輸入量が減少した。一方、メキシコ向けは93万3800トン(同31.4%増)と大幅に増加し、輸出先の首位となった。米国食肉輸出連合会(USMEF)によると、メキシコ向けの多くは加工用であるが、コロナ禍による家庭内調理の増加に加えて、テイクアウトや宅配需要が増えたことも、輸出増の要因としている。輸出先2位の日本向けは55万5100トン(同2.0%増)、同5位の韓国向けは23万1800トン(同5.2%増)と小幅に増加している。また、フィリピン向けは9万1400トン(同83.5%増)と過去最高を記録した。同国でのアフリカ豚熱の発生を受けて、豚肉供給の安定を図るため、フィリピン政府が豚肉の輸入関税率を一時的に引き下げたことが輸出増を後押しした。中国・香港向けの大幅な減少が、メキシコをはじめとした主要輸出先向けの増加により相殺され、過去最高を記録した20年と比べると減少したものの、21年はそれに次ぐ好調な輸出となった(図1)。


 

供給量の減少により在庫は低水準に

 USDA/ERSの「Livestock and Meat Domestic Data」によると、米国内の肥育豚飼養頭数の減少により2022年1月の豚肉生産量は103万4000トン(前年同月比8.0%減)と前年同月をかなりの程度下回った(図2)。
 また、米国農務省農業統計局(USDA/NASS)の「Cold Storage」によると、豚肉生産量減少の影響を受けて21年1月末の豚肉の期末在庫量は19万4360トン(同6.3%減)と前年同月をかなりの程度下回った(図3)。現地報道によると、通常、1〜4月にかけてバラ肉の在庫が増加するが、現在は価格が高止まりしていることから、2、3月ともにわずかな増加にとどまる可能性が高いとしている。



 

豚肉卸売価格、肥育豚価格ともに高水準で推移

 国内外の需要が旺盛な中、豚肉供給量の減少を受け、2021年1月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー(注1))は、100ポンド当たり90.56米ドル(1キログラム当たり233円:1米ドル=116.55円(注2)、前年同月比12.8%高)と、前年同月をかなり大きく上回り、1月としては近年で最も高い価格となった(図4)。


 豚肉卸売価格の上昇を受けて、21年1月の肥育豚価格は100ポンド当たり56.02米ドル(1キログラム当たり144円、同18.1%高)と前年同月を大幅に上回った(図5)。豚肉卸売価格同様、1月としては近年で最も高い価格となっている。米国では国内生産以外に、主にカナダから生体豚を輸入しているが、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、22年のカナダの生体豚輸出頭数は減少すると予測されており、引き続き需給のひっ迫傾向が続くとみられている。
 USDA/ERSは、豚肉と代替し得るたんぱく源としての牛肉および鶏肉の価格も高いため、豚肉の消費がそれらに流れることは考えにくく、肥育豚価格は22年も堅調に推移すると見込んでいる。
(注1)各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構築した卸売指標価格。
(注2)三菱UFJサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。

(調査情報部 上村 照子)