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海外情報 実態調査 畜産の情報 2022年9月号

食肉加工品および乳製品の子どもへの摂取に関する意識と実態調査

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調査情報部 上村 照子

【要約】

 食肉加工品や乳製品の摂取については、添加物などへの懸念から、子どもの食事などに取り入れることについて消極的な考えを持つ母親もいる。しかし、実態としては、調理や栄養摂取の手軽さから、その頻度に差はあるものの、何らかの形で摂取している子どもは多いことが分かった。ただし、摂取に対する母親の意識は、国により、世代により理由が異なることも分かった。また、食肉・乳製品代替製品に対する考え方も国や世代により違いがあり、日本は全体として好意的意見が他国よりも多い傾向にあった。

1 はじめに

 ハムやソーセージなどの食肉加工品やヨーグルト、アイスクリーム、乳酸菌飲料などの牛乳・乳製品は、私たちの日常生活で一般的に食する製品であり、これら製品には、子ども向けに開発された商品も多く、その成長に必要な栄養素なども数多く含まれている。
 他方で、子どもを持つ保護者の中には、製品に含まれる添加物や塩分、糖分への懸念から、摂取に慎重な姿勢を見せるケースもある。
 そこで、当機構では、これら食肉加工品および牛乳・乳製品、また、最近注目される植物由来の代替食品について、子どもへの摂取に関する保護者の意識と消費動向に関し、地理的、文化的バランスなどを総合的に考慮して4カ国の母親を対象にインターネットによるアンケート調査を実施した。本稿では、その結果を報告する。

2 調査概要

(1)調査対象:4カ国(日本、米国、ドイツ、豪州)の2歳以上18歳以下の子どもを持つ20代から40代の母親。なお、調査対象人数は、世代別で均等割を付した各国計900人(20代、30代、40代各300人、合計300人×3世代=900人)とした。
(2)調査期間:令和4年(2022年)2〜3月
(3)調査手法:インターネットによるアンケート調査

3 食肉加工品

(1)食肉加工品摂取への意識

 子どもにハムやソーセージなどの食肉加工品を食べさせることへの意識を調査したところ、取り入れたい(「積極的に取り入れたい」「毎食ではないが、まあ取り入れたいと思う」)と回答した者が、全体としては約7割となった(図1)。最もその割合が高かったのが豪州(73%)であり、次いでドイツ(72%)、米国(69%)と続き、最も低いのは日本(64%)であった。
 一方で、取り入れたくない(「できれば取り入れたくない」「絶対取り入れたくない」)と回答した者は、各国ともあまり高くはなく、最も割合が高かったのが米国(26%)となり、豪州(26%)、ドイツ(25%)、日本(24%)となった。また、日本は「どちらでもない・気にしていない」と回答した者が11%と他国に比べやや高かった。
 
 次に取り入れたいと回答者にその理由を調査した(図2)。日本、米国、豪州で「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」と回答した者が最も多かったのに対し、ドイツは「自分が好きだから・おいしいと思うから」と回答した者が最も多かった。また、米国、ドイツ、豪州は「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と回答した者が次に多かった。
 一方で、取り入れたくないと回答した者にもその理由を調査した(図3)。日本、米国、ドイツは「添加物を含む食品を子どもに食べさせたくないから」と回答した者が最も多く、中でも日本(155人)は米国(109人)、ドイツ(82人)と比べその数が突出した。また、各国とも塩分・脂肪分を気にしている回答者も多く、米国およびドイツ、豪州では「加工されていない食肉を食べさせたい」と回答した者も一定数あった。

   
 

(2)食肉加工品摂取の頻度

 実際に子どもが食べている頻度について、食肉加工品を取り入れたいと考えている者と取り入れたくないと考えている者に分けて、その結果をまとめた(図4、5)。

  
 
  取り入れたいと考えている者の回答結果を見ると、「毎食必ず」から「月に1回程度」までと頻度にばらつきがあったが、全体的には週に1回以上取り入れているという結果になった。また、国別で見るとドイツは、「毎食必ず」「1日に1回程度」「週に3〜5回程度」が約9割を占める結果となった。次に「週に3〜5回程度」まで取り入れている割合が多いのが豪州となり、米国がそれに続いた。日本は同レベルの頻度では唯一5割を下回り、他国と比べ食肉加工品摂取の頻度が低いことが分かる。
 他方で、取り入れたくないと考えている者は、日本が「週に1回程度」「月に数回程度」の割合が5割弱と高く、「月に数回程度」までを加えると8割を超えた。ドイツも「月に数回程度」まで食べている者で8割を超えているが、同国は日本に比べると「1日に1回程度」「週に3〜5回程度」としている者の割合が高く、全体として食べている頻度が多いことがうかがえる。
 また、米国および豪州では、「半年に数回程度」「年に数回程度」「ほとんど食べていない」「一切食べていない」の割合が3割を超えており、取り入れたくないという母親の考えが、日本、ドイツに比べ、より反映されていると考えられる。
 

(3)食肉加工品摂取の実態

 子どもの食事に取り入れたくないと考えているが、実際は月に数回以上食べている者にその理由を調査した(図6)。ドイツ以外の国では、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が最も多かった。
 一方でドイツは、「自分が好きだから・おいしいと思うから」という理由が多く、「学校給食や外食など家庭以外の場で提供されていると思うから」「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と続き、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が全318回答中33回答であった。ドイツでは、家庭以外の場で提供される機会が多く、ソーセージなどが食生活の中で大きな位置を占めていることが要因として考えられる。なお、回答数としては少ないが、子どもに取り入れたいと考えているが、実際は半年に数回程度以下しか食べていない者の理由としては「子どもが(食肉加工品を)嫌いだから」という回答が最も多かった(図7)。

  
 

(4)摂取を避けている食肉加工品

 ハムやソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品の中で、特に食べるのを避けている加工品の有無について調査した(図8)。日本および豪州は「特にない」という回答が突出しているのに対し、ドイツはいずれかの食肉加工品を避けているという回答が8割を超えた。特に「ベーコン」を避けていると回答した者が多いことが特徴的である。また、食べるのを避けている理由を調査したところ、「他の加工品と比べ、塩分が気になるから」「他の加工品と比べ、脂肪分が気になるから」という回答が多い日本に対し、米国、ドイツ、豪州は「子ども自身が嫌いだから」という回答が最も多かった(図9)。特に「ベーコン」を避けているという回答が多かったドイツは、「子どもが嫌いだから」と回答した者が400人を超え、これは他国に比べ大幅に多かった)。

 

(5)食肉加工品の調査結果

 このように、食肉加工品に対する意識と実態について国別の傾向を見ると、日本は「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由で、子どもの食事などに取り入れている傾向があると言える。ただし、添加物や塩分・脂肪分などを気にするとの回答もあり、結果として食べさせてはいるものの、他国に比べその頻度は少ない傾向が見られた。
 米国と豪州については、「取り入れたくない」と考えている母親の意識がある程度反映されていると想定できるが、食べている理由として、日本同様「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由も多く、これは食の志向性として「ホームクッキングを重視した食生活」と回答した者が多いことも関連している可能性がある(参考-図4(後掲))。
 また、ドイツは、他国に比べて食べている頻度も高く、また取り入れたくはないものの実際食べている者の理由の中で、家庭以外の場での提供が多いと回答している者が多いことから、食生活にソーセージが浸透しているという食文化も背景にあると考えられる。

(6)属性から見た食肉加工品摂取意向の傾向

ア 世代別傾向
 食肉加工品摂取意向の傾向について、母親の世代別に国別で調査した(図10〜16)。日本は世代が上がるほど取り入れたいと考えている者の割合が多い。ただし、若い世代で取り入れたくないと考える者が他国と比べて多いわけではなく、「どちらでもない、気にしていない」と回答している者が多いことが特徴的である(図10)。


 米国では、20代の世代で積極的に取り入れたいと回答する者が他の世代よりも多く、世代が上がる40代では、これとは逆に取り入れたくないと回答する者が多いという特徴となった(図11)。取り入れたい者の理由を世代別に見ると、20代の母親は、「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」、「形状や硬さなど子どもが食べやすいから」、「パッケージにキャラクターなどが描かれ、子ども向けに作られたものがあり、子どもが好きだから」と回答した者の割合が他の世代よりも多かった(図12)。
 


 一方で、取り入れたくない者の理由を世代別に見ると、40代の母親は「添加物を含む食品を子どもに与えたくないから」と回答した割合が、他の世代に比べて多かった(図13)。


 ドイツは、世代が上がるにつれて「食肉加工品を取り入れたい」と回答する者が減少し、取り入れたくないと回答する者が多くなった(図14)。特に40代で「できれば取り入れたくない」と回答する者が増えている。40代の取り入れたくない者の理由については、「塩分・脂肪分が気になるから」「自分が嫌いだから、おいしいと思わないから」とした割合が、他の世代よりも多かった(図15)。
 豪州については、世代間による差は他の国と比べ少ない結果となっている(図16)。



 
イ 就業形態から見た傾向
 食肉加工品を取り入れたいかについて、4カ国全体における母親の就業形態から調査した結果が図17である。形態の母数に差があるため単純に比較することはできないが、「フルタイムで働いている」、「育児休暇中である」、「学生」の者が取り入れたいと考えている割合が高い傾向にある。図2から取り入れたいと考えている者の理由として、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と時間や効率性を重視しているためと考えられる。ただし、参考-図4(後掲)で示した食の志向性では、日本はこれを重視しているという回答が少なかったにもかかわらず、取り入れたいと考えている理由として「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が多いという乖離かいりが見られた。なお、就業形態が「学生」の者で積極的に取り入れたいと回答している割合が高い理由は、母数55人のうち38人が20代であり、米国の20代の母親の積極的回答(33人)が含まれていることが大きい。
 

4 牛乳・乳製品

(1)牛乳・乳製品摂取への意識

 子どもに牛乳・乳製品などを食べさせることへの意識を調査したところ、子どもの食事やおやつなどに取り入れたい(「積極的に取り入れたい」「毎食ではないが、まあ取り入れたいと思う」)と回答した者が、全体として約85%と非常に高い結果となった(図18)。最もその割合が高かったのが豪州(90%)で、次いで米国(88%)、日本(85%)と続き、最も低かったのはドイツ(82%)である。特に米国と豪州は、「積極的に取り入れたい」と回答する割合が5割を超えるという特徴が見られた。


 他方で、取り入れたくない(「できれば取り入れたくない」「絶対取り入れたくない」)と回答した者の割合は、ドイツ(12%)が最も高く、次いで米国(10%)、豪州(8%)、日本(7%)となった。食肉加工品同様、日本は「どちらでもない、気にしていない」と回答する者の割合が他国に比べ高かった。
 次に取り入れたいと回答した者にその理由を調査した(図19)。日本、米国、豪州が「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と回答した者が最も多かったのに対し、ドイツは「自分が好きだから・おいしいから」と回答した者が最も多く、「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」がこれに続いた。ドイツと他国の間で、最も多い回答の首位と次点が入れ替わるのは、食肉加工品と同じである。


 
 また、取り入れたくないと回答した者にもその理由を調査した(図20)。米国、豪州、日本は「自身または子どもにアレルギーがあるなど、健康上の理由」と回答した者が最も多いのに対し、ドイツは「宗教上の理由・菜食主義だから・動物愛護への配慮」と回答した者が突出して多かった。
 
 

(2)牛乳・乳製品摂取の頻度

 母親の意向に関係なく、実際に子どもが牛乳・乳製品を摂取している頻度について調査した結果が図21である。約85%の母親が牛乳・乳製品を摂取させたいと考えていることからも想定できるように、全体として「毎食必ず」「1日に1回程度」「週に3〜5回程度」「週に1回程度」摂取していると回答した者は92%に上る。国別に見ても、この四つの項目の合計は、日本(87%)、米国(90%)、ドイツ(94%)、豪州(96%)でいずれも高い割合を示しており、各国ともに牛乳・乳製品は何らかの形で子どもが摂取しているということが分かる。
 

 さらに、その頻度を細かく見ると、米国は「毎食必ず」と回答した者が最も多く、「1日に1回程度」と回答した者との合計の割合は64%に上った。また、豪州は「毎食必ず」という回答は11%と他国と比較して多くはないものの、「1日に1回程度」と回答した者が57%と最も多く、この両項目の合計で68%となった。月に数回程度以上摂取している割合が高いドイツは、「週に3〜5回程度」と回答した割合が33%と他国に比較して高い。また、日本は「週に1回程度」と回答している者が12%と他国と比較して高いことから、ドイツと日本は、摂取はしているものの、米国、豪州と比較すると、摂取頻度は低いという結果になった。
 ここから、米国および豪州の母親は、牛乳・乳製品を積極的に摂取させたいと考え、実際、子どもは積極的に摂取しているという実態があると考えられる。これは、両国が酪農大国であり、国内生産・供給が多いことから、食生活の中で牛乳・乳製品がより身近な食品であるからと考えられる。
 一方、ドイツは、同じ酪農大国でありながら米国、豪州に比べて摂取頻度が低いという結果は興味深い。ドイツの取り入れたくない理由として、「宗教上の理由・菜食主義だから・動物愛護への配慮」が突出して高いことなどが影響しているとみられる。
 

(3)摂取を避けている牛乳・乳製品

 牛乳・乳製品の中で、特に摂取を避けている製品があるか調査した結果が図22である。どの国も「特にない」という回答が多くを占めているが、米国、豪州では「乳酸菌飲料」と回答している者が多い。

 
 また、牛乳や特定の乳製品を避けている理由を調査した結果が図23である。日本は「他の製品と比べて、糖分が気になるから」「他の製品と比べて、脂肪分が気になるから」という回答が上位を占めたのに対し、米国は「他の製品と比べて、おいしいと思わないから・自分が嫌いだから」「他の製品と比べて、脂肪分が気になるから」と回答した者が多かった。豪州は「他の製品と比べて、糖分が気になるから」という回答が多く、「他の製品と比べて、おいしいと思わないから・自分が嫌いだから」という回答が次に続いた。

 米国、豪州で「乳酸菌飲料」を避けているという者の理由を抽出すると、最も多かったのが「他の製品と比べて、おいしいと思わないから・自分が嫌いだから」という理由であった。
 なお、「牛乳」を避けていると回答した者の理由を抽出したところ、日本は「他の製品と比べて、脂肪分が気になるから」と回答した者が最も多かったのに対し、米国、ドイツ、豪州は「乳糖不耐症や牛乳アレルギーなど健康面の理由」と回答した者が最も多かった。
 また、子どもが牛乳・乳製品を摂取している者に摂取させるに当たり心がけていることを調査した結果が図24である。日本は「成分については気にせず、摂取させている」という回答が5割を超えたのに対し、他国はその割合が日本ほど高くはない。特に豪州は、「無糖の製品をなるべく摂取させるようにしている」と回答した者が42%と他国に比べ多かった。また、「無脂肪または低脂肪の製品をなるべく摂取させるようにしている」「無糖かつ無脂肪または低脂肪の製品をなるべく摂取させるようにしている」と回答する者も一定数存在し、いずれかを心がけている者の割合は米国、豪州では75%を超え、ドイツでも66%となった。

 

(4)牛乳・乳製品の調査結果

 このように、牛乳・乳製品に関しては、いずれの国でも母親は栄養面で重要な製品であるという認識から、子どもの食事やおやつなどに取り入れたいと考えており、実際その摂取頻度も高いという結果になった。また、取り入れたい理由および取り入れたくない理由として、「母親が好きだから」もしくは「嫌いだから」という母親の嗜好しこう も大きく影響している。また、米国、ドイツ、豪州では、日本に比べて母親が糖分・脂肪分を気にかけているという傾向があった。

5 植物原料由来の代替食品

(1)食肉代替食品に対する意識

 大豆など植物原料由来の食肉代替食品を子どもの食事などに取り入れることへの意識を調査したところ、「もうすでに取り入れていて、何回も食べさせたことがある」、「過去に1度食べさせたことがあり、機会があればまた食べさせたい」、「まだ食べさせたことがないが、食べさせてみたい」という回答をした者が、全体として68%であった(図25)。最もその割合が高かったのは日本(77%)であり、次いでドイツ(72%)、米国(63%)、豪州(62%)と続いた。ただし、日本では「まだ食べさせたことがないが、食べさせてみたい」という回答が49%を占めたのに対し、他国は既に何回も食べている、もしくは1度食べたことがあるという回答が日本よりも多かった。


 
 一方で、「まだ食べさせたことがなく、あまり食べさせたくない」、「食べたこともなく、全く食べさせたくない」、「過去に食べさせたことがあるが、2度と食べさせたくない」という消極的な回答をした者は、豪州(38%)が最も多く、米国(36%)、ドイツ(27%)と続き、日本(23%)は最も低かった。
 食肉代替食品を取り入れたい者にその理由を調査した結果が図26である。各国とも「興味がある・あったから」という回答が多いものの、日本の次に好意的回答が多かったドイツでは、「環境保護への配慮・動物愛護への配慮」という回答が多かった。また、日本は「健康のため」と回答している者が他国より突出して多かった。日本では豆腐や納豆といった大豆を使った製品が古くから存在し、それらは健康に良いという概念がすでにあるからではないかと推察される。

 
 消極的な回答をした者にその理由を調査した結果が図27である。各国とも「おいしくなさそうだから・おいしくないから」という回答が多い中で、特に消極的回答が多かった米国、豪州がそれを理由として挙げている。また2番目の理由として、いずれも「代替食材の食品を取り入れたくないから」としている。両国はバーベキューなどで日常的に食肉を消費する文化があり、食肉代替食品の多くは、パテやパスタソースの食材などに向けられるひき肉での形態が多いということもあると考えられる。
 一方で、日本は両国と比較して、こま切れ肉やひき肉などを食べる傾向があり、これら食べ方の違いが代替食材に対する意識にも表れていると考えられる。


 

(2)食肉代替食品に対する世代別の傾向

 次に、(1)の結果について世代別傾向を国ごとに見た結果が図28〜31である。日本は、どの世代にも共通して積極的回答が多く、また40代では積極的回答が最も多いという特徴がある。一方で、他国は世代が上がるほど消極的意見が増えており、その傾向は特に豪州で強い。





 図32は、豪州の消極的な意見の理由の割合を示したものであるが、最も消極的な意見の多い40代の母親世代の食べさせたくない理由として、「おいしそうでないから・おいしくないから」が最も多く、「代替食材の食品を取り入れたくないから」が続いた。この傾向は他の世代と変わらないが、「添加物や塩分が気になるから」という回答をした者の割合が20代、30代よりも多いという特徴が見られる。

 

(2)乳製品代替食品に対する意識

 乳製品代替食品を子どもに摂取させることへの意識を調査したところ、「もうすでに取り入れていて、何回も食べさせた(飲ませた)ことがある」「過去に1度取り入れたことがあり、機会があればまた食べさせ(飲ませ)たい」「まだ試したことがないが、食べさせ(飲ませ)てみたい」という積極的な回答をした者が、全体として69%であった(図33)。最もその割合が高かったのは食肉代替食品同様、日本(71%)となり、米国(70%)、ドイツ(69%)、豪州(66%)と続いた。また、食肉代替食品と同様に日本では、「まだ試したことがないが、食べさせ(飲ませ)てみたい」という回答が43%を占めたのに対し、他国では既に何回も食べている、もしくは1度食べたことがあるという回答が日本よりも多く50%を超えた。


 他方で、「まだ試したことがなく、あまり食べさせ(飲ませ)たくない」「試したこともなく、全く食べさせ(飲ませ)たくない」、「過去に試したことがあるが、2度と食べさせ(飲ませ)たくない」という消極的な回答をした者は、豪州(34%)が最も多く、ドイツ(32%)、米国(30%)、日本(28%)と続いた。
 乳製品代替食品を取り入れたい者にその理由を調査した結果が図34である。食肉代替食品と同様に、各国とも「興味がある、あったから」という回答が多いものの、日本は「健康のため」と回答した者が他国より大幅に多く、ドイツでは「環境保護への配慮・動物愛護への配慮」という回答が多いという特徴があった。乳製品代替食品として、日本には古くから大豆を原料とした豆乳があり、食肉代替食品と同様に日本には、大豆は健康に良いという見方もあることから、アーモンドミルクやオーツミルクなど植物由来の乳製品代替食品に対する抵抗感が低いのではないかと考えられる。
 
 
 消極的回答をした者にその理由を調査した結果が図35である。各国とも「おいしくなさそうだから・おいしくないから」という回答が多いことは、食肉代替食品に対する傾向と変わりない。その他として、日本以外の国では「代替食材の食品を取り入れたくないから」という理由も多く、また、ドイツや豪州では「価格が高いから」という理由も多かった。

(4)乳製品代替食品に対する世代別の傾向

 次に、(3)の結果について世代別傾向を国ごとに見た結果が図36〜39である。日本は、積極的な回答をした世代は、年齢が上がるほど増加しているが、他国では世代が上がるほど消極的な意見が増えており、特に豪州でその傾向が強いことは、食肉代替食品と同様である。




 図40は、日本の乳製品代替食品を取り入れたい理由の割合を世代別に示したものであるが、いずれの世代も「健康のため」という回答の割合が最も高く、積極的な回答が多い40代の母親世代では特にこの回答の割合が他の世代に比べて高かった。
 
 
 
 図41は、豪州の乳製品代替食品を取り入れたくない理由の割合を世代別に示したものである。20代、30代の母親は「代替食材の食品を取り入れたくないから」と回答した割合が最も多いのに対し、40代の母親は「おいしくなさそうだから・おいしくないから」と回答した者の割合が最も高かった。

6 おわりに

 母親は食肉加工品および牛乳・乳製品を子どもの食事などに取り入れることについて、好意的な回答が多いという結果となった。食肉加工品を取り入れたいと考える理由では「あると便利・簡単に1品増やせる」という調理に当たっての効率性を重視した回答が多かった。特に興味深い点として、米国の有機や環境に配慮した食料品市場の成長を支えているとされるジェネレーションZ世代(一般的には1990年代半ばから2010年代序盤に誕生した層)に含まれる20代が、食肉加工品を好意的に捉えていたことが挙げられる。
 また、牛乳・乳製品はさらに好意的な回答が多く、その理由として「子どもに必要な栄養素を手軽にとれる」というものが多く、子どもの健康を気遣いながらも“手軽に”栄養素を摂取できるという要素も重要であることが見て取れる。さらに、調査結果でいずれも共通していたことは、自分(母親)がおいしいと感じるかということが強く反映されており、母親が自分で食べ、おいしいと思うものを子どもにも食べさせたいと考えていることがうかがえた。
 一方で、両製品とも取り入れたくないと考える者は、添加物、塩分、糖分、脂肪分などを気にかけているということが分かった。また、国により、摂取頻度に差があることから、食文化の違いや母親の考え方も実際の摂取状況に大きく影響を与えていると考えられる。
 植物由来の代替製品に対する意識も国による違いが見て取れた。日本は、豆腐や納豆など大豆加工品を食べる文化がある中で、米国、ドイツ、豪州と比較すると、将来的な摂取について好意的な意見が多かった。しかし、既にこれらの代替食品市場が展開されている米国や豪州では、消極的意見も一定数あることから、これらの動きは日本に対してどのように影響するのか関心が集まるところである。

(参考)回答者の属性
今回調査対象となった各国の回答者の同居している子どもの人数、その年齢、就業状況、食の志向性、食肉加工品に対する嗜好度については、参考-図1〜参考-図5の通りである。

(注) 回答者は、インターネットを利用できる環境下で生活していることに留意。