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国内需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2022年9月号

鶏卵卸売価格、低需要期ながら200円台で推移

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 令和4年7月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、前年同月の同価格が、高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の大規模発生による生産量の減少から高水準で推移していたため、1キログラム当たり205円(前年同月比40円安)と前年同月を下回った(図1)。
 例年、年明けに下落した同価格は、春先に向けて上昇し、夏の低需要期に再び下落する傾向があり、本年についても、5月下旬以降、気温の上昇に伴う需要の低下を受けて軟調に推移している。7月の日ごとの推移を見ると、前月の6月16日に下落した同210円のまま弱もちあいが続き、7月11日、25日にそれぞれ同5円ずつ下落した。この背景には、梅雨明け後の気温上昇に伴う家庭内での調理機会の減少や学校給食の休止などの季節要因による需要減退が挙げられる。これに加え、COVID−19感染者数の急増に伴って観光需要の先行きに不透明感が高まり、業務需要の回復が期待薄となったことも要因とみられる。
 ただし、同205円という金額は、過去5カ年の7月平均との比較では、12.4%高とかなり大きく上回る結果となっており、低需要期としては高い水準と言え、その要因としては、飼料価格をはじめとする生産コスト上昇の影響によるものという見方もある。
 今後について、供給面は、気象庁によると9月は多くの地域で平年より高い気温が続く見通しで、小玉中心の生産となることや、生産コスト上昇の影響も相まって、生産量の大幅な増加は見込まれないとみられる。需要面でも、学校給食の再開や外食大手ファストフードチェーンなどにおいて鶏卵を使用したメニューの増加が見込まれることから業務需要は好調に転じるとみられるものの、前述の通り平年より高い気温の日が続くとの予報から、テーブルエッグ需要はしばらく低調が続くとみられ、今後の動向を注視する必要がある。また、業務需要の不透明さに加えて、食品加工業者などの原材料高に伴う対応、物価上昇に伴う末端消費の動向などが今後の鶏卵需給にどのような影響を及ぼすかが注目されている。

 

4年上半期の採卵用めすの出荷・え付け羽数、前年同期をわずかに下回る

 採卵鶏は、え付けのおおよそ5カ月半後に産卵を開始し、6〜7カ月後に産卵のピークを迎えた後、徐々に産卵率が低下する。
 生産動向の指標となる採卵用めすの出荷・え付け羽数を見ると、4年上半期(1〜6月累計)は4984万6000羽(前年同期比4.2%減)と前年同期をやや下回った。過去5カ年平均羽数との月別の比較では、2月を除き、すべての月で下回る結果となった(図2)。
 なお、地域別の羽数は、北日本が1075万8000羽(同5.8%減)、関東が1600万羽(同1.1%減)、中部が543万9000羽(同11.9%減)、中四国が1107万1000羽(同4.6%減)、九州が657万8000羽(同1.4%減)とすべての地域において前年同期を下回った。前年は、HPAI発生からの回復に向けたひなの生産・導入が進められていた影響により同羽数が増加したため、今年はその反動が一部あるとみられるものの、全国的に落ち着いた生産動向となっている状況がうかがえる。

 

令和4年上半期の鶏卵輸入量、前年同期をわずかに上回る

 鶏卵(ふ化用除く)の輸入品(殻付き換算ベース)は、近年、国内消費量の約4%となっており、国内生産量、価格動向、為替相場などの影響を受けて変動する傾向がある。これらは主に米国、イタリア、オランダ、ドイツなどから輸入され、輸入量全体の9割以上が保存性や輸送性に優れる粉卵となっている。主として加工用に仕向けられ、乾燥卵白は練り物のつなぎなどの原料として、乾燥全卵や乾燥卵黄は菓子や菓子パンなどの原料として利用されている。
 鶏卵輸入量の過去10年の推移を見ると、平成28年は米国における鳥インフルエンザ発生の影響により卵白粉の国際価格が上昇したことなどから、輸入量は前年を大幅に下回った(図3)。その後、11万トン台で推移した中、令和2年は、国内の生産量が増加傾向にあったことやCOVID−19の影響により業務・加工向け需要が減少し、下期の卸売価格が例年に比べて低い水準にあったことから11万トンを割り込んだ。3年は国内における大規模なHPAI発生による国内生産量の不足感とこれを受けて卸売価格が高水準にあったことから輸入品への代替需要の高まりにより、11万1919トンまで回復している。
 4年上半期(1〜6月)の鶏卵の輸入量は、5万4071トン(前年同期比0.9%増)と前年同期をわずかに上回った。なお、過去5カ年平均との比較では、3.4%減とやや下回る結果となった。本年については、円安の継続、米国での鳥インフルエンザの発生、世界的な物価上昇などを背景に国産鶏卵の使用率増加が見込まれるものの、国内においても落ち着いた生産動向となっており、卸売価格も例年に比べて高い水準にあるため、今後の動向を注視する必要がある。
 

(畜産振興部 郡司 紗千代)