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海外需給動向【牛乳・乳製品/米国】畜産の情報 2022年11月号

乳牛飼養頭数は増加傾向も、大幅増は見込めず

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生乳生産量は2カ月連続で前年を上回る
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年8月の乳用経産牛飼養頭数は前年同月比0.2%減の942万7000頭となった(図1)。21年5月をピークに減少していた頭数は22年に入り増加に転じており、8月も前月から8000頭増加するなど、同月としては昨年に次ぐ高い水準となっている。

 
 また、1頭当たり乳量の増加に伴い、8月の生乳生産量は862万7000トン(同1.6%増)と2カ月連続で前年同月を上回った(図2)。昨年末から上昇傾向で推移している生産者乳価に後押しされて飼養頭数は増加傾向にあるが、現地情報によると、飼料費や燃料費などの生産コストが依然高騰していることから、飼養頭数の大幅な増加は見込めないとされている。

 
バター卸売価格は前年同月を大幅に上回る
 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、2022年8月のバターの卸売価格は、前年同月比78.8%高の1ポンド当たり3.01米ドル(1キログラム当たり967.58円:1米ドル=145.81円(注))と過去最高を記録した(図3)。現地報道によると、生乳がアイスクリームなどバター以外の用途に仕向けられていることや、クリームをバター製造工場へ運ぶ輸送費の高騰などがバターの生産を抑制している要因とされている。また、米国内では食料価格が大幅に上昇している中で、消費需要の冷え込みや輸入バターの増加による価格下落の可能性はあるものの、クリスマスシーズンに備え小売店は在庫を補充するため、大幅な下落は見込めないと予測されている。

(注) 三菱USJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年9月末TTS相場。

 
乳製品輸出量、ホエイおよび乳糖の増加が全体をけん引
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年7月の乳製品輸出量は、脱脂粉乳が前年同月比で減少したものの、その他の乳製品は増加したため全体としては好調に推移した(表)。

 
 品目別に見ると、乳糖およびホエイの輸出が好調となった。米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、米国西海岸の港湾の混雑状況の改善や、安定的な米国のホエイ価格、また、中国の養豚部門の頭数回復による飼料需要の増加を要因としている。特に乳糖の輸出は、中国とニュージーランド向けの好調な伸びにより、前年同月比22.4%増と大幅に増加した。
 一方、脱脂粉乳の輸出は、22年に入り前年同月を下回って推移している。USDECによると、バター生産の抑制に伴う生産量の減少が主な要因とされている。

(調査情報部 上村 照子)