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海外情報 中国牛肉 畜産の情報 2023年2月号

中国の中高級牛肉の生産現状と課題

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内蒙古財経大学 准教授 阿拉坦沙 アラタンシャ
内蒙古財経大学 准教授  唐達頼 タンダライ
内蒙古財経大学 准教授 格根哈斯ゲゲンハ ス

【要約】

 近年中国では、国民の生活水準向上や消費習慣の変化などに伴い、牛肉消費量および肉類消費量に占める牛肉の割合は継続的に上昇してきた。その中、牛肉消費の品質志向への変化が著しく、中高級牛肉消費が伸び、中高級牛肉の生産も台頭していた。一方、高級牛肉生産については、経営コストの高さ、飼養管理技術の不足、サプライチェーンが確立していないなど多くの課題が顕著であることや、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などから、現在は、「高級牛肉の生産衰退、中級牛肉の生産成長」を迎えている。また、2030年ごろは中国の牛肉消費量が1270万トンを超え、国内生産で賄えない不足分が450万トン以上に及ぶと予想されていることから、このことが中国内の牛肉生産のみならず、牛肉の国際貿易に大きな影響を与えるものと考えられる。

1 はじめに

 中国は14億の人口を抱える大国であると同時に、世界有数の経済力を有する消費大国でもある。近年、中国の経済成長や国民の所得増加を背景に、牛肉の消費量が増加している。これに伴い中国国内の牛肉生産量は年々増加し、2021年現在、すでに世界トップ3の牛肉生産国となっている。しかしながら、国内の消費需要を満たすには至っていないため、海外から多くの牛肉を輸入しており、21年には233万トンに達した。
 一方で、国民の生活水準が向上し、食品消費構造と消費習慣が変化するにつれ、肉類消費に占める牛肉の割合が継続的に上昇する中で、牛肉消費は品質志向へと変化してきた。
 中国では、牛肉の消費方法は多種多様であり、古くから消費され続けてきた。しかしながら、従来は、牛の品種や部位などは区別されておらず、一括して「一般牛肉(中国語で普通牛肉)」として売られていた。また、この「一般牛肉」にはヤク肉や水牛肉も含まれていた。さらに、特に「高品質な牛肉」や「高級部位」といった認識は持たれておらず、あえて言うならば、モモ、骨付きバラ、ロース芯などが他の部位よりも人気があり、価格が多少高く設定されていた程度であった。しかし、経済発展や食のグローバル化、牛肉輸入量の増加に伴い、豪州産、米国産、カナダ産を始め、高品質な牛肉であるいわゆる「中高級牛肉」が中国市場でも流通するようになり、消費者や生産者の牛肉に対する認識に大きな変化をもたらした。特に近年は、鳥インフルエンザやアフリカ豚熱、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の相次ぐ発生により、国民の食の安全への要求の高まりや豚肉の代替需要などから、中高級牛肉を含めた牛肉の消費が高まっている。
 本稿では、中国における中高級牛肉の生産の現状について紹介するとともに、現状に存在する課題と今後の方向性について考察する。
 なお、本稿中の為替レートは、1元=19.31円(機構注1)を使用した。

(機構注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。

2 中国の牛肉生産・消費

(1)牛肉生産

 中国における養牛の歴史は長く、従来から、肉牛産業は牧畜業の重要な構成部分であった。しかしながら、中国の肉牛産業が本格的に発展したのは、この40年間であると言われており、次の四つの段階に分類される。
 第1段階は、1980〜89年の緩やかな成長期である。中国の改革開放政策に伴い、と畜政策が緩和され、牛肉を自由に販売・購入できるようになったが、牛肉の価格は安いものであった[参考文献1]
 第2段階は、90〜96年の急速な成長期である。食品加工業の発展や市場経済の浸透に伴い、肉牛飼育では穀物の茎やわらなどの農業副産物を給餌するようになり、牛肉の生産量が増加した。これが中国における肉用肥育業の始まりである。
 第3段階は、97〜2011年の高度成長期である。経済成長や国民所得の増加により、牛肉消費量が拡大し、肉牛の増体を目指した配合飼料などを使った肉牛肥育が本格化した。この間、旺盛な消費にけん引され牛肉の価格も大きく上昇した。
 第4段階は、12年から現在までの牛肉の供給不足期である。中国は、肉牛の生産、と畜、加工、流通、消費のサプライチェーンが確立され、牛肉生産量が世界トップ3の主要牛肉生産国となった。一方、国内での肉牛の飼養コストが高く、出荷周期も長いことなどから牛肉の供給が需要に追いつかず、国内の旺盛な牛肉需要を満たすため、牛肉の輸入量は年々増加している。21年の中国の牛肉消費全体に占める輸入品の割合は25%に達した。
 近年の中国の肉牛飼養頭数と出荷頭数を見ると、16年の飼養頭数は8834万頭、出荷頭数は4265万頭であったが、21年にはそれぞれ9817万頭(16年比11.1%増)、4707万頭(同10.4%増)と、この5年間で中国の肉牛飼養頭数および出荷頭数が増加していることが分かる(図1)。


 このような変化の要因としては、(1)優良な種牛の導入など品種改良による肉牛の品質向上(2)若齢出荷による出荷周期の早期化(3)肥育業の強化による1頭当たり産肉量の増加―などが挙げられる。農家や企業レベルで肉牛飼養管理技術の向上に努めていることに加え、国や地域政府からの支援政策も肉牛経営の発展を後押している。
 次に、省・自治区(日本の県に相当)レベルで実施している肉牛支援対策について、特にインパクトある事業を実施している吉林きつりん省の状況を少し紹介する。同省は21年4月2日、「吉林省肉牛産業を大きく強くする10条政策措置」を発表した。本支援策は10の内容から構成されているが、特筆すべき支援策は以下の通りである。

・疫病検査や隔離などに関する国の基準を満たす繁殖能力を有する繁殖もと牛を50頭以上輸入した場合には、1頭当たり3000元(5万7930円)を交付する(1企業当たりの上限は500万元<9655万円>)。また、省外から繁殖もと牛を50頭以上導入した場合には、1頭当たり1000元(1万9310円)を交付する(1企業当たりの上限は200万元<3862万円>)。

・地域の中核となる肉牛育種ステーションおよび種雄牛ステーションの建設にそれぞれ200万元(3862万円)または100万元(1931万円)を補助する。さらに、中核となる種雄牛ステーションが海外から疾病検査や隔離などに関する国の基準を満たす種雄牛を導入した場合には、種雄牛1頭当たり1万元(19万3100円)を補助する。また、延辺黄牛(注1)養殖企業が飼養している繁殖雌牛に延辺黄牛の受精卵を移植した場合には、受精卵1個当たり500元(9655円)を補助する。

・年間販売高が50億元(966億円)以上の食肉加工企業に対し、1企業当たり200万元(3862万円)の奨励金を交付する。

・万頭牧場、千頭牧場(機構注2)、と畜加工場、畜舎と関連施設、サイレージ貯蔵庫、コールドチェーン物流などの建設に対し、規模に応じた補助金を交付する。

(注1)吉林省延辺黄牛とは東北3省東部の細い長いエリアに飼養する在来種である。中国の5大良質な黄牛の一種で、成年雄牛平均体重が480キログラム、成年雌牛が380キログラム、去勢雄牛の枝肉平均重量が265.8キログラムとなっている。耐寒や抗病力が強く、肉質と肥育成績がよいのは大きな特徴である。
(機構注2)「万頭牧場」とは肉牛1万頭以上を飼養する牧場、「千頭牧場」とは肉牛1000頭以上を飼養する牧場を指す。

 
 同省は、25年に省内の肉牛飼養頭数を1000万頭、年間出荷頭数を400万頭にするという政策目標を掲げている。そのため、上述のような省内の肉牛飼養規模の拡大、肉牛の品質向上、牛肉生産量の増加などに資する肉牛支援政策を実施した。その結果、22年8月末時点での同省の肉牛飼養頭数は570万頭に達し(前年同期比15.8%増)、同年1〜8月の出荷頭数は187万頭(同28%増)にまで上昇している[参考文献2]
 そのほか、内モンゴル自治区、河南かなん省、甘粛かんしゅく省、河北かほく省、新疆しんきょうウイグル自治区、寧夏回族ねいかかいぞく自治区、四川しせん省、雲南うんなん省など多くの地域政府が肉牛ないし牧畜業の特別支援政策を実施しており、肉牛産業発展に寄与している。中国の牛肉生産量を見ると、図2の通りである。


 
 中国の牛肉生産量は、30年前の1992年には180万3000トンであったが、2001年には508万6000トン(10年間で328万3000トン増)、11年には610万7000トン(同102万1000トン増)、21年には697万5000トン(同86万8000トン増)と大きく増加してきた。直近5年間の伸び率は年平均2.26%(80万5000トン増)となっており、牛肉生産量の増加が著しい。今後も国内の牛肉生産量の増加が見込まれるが、土地利用上の制約や飼料供給問題もあることから、年率2%以内の増加にとどまるものと考えられる。21年の牛肉生産量トップ10の地域は、河南省、山東省、内モンゴル自治区、河北省、吉林省、黒龍江こくりゅうこう省、新疆ウイグル自治区、遼寧りょうねい省、雲南省、四川省の順になっており、この10カ所の牛肉生産量が全国総生産量に占める割合は75%に達している。肉牛を飼養してきた歴史、地域の特徴、政府の支援などから見ると、今後も牛肉生産地が上述の地域に集中するものと考えられる。
 

(2)牛肉消費

 中国の牛肉消費は3000年の長い歴史があるが、牛肉消費には独特な飲食文化の特徴があり、そのことが牛肉の生産・消費に大きな影響を与えている。中国は14億人の人口を有し、56の民族からなるが、モンゴル族、回族、ウイグル族、チベット族など一部の少数民族を除くと、牛肉を食べる文化はほとんどなかった。
 現在、中国の1人当たり年間平均牛肉消費量は約7キログラムであるが(図3)、この計算は、全国の人口の平均値であり、あくまでも理論上の計算の数字にすぎず、実際に牛肉を食する人々の平均消費量ではない。食文化の違いにより、牛肉消費量のばらつきは大変大きく、食べる人はしばしば食べるが、食べない人は一生に一度も牛肉を食べないと言われている。
 なお、21年の中国の1人当たり年間平均肉類消費量は68.54キログラムであり、そのうち豚肉の消費量は40.12キログラム(全体の58.54%)、家きん肉は17.90キログラム(同26.12%)、牛肉は6.59キログラム(同9.61%)、羊肉は3.93キログラム(同5.73%)となっている。この中で注目すべき点は、中国では豚肉が主要な食肉として消費され、17年の豚肉消費量が肉類全体に占める割合が63%であったが、21年はその割合が59%と、近年はその消費量が減少している。その背景には、アフリカ豚熱など家畜疾病の発生による食の安全安心への配慮や国民の外食回数やインターネットの買い物の増加、また、高品質な食肉の指向など食文化の変化による豚肉消費の減少と牛肉消費量の増加がある。
 中国全体の牛肉消費量について公式な統計はないが、業界団体の資料[参考文献3]に基づき検討すると図4の通りとなる。16年の中国全体の牛肉消費量は675万トンであったが、その後増加し続け、21年には949万トンに達し、5年間で274万トン、年平均8.1%増加した。注目すべきは年間増加率であり、18年:前年比6.1%増、19年:同11.4%増、20年:同14.2%増と年々高まっており、中国の牛肉消費は急速な増加期に入ったと言える。一方、本検討結果からは、COVID-19が牛肉消費に与えた影響をはっきりと見ることができる。近年の牛肉消費の増加の大部分は外食での消費であるため、COVID-19の拡大やそれに伴う規制措置などにより、外食産業が大きく影響を受け、牛肉消費量も伸び悩んだ。実際、21年の牛肉消費量は20年を若干ながら下回っている(同0.2%減)。22年もCOVID-19拡大防止に係る規制が外食産業に大きな影響を与えていることは否定できず、この3年間、このような外的な要因が、牛肉消費の順調な伸びに非常に大きな障害となっている。





 牛肉業界では、「COVID-19収束後、中国の牛肉消費量は、近い将来に1000万トンに達し、2030年までには米国の牛肉消費量を超える」と予測している。1人当たりの牛肉消費から計算すると、その可能性が現実味を帯びる。この10年間、全世界の1人当たり年間平均牛肉消費量は9.0〜9.3キログラムの範囲で推移しているが、仮に中国が世界平均に達すると、中国の牛肉消費量は年間1270万トンを超える。中国の1人当たり年間平均牛肉消費量が主要な牛肉消費国の水準(アルゼンチンの同約54キログラム、米国の同約37キログラム、豪州の同約28キログラム、英国の同約16キログラムなど)に達することは簡単に想像できないが、世界の平均値に到達することは十分に可能であろう。
 

(3)牛肉輸入量

 中国の牛肉輸入は、牛肉産業発展の第3段階の「高度成長期」の終わりごろから始まり、その後の「牛肉の供給不足期」で輸入量が大きく増加した(図5)。


 2009年には、中国の牛肉輸入量は、わずか1万5000トンに過ぎず、12年までは数万トン程度で推移した。中国では近年、輸入規制の緩和などから牛肉の輸入先が増えており、輸入条件も整い、本格的に輸入が可能となった13年以降、輸入量は増加の一途をたどっている。コロナ禍にあっても増加し続けており(20年:前年比27.7%増、21年:同10.1%増、22年1〜9月:前年同期比11.8%増)、仮に22年が現在の伸び率(11.8%増)を維持した場合、同年の牛肉輸入量は260万トンを超えることとなる。中国の牛肉関係組織である中国肉類協会、中国畜牧業協会、中国牧工商(集団)公司(注3)らによると、年末の季節的需要などから、牛肉の輸入量はさらに増加し、22年の輸入量は270万トンを超えると予測している。
 今後、中国の牛肉需要量は間違いなく増加し続けると判断されることから、牛肉輸入量もしばらくの間、継続的に増加するものと考えられる。しかし、輸入先の供給力や国際貿易の諸問題を踏まえると、その増加をいつまで維持できるか、予測することは難しい。
 前述の通り、30年前後に中国の1人当たり年間平均牛肉消費量が世界平均値に達した場合、その需要量は1270万トンを超える。現在の中国国内の生産状況からみれば、国内生産量が800万トンを超えることが難しく、不足分は450万〜500万トンとなる。これを全量輸入で賄うとすれば、21年の倍量の輸入量が必要となるが、それほど大量の牛肉を輸入できるのか否か、誰も断定することはできない。このため、中国の中央および地域政府は、繁殖用生体牛の輸入、肉牛の品種改良、繁殖牛の増頭などの支援策を打ち出し、肉牛の国内生産に力を入れている。しかしながら、中国内の肉牛生産コストの増加や肉牛の生産周期が長いことなどを勘案すると、国内生産をどこまで伸ばせるかは見通せない状況にある。このような状況から、今後の中国の牛肉輸入量の動向について、国際貿易市場は大いに注目している。

(注3)大型国有企業であり、中国の牧畜業に関連する産品、技術、サービスの重要な製造者と供給者で、中国の牧畜業発展における重要な推進的存在。

3 中国の中高級牛肉生産

(1)中高級牛肉とは

 中国で「牛肉」といえば、これまで一般牛肉(中国語で普通牛肉)を指していたが、近年は海外から業界内で「中高級牛肉(中国語で中高端牛肉)」と呼ばれる品質のよい牛肉、特に霜降りのWAGYU肉の輸入が増加傾向にあり、消費者の間でも徐々に浸透しつつある。中国では、「一般牛肉」「中級牛肉」「高級牛肉」についての専門用語あるいは学術用語の定義はない。よって、筆者の先行研究での定義[参考資料4]に基づき、本稿における「中高級牛肉」についてあらかじめ定義したい。
 「中高級牛肉」とは、品種改良・肉質改善が行われた肉専用種の肉を言う。肉に霜降りが入ることが一つの特徴であるが、小売段階で一般に高級部位と低級部位に分けられ、部分肉ごとにカット・パックして販売される。また、特定の品種で専門的な肥育を行い、特定のブランド名で出荷されている牛肉でもある。具体的には「○○黄牛」「○○黒牛」「○○紅牛(赤牛)」など在来種の品種改良した肉牛のほか、WAGYU、黒牛、黄牛、紅牛など高級肉牛の種牛および精液、母牛および受精卵を使用し、品種改良と肉質改善を行い、脂肪交雑(サシ)の追求を目的として生産する肉牛を指す。非常に分かりやすく言うならば、今までの「一般牛肉」ではない牛肉、ブランド化した牛肉を言う。
 

(2)中高級牛肉生産の変遷

 中国の中高級牛肉の生産の歴史は、20年程度であり、三つの段階に分類できる。

 ア 中高級牛肉の萌芽期(2000〜11年)
 中国で最初に生産された中高級牛肉は、大連の「雪龍黒牛」であり、これが中国の中高級牛肉生産の始まりであった。雪龍黒牛は2000年ごろから飼養管理改善のほかハイテクな品種改良技術を使い、牛肉に霜降りが多く入る「高級」な専用肉牛を生み出した。雪龍黒牛は、上海や北京で日本料理屋を経営している日本人経営者やシェフが「日本の和牛と変わらないのではないか」と評価し、中国の食肉関係者が「サシがよく入っていて、味がおいしい」と評価するなど、市場調査で評価が高かった。中国の中高級牛肉の萌芽期では、雪龍黒牛の「1ブランド独占」状態であり、雪龍黒牛以外の中高級肉牛は飼育されていなかった。この時期に、中国人は初めて霜降り牛肉の存在を知った。当時は輸入された高級牛肉もなく、また中国の急速な高度成長の時期と重なったことから大変人気となり、その名は中国全土に知れ渡った。
 業界関係者への聞き取りによると、雪龍黒牛の飼養頭数は、最盛期でも8000〜1万2000頭程度、年間出荷頭数は1500〜2000頭程度であったという。出荷先はほぼ固定されており、大半は外食店舗に仕向けられ、小売が行われたのは、上海、北京、深セン、広州など超一流都市の特定の市場のみであった。また、雪龍黒牛には、日本の枝肉格付をまねたA5、A4などの肉質等級が採用されていた。日本人の技術者が常駐し、雪龍黒牛の飼養管理、種付け、格付けなどについての技術指導を行っていたとされる。業界関係者によると、雪龍黒牛の経営者は、もともと日本へも輸出を行う飼料販売業に従事しており、日本の肉牛生産者ともある程度の関係があり、そのことが雪龍黒牛の成功の基礎になったとのことである。かなり前に、雪龍黒牛の経営主体が破産し現在は会社も存在しないが、雪龍黒牛は中国の中高級牛肉の生産を語る上では欠かせない存在であり、業界関係者の間では、中国人に「高級牛肉とは何か」を知らしめした功績は大きいという見方が共通の認識となっている。さらに言えば、雪龍黒牛こそが業界関係者に「中高級牛肉産業」という新しい扉を開いたと言っても過言ではない。

 イ 中高級牛肉の全盛期(12〜18年)
 この時期は、雪龍黒牛の業界内での浸透、海外からの中高級牛肉の輸入拡大、豪州や米国からのWAGYUの受精卵・精子の輸入などにより、中高級牛肉の生産が大きな関心を集め、新規参入者が多く出現し、「一ブランド独占」から「全面開花」となった。聞き取り調査によると、「北京海淀和牛」「国秀和牛」「九囿和牛」「龍江和牛」「海島和牛」「村上和牛」「草原和牛」「伊泰和牛」「中谷和牛」「合和牛」などWAGYUを飼育する企業は40社以上にも上ったという。これらの企業は、「牛肉の霜降りの重視」を目標とし、中国語漢字で「和牛」を用い、宣伝では、「純血和牛」「純種和牛」など品種の優越性を強調した。中国におけるこのような「和牛(WAGYU)」の飼養頭数に関する統計は存在しないが、聞き取り調査の結果および中国の肉牛専門誌「安格斯(アンガス)」の統計資料[参考資料5]から推計すると、2020、21年は、年間15万〜18万頭程度となる。また、これまでの調査の中で、WAGYU飼養頭数は18年以降減少しているとの結果も得られたことから、18年までの全盛期は、その頭数が18万頭以上であったのは間違いないだろう。
 「安格斯」の集計(20年)によると、トップ10社のWAGYU飼養頭数は6万3000頭となっており、トップは黒龍江省の「龍江元盛(龍江和牛)」であり、WAGYU2万頭を飼養している。中国では、1000〜4000頭程度を飼養する企業が多く、1万〜2万頭規模でWAGYUを飼育している大規模企業は、4社程度である。これらの大規模企業は、複数のWAGYU牧場を所有している。WAGYUを売りにしている企業は、霜降り肉に力を入れており、中国では高級牛肉の範囲に入る。ここで飼養されるWAGYUは、純血や純種であることが強調されている。
 中高級牛肉の全盛期に出現した中級牛肉も無視できない存在である。この時期に出現した中級牛肉としては、赤牛、黄牛、黒牛などを品種改良したもの、アンガス牛や黒牛にWAGYUの精子を交配させた交雑種が挙げられる。これらの中級牛肉は、霜降りも重視するが、肉の食感、品質、安全性などをメインにブランド化し、付加価値を生み出し、差別化を図ったものであった。中国で飼養される中級肉牛の頭数は、18〜21年は年間50万〜60万頭に上る。

 ウ 高級牛肉の衰退、中級牛肉の成長期(19年〜)
 2019年以降は、(1)高級牛肉のブームはピークを過ぎ、消費者の高級牛肉への認知度が向上し理解が深まったこと(2)「全面開花」した高級牛肉産業のサプライチェーンの欠陥が露呈(注4)したこと(3)中国の経済成長が減速気味となったこと(4)高級肉牛生産が期待したほどの収益を得られなかったこと―などから多くのWAGYU牧場をはじめとする高級肉牛企業は、「高級牛肉の生産規模縮小」「中級牛肉の生産拡大」といった生産経営方針転換を余儀なくされた。さらに、その後のCOVID-19の拡大および長期化による高級牛肉の流通・消費への影響は大きく、高級牛肉の生産縮小に拍車をかけることとなった。

(注4)生産(飼育)以降の消費者に届くまでの行程(加工・流通・販売など)において、高級牛肉に適したサプライチェーン(温度管理などの技術的管理:ノウハウも含む)が確立されておらず、高級牛肉が生産された後の加工・流通・販売がスムーズに行えない状況にあった。現状では、生産者がその全過程に携わらざるを得ない状況になる。

 18年以前は、中国の経済成長、国民所得の増加、消費力の向上、中高級牛肉の認知度の拡大などにより、中高級肉牛飼養の人気が高まり、業界への新規参入の動きも活発であった。大規模企業を含め、中高級肉牛産業へ参画する投資も増えた。
 今回、WAGYU牧場の調査や中国牛業発展大会(中国畜牧業協会主催)、中国肉類発展大会(中国肉類協会主催)などの場を通じ、初期投資5億元(97億円)、6億元(116億円)および10億元(193億円)の投資を計画している複数の市場調査グループから、定期的に中高級牛肉生産、市場の動向などについて聞き取りを行ったので、以下に事例を紹介する。
 19年、杭州の不動産グループ(集団)の高級牛肉事業開拓部が、オルドス市(内モンゴル自治区)のある肉牛牧場を買い取り、人員配置や畜舎の修繕などの準備を終え、高級肉牛である純血WAGYU中心の繁殖牛の購入を計画したところで事業を停止したという。事業停止の理由は、国産高級牛肉市場の将来性に確信が持てなくなったことだという。本グループが本格的に市場調査を行った17年時点および牧場を購入する19年時点までは、中高級牛肉の将来性に非常に期待感があったが、その後は大きな危機感を感じ、事業を放棄する道を選んだというが、損失は全体で2000万元(3億8620万円)に及んだ。しかしその後、COVID-19が蔓延まんえんしたことから、当該グループは、高級牛肉事業を停止したのは、非常に賢明な判断だったとしているという。
 次に、大手グループの本業界への新規参入例を紹介する。18年調査で把握した中国の大手乳業メーカーの状況である。本メーカーは乳業で得る収益が大きいが、高級牛肉生産に期待し、「万頭牧場」を3カ所経営することを計画し、18年に内モンゴル自治区および黒龍江省で牧場経営をスタートさせた。しかしながら、SNSや電話を用いて調査を行ったところ、WAGYUなど高品質な繁殖雌牛の購入は計画通りに実現できないことが判明し、同社は輸入した生体牛(シンメンタール牛、アンガス牛など)にWAGYU受精卵を用いて高級肉牛を生産する方向へと転換を図った。しかし、出生したWAGYUの繁殖・肥育成績が振るわず、受精卵移植業者との間にもトラブルが生じたという。これらの状況にCOVID-19の流行が重なり、今年からは「高級牛肉」生産から「中級牛肉」生産へ方針転換したという。
 このように19年ごろからは、高級牛肉生産の衰退が著しく、その分、中級牛肉生産は成長期を迎えていると言える。このような中、赤峰市(内モンゴル自治区)でWAGYU生産を行っていたH牧場の倒産が、高級牛肉生産牧場の将来を暗示しており、近い将来、多くの高級牛肉生産企業が倒産あるいは廃業するのではないかと言われている。H牧場は、北京の別の牧場で飼養されていたWAGYUを購入し、高級牛肉生産を開始した農場である。筆者も2年前、調査先のあるWAGYU牧場から「H牧場のWAGYUは純血であり、状態がよい」との話を聞いたため、H牧場への調査を計画したもののCOVID-19の影響により実現できずにいたところ、H牧場破産のニュースが報じられた。破産の原因は、飼料代など経営コストの増加に加え、市場開拓の問題が大きかったとのことである。特にコロナ禍で期待したほどの収益が得られず、経営が成り立たなくなったという。肉牛業界関係者の間では、今回H牧場が直面した問題は、高級牛肉生産者に共通する課題だとし、いつどこの牧場が廃業してもおかしくないという危機感を持っているという。
 これまで継続的に調査してきた高級牛肉生産牧場の担当者に聞き取り調査を行った結果からも「高級牛肉生産衰退と中級牛肉生産拡大」状況をうかがうことができた。以下にその例を紹介する。
 河北省にある「九囿和牛」は、WAGYUの生産規模拡大の可能性を模索し、この2年間、中国では肉牛の2大生産地と言われている内モンゴル自治区通遼市と甘粛省張掖市を繰り返し視察した結果、21年に張掖市に新しい牧場を開いた。2年前には、高級牛肉で勝負するという考えを強く持っていたが、現在はWAGYUの交雑種による中級レベルの牛肉に力を入れ、将来的に物流や市場の状況が好転した場合には、高級牛肉生産を拡大したいとしている。海南かいなん省にある「海島和牛」は、三つの牧場を持ち、純血WAGYUとして業界内では広く認知され、高級牛肉の肉質も中国内でトップクラスであった。株式保有率の変化により、経営主体が国営企業である海墾グループ(海〇集〇)となったこともあり、これまで一貫して追求してきた「霜降り至上主義の中国一の良質なWAGYU肉の生産」から「WAGYU繁殖もと牛ビジネス、WAGYUの受精卵や移植技術の提供、霜降りよりもおいしさを求める高級牛肉生産」などへの転換を図っている。山東省聊城市にある「村上和牛」はすでに繁殖WAGYU経営へと転換し、連携する肥育業者にWAGYUの子牛を出荷することで、経営リスクの分散を図っているという。
 生体牛貿易に従事した経験を持つ「内モンゴル興牧達牧業服務有限公司(会社)」の孟社長によると、WAGYUなど高級繁殖牛の売買需要は売り・買いともに増えているが、生体牛の価格の折り合いがつかず、なかなか取引が成立しないとみている。孟社長によると、本質的な問題は、表に現れている価格ではなく、売りに出される高級繁殖牛への不信感、つまり、高級肉牛として信頼できないことであり、血統証明などの客観的証拠が確実なものではなく、高級牛肉市場は不健全な状態にあるとのことであった。また、「海島和牛」「馬龍双友牧業」「青島郁香国泰牧業」など中高級牛肉生産企業で長年勤務した経験を持つ「内モンゴル〇〇商業貿易有限公司」の遅社長によると、中国の現状では高級肉牛産業のサプライチェーンが確立しておらず、一から十まですべてを生産企業が行う必要があり、必要とする資金が多く、高級牛肉生産は苦労が多く、成功させることは難しいという。
 こうした中、高級牛肉経営が順調であるのは、青島市の「隆銘牛」(青島隆銘牛業有限公司)である。「隆銘牛」は、繁殖牛、肥育牛を含めて1500頭程度を飼養している。牧場設立当時から飲食業者と連携しており、契約販売のみを行ってきた。この2年間は飼料価格の高騰により経営コストが増加し、さらにはCOVID-19により契約先である飲食業者がかなり大きな影響を受けたが、肉牛の肥育期間や出荷 時期の調整などによって対応できているという。将来についての不安は全くないというが、現在の規模が市場や経営のリスクに最適の規模であるため、規模拡大は考えていないとしている。
 

(3)現地調査から見えてきた中高級牛肉生産の方向性

 本調査を通じ、「楽牧高仁」「草原和牛」「伊泰和牛」「吉亜太肉牛」の4社に対し、中高級牛肉生産の今後の展開について現地ヒアリングを実施した。

(@)「楽牧高仁」
「楽牧高仁」牧場は、寧夏回族自治区の石嘴山市平羅県にある。敷地面積は730ヘクタールあり、1万2000頭の肉牛を飼養している(写真1、2)。体験農園をイメージした事業計画であり、40ヘクタールのぶどうやりんごなどの果樹園がある。また、ワイン工場を建設する予定もあり、観光農園としてのコンセプトが打ち出されている。牧場は寧夏回族自治区の区都銀川市から60キロメートル離れているが、高速道路が近くまで通っており、非常に便利な場所にある。肉牛経営では、当初の計画はWAGYUの繁殖経営、アンガス牛、赤牛を含めた中高級肉牛の肥育経営、酪農業の子牛育成の3部門であった。しかし、優れたWAGYUなど高級肉牛の繁殖牛の確保問題、高級牛肉のと畜や市場の課題、資金繰りの問題などから2018年ごろからWAGYUの交雑種・アンガス牛・赤牛の繁殖・肥育、乳用種オス牛の肥育・ブランド化へ経営の舵取りをしたという。すなわち、中級牛肉、消費者が意識する安全安心なおいしい肉作りへ特化した。乳用種オス牛の肥育は、牧場近辺200キロメートル範囲に他社が70万頭の乳牛を飼育しており、毎年かなりの頭数の乳用種オス牛が生まれてくることに大きなビジネスチャンスを感じ、そのオスの子牛を買い取り、去勢せずに肥育・ブランド化して、中級牛肉として出荷するようになったものである。実際、乳用種雄牛の肥育業務が順調で、利益も大きいという。
 肉牛の肥育は9カ月齢から開始され、専用の肥育用飼料を給餌して20〜22カ月齢で出荷する。主な出荷先は上海市と杭州市となっており、出荷される牛肉は味の評価が高く、自家牧場のブランド力も強いため、中級牛肉としてはよい価格で販売できているという。今後は霜降りを追求する純血WAGYUなどを飼育する「高級路線」ではなく、現在のスタイルに従いつつ、早急にワイン工場を完成させ、体験型農場を完成させる予定という。それによって牛肉の付加価値はさらに高まり、経営収入も増加するとしている。いずれにしても、投資額が10億元(193億円)を超えるこの牧場が「WAGYUを飼養する」という「初心」に返ることはなさそうだ。




(A)「草原和牛」
 「草原和牛」は、内モンゴル自治区のオルドス市にあるWAGYU牧場であり、中高級牛肉の全盛期にその名が全国的に知れ渡っていたWAGYUブランドである(写真3、4)。大連の「雪龍黒牛」の後、全国で有数の高級肉牛飼養牧場となり、全盛期にはWAGYUを2万頭飼養していた。上海、北京、広州、深センの市場に出荷されたほか、ネット販売でもしばしば注目を集めた。牧場長によると、株主の経営方針の転換、企業代表(CEO)の交代、龍江WAGYUなど強い競争相手が多く出現したことなどから、「草原和牛」の規模も縮小され、現在、純血WAGYUの飼養頭数は約3500頭となっている。一部を肥育するほか、大部分は子牛の生産を目的とした繁殖経営であり、WAGYUの受精卵ビジネスに力を入れ、相応の収益を上げているという。現地調査で実際に肉牛を見たところ、「草原和牛」で飼養されるWAGYUが、体格・体系・毛色などで、日本の和牛に一番似ていると感じた。他のWAGYU牧場から聞いたところでも「草原和牛」のWAGYUの血統は純度が高いということであった。
 今後の展開について牧場長は、経営方針を決めるのはオーナーであると前置きしながらも、おそらく大幅な規模拡大の可能性は低いのではないかとしている。このように諸般の事情により規模が縮小された中高級牛肉牧場は、国内のほかの地域でも散見されている。
 



 
 
(B)「伊泰和牛」
 「伊泰和牛」は、オルドス市(内モンゴル自治区)にある中高級牛肉飼育牧場であり、伊泰グループの子会社である(写真5、6)。伊泰グループとは、内モンゴル自治区屈指の大手民間企業であり、石炭産業、化学工業、不動産業などさまざまな業務を展開し、資金面で強大な実力を有している。
 伊泰グループは、同地域の「草原和牛」の発展を見て、中高級牛肉産業に参入した。主にWAGYUとアンガス牛を飼養し、3年前には飼養頭数6000頭に達していたが、COVID-19の影響、飼料価格の高騰、市場問題などにより、現在は3000頭にまで減少している。「伊泰和牛」にとって幸いなことに21年にアリババグループが展開する高級スーパー「盒馬生鮮」と契約できたことで、市場問題は解決することができた。しかし、供給量が少ないこと、取引に縛りが多いこと、山東省の指定と畜場を利用することなどから経営コストが余分にかかり、当分は利益がない状況だという。「盒馬生鮮」は全国で300以上の店舗があり、「新鮮な」「品質がよい」物を「30分以内に届ける」ことが特徴である。このような店舗と契約できたことから、「伊泰和牛」が、ある程度の品質を備えていることは間違いない。現在の頭数規模では供給量が足りず、十分に対応するためには、少なくとも3万頭が必要であり、そうなればかなり収益は大きくなる見込みである。しかし、短期間で規模を拡大することは難しい上に、規模拡大後に契約期限を迎えた場合には大変なことになる。したがって、状況を見ながら、少しずつ規模拡大をしていく計画のようだ。




(iv)「吉亜太肉牛養殖有限会社」
 「吉亜太肉牛養殖有限会社」は、2019年に内モンゴル自治区ウランチャブ市(〇〇察布市)で設立された肉牛の繁殖・肥育の一貫経営を行っている牧場である。アンガス種、ヘレフォード種、シャロレー種など中級肉牛生産からスタートし、WAGYUの受精卵を用い、高級牛肉生産へ経営転換する方針としていた。しかしこの2年間、高級牛肉経営に不安が多く、既存の肉用種やシンメンタール牛を使った中級牛肉生産に特化することとなった。こうした経営方針の転換により、当初の投資計画からかなりの資金が留保されたため、今年同様の牧場を内モンゴル自治区通遼市に立ち上げ、中級牛肉の生産拡大を図るとしている。すなわち、また一つの肉牛生産牧場が高級牛肉生産を諦めたことになった。

4 おわりに

 本稿では、関連する統計資料、生産者・食肉事業者などへのSNSを通じた聞き取り調査、生産牧場への現地調査を通して、中国の牛肉生産と消費、中高級牛肉の生産状況を整理した。中国の中高級牛肉の生産現状と存在する課題については、以下の4点が明らかになったといえる。

(1)本格的な牛肉生産の歴史は浅いが生産量は大きく増加
 中国の肉牛産業の本格的な発展は40年にすぎず、特に中高級牛肉の生産は20年の歴史しかないが、中国はすでに世界第3位の牛肉生産国となり、年間の生産量が約700万トンに達し、中高級牛肉の生産量も増加し続けている。

(2)牛肉需要、特に中高級牛肉の消費拡大
 中国の年間牛肉需要量は950万トンを超え、国民の生活水準の向上、食品消費構造と消費習慣の変化に伴い、中高級牛肉の消費も大きく拡大している。

(3)牛肉輸入の拡大
 中国の国内の牛肉生産量は年平均2.3%以上のペースで増加しているが、国内需要に追いつかず、牛肉輸入量が年々増加し、2021年には233万トンに達し、今後も増え続ける見込みである。

(4)中国産高級牛肉の生産衰退と中級牛肉の生産成長
 近年、高級牛肉のブームはピークを過ぎ、また、高級牛肉産業のサプライチェーンの欠陥も露呈し、中国の経済成長の減速や飼料価格の高騰も相まって、高級肉牛生産では収益が上がらず、生産が衰退している。その一方で、国民の食の安全、安心へのこだわり、生活水準の増加に適応した中級牛肉の生産は大幅に伸びる傾向を示している。
 
 この3年間のCOVID-19の拡大は、中国の牛肉生産・消費に大きな影響を及ぼした。特にさまざまな状況の変化に伴って、中高級牛肉の生産には大きな変化が生じた。中国の高級牛肉の生産が衰退傾向にあるのは、高級牛肉の消費が減ったことではなく、高級牛肉産業のサプライチェーンが確立されていないためである。今後、中国の高級牛肉需要は輸入牛肉に大きく依存することになるといえるだろう。

[参考文献1]シンクタンク「農小蜂智庫」の分析を参照。
[参考文献2]中国農業農村部の統計を参照。
[参考文献3]国家牛肉ヤク牛産業技術体系、中国畜牧業協会、中国産業情報サイトなどの分析資料を参照。
[参考文献4]阿拉坦沙、中国における中高級牛肉生産・流通状況と課題、『食肉の科学』(日本食肉科学会)Vol.62, No.1(2021)33-42。
[参考文献5]「中国肉牛統計資料2020」、安格斯雑誌・東方戴瑞コンサルティング、2020。