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海外需給動向【牛乳・乳製品/豪州】畜産の情報 2023年4月号

生乳生産量、30年ぶりの800万キロリットル台割れの懸念

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生乳生産量、前年割れ続く
 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2022年12月の生乳生産量は79万1350キロリットル(81万5091トン相当、前年同月比6.5%減)、同月までの年度累計生乳生産量(22年7〜12月)は452万9144キロリットル(466万5019トン相当、前年同期比7.1%減)となった(図1)。単月の生産量が前年同月を下回るのは、21年12月以降13カ月連続となる。
 これは、ラニーニャ現象に伴う長雨や22年10月に豪州東部を襲った洪水により、(1)豪州の主要酪農地帯であるビクトリア州などの牧場や牧草地が被害を受けたこと(2)穀物の質が低下し高品質な飼料入手のためのコスト負担の増加から給餌量を制限する酪農家が出ていること−などが要因とみられる。


 
 現地報道によると、このような状況を受けて22/23年度の生乳生産量は800万キロリットル(824万トン相当)を下回るとの予測も出ている。仮にこれが現実のものとなった場合、1992/93年度以来、30年ぶりの大台割れとなる(図2)。

 
 生乳生産量が減少する中で、乳量の確保に向けて乳業各社は、年度当初から記録的な高値をつけていた今年度の生産者支払乳価(注1)をさらに引き上げる動きが出始めている。ニュージーランド最大手乳業フォンテラ社の豪州法人である豪州フォンテラ社は2月、生乳の固形分(注2)1キログラム当たり15豪セント(14円:1豪ドル=93.90円(注3))引き上げ、同9.55豪ドル(897円)にすることを発表した。このほか、ビクトリア州の乳業ユニオン・デーリー・カンパニーや豪州小売大手のコールスなども乳価引き上げを発表している。

(注1)詳細は、海外情報「2022/23年度の当初乳価は記録的な高値(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003273.html)を参照されたい。
(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年2月末TTS相場。


主要乳製品輸出量、全品目で大幅減
 DAが発表した2022年12月の主要乳製品4品目の輸出量は、全品目で大幅に減少した(表、図3)。
 品目別に見ると、最も減少率が大きかったバターおよびバターオイルが1060トン(前年同月比47.9%減)と半減したことを筆頭に、全粉乳が4828トン(同29.8%減)、脱脂粉乳が1万4862トン(同24.4%減)、チーズが1万3191トン(同18.2%減)となった。これらの減少は、いずれも中国をはじめとしたアジア向け輸出の不振が要因となっている。
 今後の動向について現地報道によると、中国のゼロコロナ政策の撤廃を受け、主に外食やベーカリーでの利用が多いバターやチーズを中心に乳製品の国際需要が回復するとした意見もある一方で、昨今の乳製品需要が弱含みである一因にインフレが挙げられることから、短期的な回復は困難とする意見もある。




 
(調査情報部 阿南 小有里)