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海外需給動向【牛肉/EU】畜産の情報 2023年6月号

牛飼養頭数、牛肉生産量の減少は23年も続く見込み

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牛飼養頭数、牛肉生産量ともに減少
 欧州委員会によると、2022年12月時点のEUの牛飼養頭数(EU27カ国)は、7485万5790頭(前年比1.1%減)と6年連続で前年を下回った(図1)。ここ数年の飼料や燃料などの生産コスト上昇の影響を受けて牛飼養頭数は減少基調にあり、欧州委員会はこの傾向が23年も続くと見込んでいる。


 
 また、22年の牛肉生産量(EU27カ国)は、663万4570トン(前年比2.5%減)となった(表1)。主要生産国では、ドイツの減少幅が最も大きく(同8.4%減)、次いでフランス(同4.4%減)、ポーランド(同2.6%減)と続く。
 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、高騰する飼料費や燃料費のほか、後継者不足が肉牛生産者の経営に影響しており、さらに環境規制の強化も経営縮小の一因としている。また、熱波や干ばつによりフランスなどにおける飼料生産が影響を受け、飼料価格が上昇したことにより、1頭当たり枝肉重量が減少したことも牛肉生産量減少の一因となった。USDA/FASによると、23年の飼料は平年並みに供給され、価格が下落するため、1頭当たりの枝肉重量の回復が見込まれているが、飼養頭数の減少を補うには至らないことから、同年の牛肉生産量を前年比0.5%の減少と見込んでいる。


 
枝肉卸売価格の高止まりで乳牛の淘汰とうたが加速
 2023年3月の牛枝肉平均卸売価格(注1)は、100キログラム当たり511.25ユーロ(7万6452円:1ユーロ=149.54円(注2)、前年同月比5.7%高)と引き続き前年同月を上回る高水準で推移している(図2)。
欧州委員会によると、23年に入り乳価は下落し始め、さらに枝肉価格が高止まりしていることから、今後、乳用経産牛の淘汰が進むとしている。しかし、1歳以上2歳未満の雄牛の頭数も減少しているため、同委員会は23年の牛肉生産量の減少を見込んでいる。

(注1)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末TTS相場。

 
牛肉輸出量は減少の一方で輸入量は増加
 2022年の冷蔵および冷凍牛肉輸出量は、前年比9.9%減の41万1923トンとかなりの程度減少した(表2)。欧州委員会によると、EU域内の牛肉生産量は減少し、牛肉価格は高止まりすることから、23年の牛肉輸出量はさらに減少すると予測されている。


 
 
 一方、22年の冷蔵および冷凍牛肉輸入量は、前年比27.0%増と大幅に増加した(表3)。USDA/FASは、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)によるロックダウンの解除で消費が回復したことにより需要が増加したことが要因としている。欧州委員会は、EU域内の牛肉価格が高いことから、23年はさらに輸入量が増加する可能性があるとしている。

 
(調査情報部 上村 照子)