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国内需給【令和4年度食料需給表・食料自給率について】畜産の情報 2023年10月号

令和4年度食料需給表・食料自給率について

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令和4年度の食料自給率、前年度並みの38%
 農林水産省は令和5年8月7日に「令和4年度食料需給表(概算)」(注1)「令和4年度食料自給率・食料自給力指標について」を公表した。
 食料自給率とは、日本国内に供給されたすべての食料(以下「国内仕向量」という)に占める国内で生産された食料の割合を示す指標であり、供給熱量(カロリー)ベースおよび生産額ベースで計算する総合食料自給率と、重量ベースの品目別自給率との2種類に分けられる。
 総合食料自給率のうち、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目した供給熱量ベースの総合食料自給率を見ると、4年度は、前年度豊作だった国産の小麦の単収が減少、魚介類の生産量が減少した一方で、原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費が減少したことなどにより、38%と前年度並みとなった(表)。また、供給熱量ベースの食料国産率(注2)でも、47%と前年度並みとなった。
 経済的価値に着目して、国民に供給される食糧の生産額に占める国内生産の割合を示す指標としては、生産額ベースの総合食料自給率がある。これを見ると、輸入食料品の量は前年度と同程度であったものの、国際的な穀物価格や飼料・肥料・燃油などの生産資材価格の上昇、物流費の高騰、円安などを背景に、総じて輸入価格が上昇し、輸入額が増加したことなどにより、58%と前年度より5ポイント低下した。また、生産額ベースの食料国産率についても、65%と前年度より4ポイント低下した。
 一方の品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出したものである。分子を国内生産量、分母を国内消費仕向量(注3)として計算したものであり、各要素の増減が同自給率の増減に反映される構成となっている。
 このうち、肉類(鯨肉を除く。以下同じ)は、前年度並みの53%となった。また、肉類全体の国民1人・1年当たり供給純食料(注4)は、34.0キログラムで前年度並みとなった。
 なお、畜種によって異なるものの、畜産全体で見ると、家畜に給与する飼料のうち、20%は主に国産品が占める粗飼料、80%は主に輸入品が占める濃厚飼料となっている(可消化養分総量(注5)(TDN)換算ベース)。飼料自給率(TDN換算ベース)については、26%と前年度並みであった。このうち、粗飼料自給率は78%、濃厚飼料自給率は13%となった。また、飼料自給率を考慮した肉類の品目別自給率については、家畜生産において必要となる飼料用穀物の多くを海外から輸入していることから低い水準にあり、8%となった。
 
(注1)「食料需給表」とは、1年間に国内で供給される食料の生産から最終消費に至るまでの総量を明らかにするとともに、国民1人当たりの供給純食料および栄養量を示したものであり、食料自給率の算出の基礎となるものである。計測期間は、牛肉、豚肉、牛乳・乳製品、鶏卵については、当年4月1日から翌年3月31日まで、鶏肉については、平成21年度以降、暦年(当年1月1日から12月31日まで)となっている。
(注2)飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産物全体の供給に占める国内生産の状況を評価する指標である。
(注3)1年間で国内市場に出回った食料の量を表す数。国内消費仕向量=国内生産量+輸入量−輸出量±在庫増減量
(注4)各品目の1年間に国内で消費に回された食料のうち、食用向けの量を表す「粗食料」を人間の消費に直接利用可能な形態に換算した量を日本の総人口(各年度10月1日現在)で除したもの。なお、令和4年10月1日現在の人口は、1億2494万7000人(前年度比0.4%減)。
(注5)エネルギー含量を示す単位であり、飼料の実量とは異なる。

 
 以下、食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)、牛乳・乳製品、鶏卵の品目別自給率(重量ベース)、国民1人・1年当たりの供給純食料について紹介する。
 
1 牛 肉
令和4年度の牛肉自給率、前年度から1ポイント上昇の39%
 令和4年度の牛肉の品目別自給率は、39%と前年度を1ポイント上回り、3年度連続の上昇となった(図1)。
 国内生産量(枝肉換算)については、平成29年度以降、畜産クラスター事業の実施などにより和牛を中心におおむね増加傾向となっている。令和4年度は、肉専用種および交雑種は増加した一方、乳用種が減少し、全体では49万7000トン(前年度比3.5%増)と前年度をやや上回った。
 輸入量については、焼肉やハンバーガーなどの外食産業の需要拡大を背景に、平成28年度以降増加傾向となっていたが、令和2年度以降はCOVID−19の影響による外食需要の低迷などから減少傾向にある。4年度は、冷凍品は前年度の輸入量が少なかったことなどから増加したものの、冷蔵品は現地相場の高止まりなどにより輸入量が減少したことから、全体では80万4000トン(同1.1%減)と前年度をわずかに下回った。輸出量は、1万1000トン(同0.0%)と前年度並みとなった。国内在庫については、牛肉消費の低迷が続いたことから、3万1000トンの積み増しとなった。
 この結果、国内消費仕向量については、125万9000トン(同0.6%減)と前年度をわずかに下回り、3年度連続の減少となった。近年の牛肉の消費構成は、外食・中食が約5割となっており、この減少は、ホテルや飲食店などを含む外食における消費機会の減少による影響が大きかったものとみられる。また、消費者の節約志向の高まりで、安価な他畜種へのシフトが見られたことも要因と考えられる。
 このため、国民1人・1年当たり供給純食料(精肉換算)については、6.2キログラムと前年度並みとなった。
 なお、飼料自給率を考慮した自給率は、11%と前年度を1ポイント上回った。肉用牛に給与される飼料には、国産品で賄われる割合が高い粗飼料が含まれていることから、濃厚飼料を主に給与される豚肉や鶏肉に比べて、牛肉の同自給率は高い水準にある。


 
 
2 豚 肉
令和4年度の豚肉自給率、前年度並みの49%
 令和4年度の豚肉自給率は、49%と前年度並みとなった(図2)。
 国内生産量(枝肉換算)については、近年、疾病発生の影響などにより減少した時期はあったものの、畜産クラスター事業などの取り組みにより増加傾向にあった。4年度は、高齢化による廃業などにより、128万7000トン(前年度比2.4%減)と前年度をわずかに下回った。
 輸入量については、4年度は、冷蔵品は北米産の現地相場の高止まりにより減少した一方、冷凍品は現地相場が下がっていたEU産が増加したことなどにより、全体では140万7000トン(同3.7%増)と前年度をやや上回った。
 また、輸出量については、4年度は香港における外食規制の影響や、輸入豚肉価格の高騰により国内仕向の需要が高まったことなどより、2000トン(同33.3%減)と前年度を大幅に下回った。国内在庫については、4万2000トンの積み増しとなった。
 この結果、国内消費仕向量については、4年度は265万トン(同0.9%減)となった。近年の豚肉の消費構成は、最大の仕向け先である家計消費が約6割となっている。近年は、COVID−19の影響による旺盛な巣ごもり需要により増加傾向にあったものの、4年度は巣ごもり需要が落ち着いたことで、減少したものと考えられる。
 このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(精肉換算)は、13.1キログラム(同0.6%減)と前年度から0.1キログラム減少した。
 なお、豚は、輸入品の占める割合の高い濃厚飼料を主に給与しており、飼料自給率を考慮した豚肉自給率は、6年連続で6%となった。

 
3 鶏 肉
令和4年の鶏肉自給率、前年から1ポイント低下の64%
 令和4年の鶏肉自給率は、64%と前年から1ポイント低下した(図3)。
 国内生産量(骨付肉換算)については、消費者の健康志向の高まりや根強い国産志向を背景として価格が堅調に推移していたことなどから、増加傾向であり、4年も、168万1000トン(前年比0.2%増)と、11年連続で過去最高を記録した。
 輸入量については、近年、加工、外食・中食向けを中心におおむね増加傾向で推移している。4年は、中食需要が堅調であること、外食需要が回復傾向にあることなどから、93万7000トン(同1.1%増)と前年をわずかに上回った。
 また、輸出量については、4年は、高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)発生に伴う輸出先側の輸入停止および輸出先での需要減少などの影響により、3000トン(同40.0%減)と前年を大幅に下回った。国内在庫量については、堅調な中食需要や、外食需要が回復傾向にあることなどから、1000トンが取り崩され、3年連続で前年を下回る水準となった。
 国内消費仕向量は、消費者の低価格志向や健康志向の高まりなどからおおむね増加傾向で推移していたものの、4年は、261万6000トン(同0.6%増)と前年をわずかに上回った。
 このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(正肉換算)は、14.6キログラム(同0.9%増)と前年から0.2キログラム増加した。
 なお、鶏は、輸入品の占める割合の高い濃厚飼料を主に給与しており、飼料自給率を考慮した鶏肉の自給率は、4年も前年と同水準の9%となった。

 
4 牛乳・乳製品
令和4年度の牛乳・乳製品自給率、62%と5年ぶりに減少
 令和4年度の牛乳・乳製品の自給率(以下数値は生乳換算ベース)は、前年度を1ポイント下回り、62%となった(図4)。なお、飼料自給率を考慮した自給率は、27%と前年度同となった。
 国内生産量は、753万2000トン(前年度比1.5%減)と前年度より11万4000トン減少し、4年ぶりの減少となった。また、輸入量は、445万トン(同6.4%減)と前年度からかなりの程度減少し、3年連続の減少となる一方で、輸出量は、乳製品向けが12万9000トン(同108.0%増)と大幅に増加したことなどにより、13万7000トン(同95.7%増)と大幅に増加した。内訳を見ると、脱脂粉乳の輸出量が1万4000トン(同366.7%増)と大幅に増加した。また、需要量を示す国内消費仕向量は1220万6000トン(同0.1%減)と前年度並みとなった。品目別の生産量を見ると、飲用向けは、394万1000トン(同1.4%減)、乳製品向けは、354万5000トン(同1.6%減)と前年度をわずかに下回った。チーズの国内消費仕向量は、食生活の多様化などに伴い拡大していたが、令和元年度以降、COVID−19の拡大による外食需要の減少などにより、31万トン(同6.1%減)と減少している。
 牛乳・乳製品の国民1人・1年当たり供給純食料は、93.9キログラム(同0.6%減)と前年度からわずかに減少した。

 
5 鶏 卵
令和4年度の鶏卵自給率、前年度並みの97%
 令和4年度の鶏卵自給率は、前年度並みの97%となり、引き続き畜産物の中で最も高い水準を維持した(図5)。この自給率の高さについては、わが国では鶏卵を生食するという食文化から鮮度や品質が重視されているため、殻付き卵の輸入による代替が難しいことなどが背景にある。
 国内生産量(殻付換算)については、4年度はHPAIの記録的な発生の影響により、253万7000トン(前年度比1.9%減)と前年度をわずかに下回り、3年度連続の減少となった。
 輸入量については、輸送性・保存性の高い加工原料用の粉卵が約9割を占めており、菓子や練り物のつなぎなどの原料に仕向けられている。4年度は、COVID−19の影響からの業務用需要の回復により、11万7000トン(同1.7%増)と前年度をわずかに上回った。
 また、輸出量については、衛生管理、品質管理の徹底された日本産鶏卵が主要な輸出先である香港の飲食店や量販店向けの販売が好調となったことなどから、4年度は、2万7000トン(同12.5%増)と前年度をかなり大きく上回り、過去最高を記録した。
 国内消費仕向量については、4年度は、COVID−19の影響による巣ごもり需要が落ち着いたことや、HPAI発生により生産が減少したことなどから、262万7000トン(同1.9%減)と前年度をわずかに下回った。
 このため、国民1人・1年当たり供給純食料(付着卵白および殻を除く)は、16.9キログラム(同1.6%減)と前年度をわずかに下回った。
 なお、鶏は、輸入品の占める割合の高い濃厚飼料を主に給与しており、飼料自給率を考慮した鶏卵自給率は、4年度も前年度並みの13%となった。

 
(食肉、鶏卵:畜産振興部 大西 未来)
(牛乳・乳製品:酪農乳業部 山下 侑真)