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海外需給【牛乳・乳製品/中国】畜産の情報 2024年1月号

生乳生産量は引き続き増加、乳価の下落は止まらず

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23年1〜9月の生乳生産量、前年同期比6.7%増
 中国国家統計局によると、2023年1〜9月期の生乳生産量は、前年同期比6.7%増の2904万トンとなった(図1)。
 中国農業農村部が23年4月に公表した「中国農業展望報告(2023−32)」(以下「展望報告」という)(注1)によると、23年の生乳等生産量(注2)は同5.0%増の4227万トンと予測している。しかし(1)生乳のみで9月時点の累計生産量が2904万トンに達していること(2)中国の生乳生産量は通例10〜12月期にピークを迎えること−などを考慮すると23年の生乳等生産量は、展望報告の予測を超える可能性が高い(注3)
 
(注1)海外情報「中国農業展望報告(2023−2032)を発表(牛乳・乳製品編)(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003562.html)を参照されたい。
(注2)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなどの他畜種由来の乳を含む生産量。
(注3)第3四半期(6〜9月)と第4四半期(10〜12月)の生乳生産量の比率(過去3年平均)から、本年第4四半期の生乳生産量を試算すると1332万トンとなり、通年で4236万トンとなる。従って、これに他畜種由来の乳を加えた生乳等生産量は、予測量の4227万トンを超える可能性は高いと見込まれる。

 
需要の減退により生乳価格は下落基調を継続
 中国農業農村部によると、2023年11月の生乳価格は、1キログラム当たり3.71元(77.54円:1元=20.90円(注4)、前年同月比10.2%安)と前年同月をかなりの程度下回った(図2)。
 この要因について現地専門家は、(1)国内の生乳生産量が引き続き増加している一方、(2)新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大やゼロコロナ政策に起因する需要減退からの回復が依然として鈍いこと−を挙げている。
 
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。

 
国産在庫の積み増しで粉乳類など乳製品輸入量は引き続き減少
 2023年1〜10月の主要乳製品8品目の輸入量は、8品目中5品目で引き続き前年割れとなった(表)。
 このうち、全粉乳は38万9000トン(前年同期比38.1%減)と最も減少幅が大きい(図3)。この要因として、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が10月に公表したレポートは、(1)生乳生産が好調に増加する中で、国産の全粉乳在庫が積み増していること(2)近年、還元乳や乳飲料、還元ヨーグルトなど全粉乳から製造される乳製品の需要は、健康志向の強い富裕層において低迷し、全粉乳の消費が落ち込んでいること−などを挙げている。
 また同レポートでは、全粉乳の需要の低迷と期末在庫の増加から、全粉乳の輸入の減少傾向は24年も続くと予想している。




 
(調査情報部 平山 宗幸)