23年11月の生乳出荷量、3カ月連続で前年同月を下回る
欧州委員会によると、2023年11月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1090万2000トン(前年同月比2.7%減)と3カ月連続で前年同月を下回った(図1)。
主要生産国別に見ると、ポーランド(同1.4%増)は前年同月を上回った一方、多くの国々で前年同月を下回った(表)。中でもアイルランド(同19.8%減)の減少率は大きく、9カ月連続で前年同月を下回り、23年1〜11月の累計生乳出荷量でも前年同期比3.2%減となった。この要因についてアイルランド生乳生産者協会(ICMSA)は、生乳取引価格が生産コストを下回っていることや、天候の悪化から例年に比べて放牧期間が短かったことを挙げている。また、24年1月から欧州委員会の硝酸塩指令による家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限引き下げ地域(注1)があることも、生乳出荷量減少の一因としている。
(注1)欧州委員会の硝酸塩指令では、EU加盟各国の家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限を、1ヘクタール当たり年間170キログラムまでとされている。アイルランドは同250キログラムと緩和措置が取られているが、2024年1月から同220キログラムへ引き下げられる地域がある。
23年11月の生乳取引価格、2カ月連続で前月を上回る
欧州委員会によると、2023年11月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり45.45ユーロ(7339円:1ユーロ=161.47円(注2)、前年同月比21.3%安)と前年同月を大幅に下回った(図2)。ただし、前月比では2.4%高と2カ月連続で前月をわずかに上回った。同月は生乳出荷量が季節的に減少するため、例年、生乳取引価格が上昇する傾向にある。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年1月末TTS相場。
24年1月の主要乳製品価格の多くの品目で前年比安
欧州委員会によると、2024年1月21日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、脱脂粉乳が100キログラム当たり253ユーロ(4万852円、前年同期比4.5%安)、全粉乳が同367ユーロ(5万9529円、同0.4%安)、チーズが同356ユーロ(5万7483円、同23.4%安)といずれも前年同期を下回った(図3)。一方、バターは同544ユーロ(8万7840円、同6.3%高)、ホエイパウダーは同85ユーロ(1万3725円、同0.8%高)と前年同期を上回った。
現地報道によると、オセアニア産の価格上昇の影響を受け、バターの国際価格は上昇しているとされている。EUの生乳出荷量(23年1〜11月)が前年同期並みにある中で、乳固形分は前年同期を上回っており、秋以降の価格上昇に伴いバターの生産量は前年を上回っている。一方、脱脂乳の脱脂練乳向け使用が増えていることで、脱脂粉乳の生産量は前年を下回っている。
(調査情報部 渡辺 淳一)