2010年代前半ごろから「赤身肉ブーム」の時代が幕を開け、高級レストランや料亭向けの食材として強みがあると分析した流通戦略が功を奏し、幻の和牛となっていた「土佐あかうし」は需要が高まり、枝肉や子牛の取引価格、さらには生産者の所得を引き上げました。一方、新たに二つの課題にも直面しました。一つは土佐あかうしを応援してくださるシェフからの肉質への要望です。これは主に歩留まりの悪さ(可食部が少ないこと)や品質のバラツキに対するものでした。増頭が進む中で、肝心の土佐あかうしの「品質」が「赤身肉ニーズ」に追いついていなかったのです。
もう一つは、赤身肉ブランドとしてPRしていく中、格付結果の低さにより市場取引では価格が低迷してしまうことです。格付けとは枝肉のランク付けであり、肉として食べられる部分の多さや肉質、特にサシの多さ(霜降り度合)によって評価判定を受けます。当然、市場においてもこの格付けが重要視されており、より高い格付けの枝肉が高い価格で取引されているというのが現状です。土佐あかうしは、黒毛和種に比べてサシが入りづらく、赤身の多い肉質が特徴であるため、肉質等級では2〜3等級が土佐あかうし全体の6割を占めていました(令和元年度時点)。そのため、枝肉の取引価格が安く、生産者の所得も上がらないという状態が長らく続いていました。
県では、「応援してくださるお客様に喜んでいただける土佐あかうしを届けたい」という思いと「おいしい牛肉を作ってくださっている生産者を支援したい」という思いから、県や農協、生産者などの関係者から構成された土佐和牛ブランド推進協議会(以下「協議会」という)において、高知県独自の赤身肉を評価する仕組みを検討しました。
これがTosa Rouge Beef(トサ ルージュ ビーフ)、略して「TRB」規格です(写真3)。サシが少ないと言われる、肉質等級が2〜3等級の土佐あかうしの中から「ロース芯の大きさ」「皮下脂肪の薄さ」に注目し、併せてロース芯の形や筋間脂肪、土佐あかうしらしい小サシの具合、出荷月齢などの規格補正を加え、その品質が標準より良いものを「R4」、さらに良いものを「R5」として再評価する取り組みを令和2年度からスタートさせました。