24年1〜6月の豚肉生産量は前年同期並みで推移
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2024年1〜6月の豚肉生産量は263万1000トン(前年同期比0.3%増)と前年同期並みになった(図1)。また、と畜頭数は2858万7000頭(同0.7%増)とわずかに増加した。
近年の豚肉生産量は、国内外の堅調な需要を背景に23年まで10年連続で増加した。特に20〜22年は、中国の輸入需要などを背景に平均増加率が前年比7.9%とかなりの程度伸びたが、23年は需要の落ち着きなどから529万9000トン(前年比2.2%増)とわずかな増加にとどまった。
24年の月別豚肉輸出量、直近4カ月間はフィリピン向けが最大
ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2024年1〜10月の豚肉輸出量は97万8338トン(前年同期比8.6%増)と前年同期をかなりの程度上回った(表)。特に7月の月間輸出量11万9211トンを筆頭に、7〜10月の月間輸入量は4カ月連続で10万トンを超える高水準となった。
1〜10月を輸出先別に見ると、最大の輸出先である中国向けは18万1903トン(同43.1%減)と前年同期を大幅に下回った。同国向けは、需給緩和に伴う国産価格の下落などから23年8月以降、前年同月を大幅に下回り、24年3月以降の輸出量は月間2万トンを下回る水準となった。一方、これに次ぐフィリピン向けは、同国内での家畜疾病の発生、持続的な経済成長、人口の増加などを背景として17万7324トン(同105.9%増)と前年同期の2倍以上となった。特に7〜10月の月別輸出量は、4カ月連続で中国を抜いて最大の輸出先となった。このほか、チリ、日本、シンガポール、メキシコといったアジアや米州向けの増加が進んでおり、中国向けの落ち込みを補完した。主要輸出先のうち、特にフィリピン、日本、メキシコおよび韓国向けは大きな伸びとなった。
24年10月の生体豚価格、堅調な需要から前年同月比39.1%高
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2024年10月のブラジルの生体豚価格(パラナ州)は、1キログラム当たり8.72レアル(219円:1レアル=25.07円(注)、前年同月比39.1%高)となった(図2)。豚肉生産が安定的に推移する中、国内外からの堅調な需要やインフレの進行が価格上昇の要因とみられる。
一方、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)によると、同月の豚肉生産コスト指数は355.57(同5.8%高)と前年同月をやや上回る水準にとどまったため、生産者の収益性は22〜23年の厳しい状況から改善しているとみられる。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年11月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
(調査情報部 井田 俊二)