(1)はっ酵乳
はっ酵乳の生産量は、令和元年度まで減少傾向で推移していたが、2年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)による巣ごもり需要や免疫力向上を期待して、はっ酵乳を購入する消費者が増加したことなどにより需要が増加し、生産量も増加した(図1)。その後は値上げの影響による需要の減退などに伴い、生産量は減少傾向で推移し、5年度の全国生産量は、前年度比3.6%減の122万9807キロリットルとなった。また、本調査におけるはっ酵乳の生産量は、前回調査比で15.3%減少し、78万8799キロリットル(カバー率:64.1%)となった。
はっ酵乳の生産割合を商品タイプ別(注5)で見ると、「プレーン」は31.5%(前回比2.8ポイント増)となった一方で、「ハード」は20.0%(同1.5ポイント減)、「ドリンク」は35.7%(同1.2ポイント減)となった。「ソフト」は前回とほぼ同じ割合となった(図2)。ドリンクタイプについては、依然として生産割合が高く、好調との意見がある一方で、他社商品との競合や同タイプの市場の停滞感を減少要因に挙げる意見があった。
大手乳業への聞き取り調査によると、各種商品が値上がりする中、サイズが大きくお得感があることやプレーンタイプを習慣的に購入している消費者が多いことなどから、中・大容量のプレーンタイプの販売が堅調であった。また、忙しい朝に手軽に食べることができるフルーツ入りも朝食向けとして人気であった。一方、機能性ドリンクタイプが苦戦した。これは、各社が機能性ドリンクタイプを発売したことによって市場が飽和状態となっていることが要因の一つとみられている。また、はっ酵乳以外の分野でも乳酸菌を手軽にとれる商品が販売されており、これらとも競合しているとみられる。
(注5)はっ酵乳の商品タイプを次の通り分類した。
(1)プレーン:糖類や果実などの乳成分以外のものを一切含まないもの
(2)ハード:糖類やペクチンなどの安定剤を添加したもの
(3)ソフト:果肉や果物を含むもの
(4)ドリンク:液状で飲料タイプのもの
(5)フローズンなど:冷凍されたもの、その他のもの
乳業区分別に見ると、構成比は乳業系が84.8%、非乳業系が15.2%となっており、前回調査より乳業系の割合が減少した(図3)。
(2)乳飲料
乳飲料については、近年は、値上げされた牛乳の代替としての購入や、たんぱく質を強化した白物乳飲料が好調であったことなど好材料はあるものの、コンビニエンスストアのカウンターコーヒーやペットボトルコーヒーとの競合、健康意識の高まりで甘い色物乳飲料の需要が減少していることなどにより、長年減少傾向が続いている。
令和5年度の全国生産量は前年度から1.4%減少し、106万1237キロリットルとなった(図4)。一方、本調査における生産量は、前回調査から1.1%増加し、73万8479キロリットル(全国生産量に対するカバー率:69.6%)となった。
ア 白物乳飲料
本調査における白物乳飲料の生産割合を乳業類型別に見ると、大手3社が52.6%(前回比0.5ポイント増)、農協プラント系が13.6%(同6.8ポイント減)、中小系が33.9%(同6.4ポイント増)となった(図5)。
イ 色物乳飲料
本調査における色物乳飲料の生産割合を商品タイプ別に見ると、「コーヒー」は79.9%(前回比6.7ポイント増)、「フルーツ」は3.7%(同1.1ポイント増)、「その他」は16.3%(同7.9ポイント減)となった。
また、乳業類型別に見ると、大手3社が59.2%(同7.4ポイント減)、農協プラント系が16.6%(同0.4ポイント減)、中小系が24.2%(同7.8ポイント増)となった(図6)。
(3)加工乳
加工乳は、平成23年度以降減少傾向で推移していたが、30年度に増加に転じている。成分調整乳から加工乳への需要の移行や、低脂肪タイプなどの新商品の発売などが背景にあるとみられている。特に近年は、牛乳の値上げの影響により比較的安価な加工乳の需要が増加しており、令和5年度の全国生産量は、前年度比8.2%増の14万5916キロリットルと、直近10年間で最も多くなった(図7)。
大手乳業からの聞き取りによると、5年度は、加工乳についても白物乳飲料と同様に、比較的価格が安いことにより牛乳からの需要の移行が見られたことが増加の要因として挙げられた。また、コロナ禍が明けて業務用需要が増加したことや、たんぱく質が多く摂取できる商品が好調であったことも要因に挙げられていた。
本調査における加工乳の生産量は、カバー率が高まったこともあり、前回調査から37.1%増加し、12万6134キロリットル(カバー率:86.4%)となった。
加工乳の生産割合を商品タイプ(注6)別に見ると、「低脂肪」が22.3%(前回比2.3ポイント増)、「普通脂肪」が52.4%(同18.2ポイント減)、「濃厚」が25.3%(同15.9ポイント増)となった(図8)。
(注6)加工乳の商品タイプを乳脂肪率により次の通り分類した。
(1)低脂肪:1.5%以下
(2)普通脂肪:1.5%〜3.8%未満
(3)濃厚:3.8%以上
生産割合を乳業類型別に見ると、大手3社が34.0%(前回比5.1ポイント減)、農協プラント系が19.5%(同5.7ポイント減)、中小系が46.5%(同10.8ポイント増)となった(図9)。