(1)肉用牛・牛肉の需給見通し
ア 飼養頭数は6年連続での減少見込み
2025年1月1日時点の乳用種を含めた牛総飼養頭数は、8666万頭(前年比0.6%減)とわずかに減少した(表1、図3)。内訳を見ると、経産牛は3721万頭(同0.4%減)で、うち肉用種は2786万頭(同0.5%減)と減少している。
さらに、24年の子牛出生頭数は3353万頭(同0.1%減)と前年同水準であった。25年の肉用繁殖用未経産牛頭数も467万頭(同1.0%減)、そのうち25年の分娩予定頭数も292万頭(同1.7%減)と減少しているため、25年の牛総飼養頭数は6年連続での減少が見込まれている。
同時点のフィードロット飼養頭数は1430万頭(同0.9%減)、フィードロット外の飼養頭数も2456万頭(同0.5%減)といずれもわずかに減少した。25年の生体牛輸入頭数は204万頭(同3.1%増)と前年比でやや増加が見込まれる。ただし、主要な生体牛輸入先であるメキシコの牛から24年11月にラセンウジバエ(注1)が検出され、25年2月に輸入が再開されたものの検査施設が限られていることなどから、輸入頭数は限定されるとみられている。
(注1)ハエ目クロバエ科の昆虫の一種。中南米原産で、牛や羊などの家畜の傷に卵を産み、これから孵った幼虫が生きた動物の肉を食う害虫。被害を受けた家畜は弱り、場合によっては死に至る。
イ 牛肉生産量は減少見込み
2024年の牛肉生産量は、と畜頭数が減少(前年比3.1%減)した一方、平均枝肉重量がやや増加(同3.3%増)したことから、1224万2000トン(同0.1%増)となり、増加傾向から減少に転じた前年と同水準となった(図4)。25年も、牛群縮小の影響などが続き1210万4000トン(同1.1%減)とわずかな減少が見込まれ、引き続き低水準を推移する見通しであり、増加した22年と比較すると4.5%減少見込みである。
ウ 肥育牛平均価格は記録的となった24年を上回る見込み
2024年の主要5地域の肥育牛平均価格は、飼養頭数の減少から1キログラム当たり4.12米ドル(620円、前年比6.6%高)とかなりの程度上昇した(図5)。また、25年は堅調な需要に加え、さらなる肥育牛飼養頭数の減少が予測されることから、肥育牛平均価格は同4.40米ドル(662円、同6.9%高)と、24年の記録的価格をさらに上回ると見込まれる。
エ 牛肉輸出量はさらなる減少見込み
2024年の牛肉輸出量は136万2000トン(前年比1.2%減)となり、かなり大きく減少した23年からさらに減少した(図6)。主要輸出先のうち、韓国、中国、カナダ向けは前年比での減少が大きく、同水準あるいは増加の傾向を示した日本、メキシコ、台湾といったその他の輸出先の増加分を相殺した形である。また、25年は127万9000トン(同6.1%減)とさらなる減少が見込まれている。米国内の牛肉需給のひっ迫やそれに伴う価格上昇による米国産牛肉の価格競争力の低下などが要因とみられる。
オ 牛肉輸入量、国内での生産減からやや増加見込み
2024年の牛肉輸入量は210万2000トン(前年比24.4%増)と大幅に増加した(図7)。米国産牛肉の不足から、主要牛肉生産・輸出国である豪州、NZ、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンからの輸入が増加し、特に、ブラジルからは低関税枠に加え枠外でもかなりの量が輸入されている。また、25年においても国内生産量が減少する見通しの中、221万1000トン(同5.2%増)とやや増加が見込まれている。特に、と畜頭数の減少により加工用牛肉は引き続きひっ迫が予想されることから、輸入量の増加をけん引するとみられる。
(2)養豚・豚肉の需給見通し
ア 豚総飼養頭数はわずかに減少
2024年12月1日時点の豚総飼養頭数は、7491万頭(前年比0.7%減)となった(図8)。1腹当たり平均産子数は増加したものの、総飼養頭数は前年をわずかに下回った。
イ 豚肉生産量は3年連続で増加見込み
2024年の1腹当たり平均産子数を見ると、第1四半期に減少したものの、母豚の更新が進んでいることなどによりそれ以降は増加し、25年もこの傾向が続くとみられている(図9)。23年に比べ、24年は穀物需給の緩和により養豚生産者の収益性は改善している。25年の豚肉生産量は、と畜頭数と枝肉重量の増加により1289万4000トン(前年比2.3%増)と増加が見込まれている(図10)。
ウ 豚肉輸出量はわずかな増加見込み
2024年の豚肉輸出量は、322万7000トン(前年比4.3%増)とやや増加した(図11)。主要輸出先であるメキシコ向け(同3.7%増)や韓国向け(同12.0%増)輸出量の増加がけん引したとみられる。一方、日本向け(同2.2%減)は円安や現地相場高の影響によりわずかに減少した。25年は、米国の豚肉生産量の増加に加え、世界の豚肉需要も引き続き旺盛と予測されることから、327万8000トン(同1.5%増)とわずかな増加が見込まれる。
エ 豚肉輸入量はわずかな減少見込み
2024年の豚肉輸入量は、堅調な需要から52万1000トン(前年比0.5%増)と前年からわずかに増加した(図12)。一方、25年は米国内の豚肉生産量の増加により、わずかな減少(同2.9%減)が見込まれる。
オ 肥育豚平均価格はわずかな上昇見込み
2024年の肥育豚平均価格は、1キログラム当たり1.36米ドル(205円、同5.1%高)とやや上昇した(図13)。一方、25年は、国内生産量が増加する中で国内外における需要増が価格を下支えすることで、同1.39米ドル(209円、同2.3%高)とわずかな上昇が見込まれている。
(3)肉用鶏・鶏肉の需給見通し
ア 鶏肉生産量はわずかな増加見込み
2024年の鶏肉生産量は、飼料価格の低下や他の食肉の価格上昇に伴う鶏肉への需要シフトなどから国内需要が堅調に推移したことなどを背景に、2131万6000トン(前年比1.3%増)とわずかに増加した(図14)。25年も飼料価格の低下、鶏肉への需要シフト、平均生体重量の増加などから、鶏肉生産量は2163万7000トン(同1.5%増)とわずかな増加が見込まれる。
イ 鶏肉輸出量はわずかな減少見込み
2024年の鶏肉輸出量は、305万トン(同7.4%減)と前年をかなりの程度下回った(図15)。25年は国内生産量が増加するものの、旺盛な国内需要に加えて、価格の高止まりによる輸出競争力の低下から、鶏肉輸出量は296万2000万トン(同2.9%減)とわずかな減少が見込まれており、20年をピークに減少傾向にある。
ウ 肉用鶏平均価格はわずかな上昇見込み
2024年の肉用鶏平均価格は、1キログラム当たり2.85米ドル(429円、前年比4.0%高)とやや上昇した(図16)。25年は国内供給量が増加するものの、赤身肉価格の上昇と牛肉の需給ひっ迫などから、鶏肉需要の増加が予測されるとして、同2.89米ドル(435円、同1.4%高)とわずかな上昇が見込まれる。
(4)採卵鶏・鶏卵の需給見通し
ア 食用鶏卵生産量はわずかな減少見込み
2024年の総鶏卵生産量は、10月以降に流行したHPAIの影響などにより、90億4000万ダース(前年比0.9%減)と前年をわずかに下回って推移した(図17)。このうち、食用鶏卵生産量は77億6000万ダース(同1.1%減)と前年をわずかに下回った。25年の食用鶏卵生産量は、上期も減少が続くことで75億8000万ダース(同2.4%減)と前年をわずかに下回ると見込まれる。
イ 鶏卵価格は大幅な上昇見込み
2024年の食用鶏卵価格(鶏卵卸売価格)は、第1四半期が1ダース当たり2.6米ドル(391円、前年同期比18.2%安)と前年同期を大幅に下回ったものの、第3四半期以降は上昇を続け、第4四半期には同4.1米ドル(617円、同2.2倍)と前年同期を大幅に上回って推移した(図18)。HPAI発生による採卵鶏の殺処分により、鶏卵の供給が急激に減少したことが要因に挙げられる。25年の第1四半期はHPAIの継続的な発生やイースター(復活祭)、ホリデーシーズンの需要などから、同7.0米ドル(1054円、同2.7倍)とさらなる上昇が見込まれ、第2四半期以降は落ち着きを見せるものの、年間平均卸売価格は同4.2米ドル(632円、同39.8%高)と前年平均を大幅に上回ると見込まれる。
ウ 鶏卵輸出量は大幅な減少見込み
2024年の鶏卵・鶏卵製品輸出量は、価格の高騰と鶏卵供給の減少などから、殻付き換算で2億3400万ダース(前年比6.4%減)とかなりの程度減少した(図19)。25年の輸出量は、引き続き国内での鶏卵供給が減少するとみられ、1億8600万ダース(同20.6%減)と大幅な減少が見込まれる。
(5)酪農・乳業の需給見通し
ア 乳用経産牛頭数は前年を上回る見込み
2025年(25年1月1日時点)の乳用経産牛飼養頭数は934万9000頭(前年比0.0%増)と前年並みになった(図20)。24年における酪農マージンが好調であったことや飼料コストの低下などから、25年の飼養頭数は維持される見通しである。一方、乳牛の供用期間が延長されることで、25年の年平均経産牛頭数は24年を上回ると見込まれている。
イ 生乳生産量は前年並み
2024年(24年1月1日時点)の乳用経産牛頭数は、934万7000頭(前年比0.5%減)とわずかに減少した。一方、1頭当たり乳量が1万967キログラム(同0.2%増)と前年並みになったことから、生乳生産量は1億247万トン(同0.2%減)と前年並みで推移した(図21、22)。25年は、1頭当たり乳量は前年並み(同0.2%減)が見込まれ、乳牛の供用期間を延長し25年中の年平均経産牛頭数が増加する見通しであることから、生乳生産量は1億260万トン(同0.1%増)と前年並みが見込まれる。
ウ 平均総合乳価はやや下回る見込み
2024年の全米平均総合乳価は、主要輸出国からの供給減と中米や東南アジアなどからの旺盛な輸入需要を反映し、1キログラム当たり0.50米ドル(75円、前年比10.4%高)と前年をかなりの程度上回った(図23)。25年は、引き続き高水準にあるものの、飼料価格の低下に伴い0.48米ドル(同72円、同4.6%安)と前年をやや下回る見通しである。
エ 乳製品輸出量、乳脂肪分ベースと無脂乳固形分ベースいずれも減少見込み
2024年の乳製品輸出量は、価格競争力のあるバターおよびチーズが好調となり、乳脂肪分ベースで534万3000トン(前年比12.2%増)とかなり大きく増加した(図24)。一方、脱脂粉乳など無脂乳固形分ベースでは2212万7000トン(同2.2%減)とわずかに減少した。
25年の乳製品輸出量は、国内使用量の増加から、乳脂肪分ベースの輸出量は530万7000トン(同0.7%減)、無脂乳固形分ベースでは2154万6000トン(同2.6%減)といずれも減少が見込まれる。