畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 令和6年(1〜12月)の食肉の家計消費動向 

国内需給【令和6年(1〜12月)の食肉の家計消費動向】畜産の情報 2025年5月号

令和6年(1〜12月)の食肉の家計消費動向 

印刷ページ
外食・中食需要は堅調に推移するも、物価上昇の影響が顕著
 令和6年は、5年5月に新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が5類感染症に移行してから1年が経過し、外食需要・中食(注)需要ともに堅調に推移したものの、物価の上昇による影響が顕著となった。
 
(注)店舗で購入して家に持ち帰り、食事すること。また、その食品のこと。
 
 一般社団法人日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査(令和6年(2024年))年間結果報告」によると、6年の業界全体の売上高は、原材料費の高騰などに起因した価格改定による客単価の上昇や年間を通したインバウンド需要の増加などにより、全店ベースで前年比8.4%増となり、過去最高だった元年を上回った。
 業態別に見ると、「ファミリーレストラン」(前年比9.5%増)、「ファストフード」(同8.1%増)など、すべての業態で前年を上回る売り上げとなった(図1)。



 
  日本チェーンストア協会の「チェーンストア販売統計」によると、6年の総販売額は13兆308億円(同2.7%増)となった。
カテゴリー別に見ると、「食料品」(同4.4%増)およびその内数である「畜産品」(同2.7%増)、「住関品」(同4.4%増)はいずれも前年を上回った一方、「衣料品」(同5.4%減)は前年を下回った。「食料品」は、期間を通して節約志向から買上点数の減少傾向が続いたが、店頭価格の上昇や農産品の相場高により売上額は伸びた(図2)。


 
 
食肉の購入数量、鶏肉が前年を上回る
 総務省の「家計調査」によると、令和6年の家計消費(全国1人当たり)(注)は、「生鮮肉」が2万8006円(前年比1.8%増)、「加工肉」が6482円(同0.8%増)、「調理食品」が5万4159円(同3.4%増)、「外食」が6万5138円(同8.8%増)と、いずれも前年を上回った(図3)。
 
(注)1世帯当たりの数値を当該年の世帯人数で除して算出。
 


 
 6年の食肉の購入数量を畜種ごとに見ると、「牛肉」は1930グラム(同4.7%減)、「豚肉」は7573グラム(同0.5%減)といずれも前年を下回った一方、「鶏肉」は6462グラム(同4.3%増)と前年を上回った(図4)。
 食肉加工品は、「ハム」が788グラム(同3.8%減)、「ソーセージ」が1814グラム(同0.9%減)と、いずれも前年を下回った。

 
牛肉:豚肉、鶏肉への需要シフトが強まる
 牛肉の消費構成は、家計消費が減少する一方、外食・中食への仕向け量が拡大する傾向にあり、近年は、外食・中食での消費が全体の消費量の約6割、家計消費が約3割で推移している。
 牛肉の令和6年の家計消費(全国1人当たり)を見ると、購入金額は、年の半分が前年を下回って推移し、購入数量も3月、9月、11月を除き前年を下回って推移した(図5)。前年と比較すると、購入金額、購入数量ともに減少した。
 一般社団法人全国スーパーマーケット協会の「スーパーマーケット白書(2025年版)」(以下「スーパー白書」という)によると、3月はひな祭りや卒業シーズンなどハレの日用の国産牛肉、8月は夏休み、お盆時期で、9月は三連休(敬老の日や秋分の日など)が続き、需要が回復した店舗が見られたものの、1年を通して、牛肉から豚肉、鶏肉へ需要がシフトする傾向が強まった。
 



 
豚肉:牛肉からの需要シフトの他、相場高などにより購入金額は増加
 豚肉の消費構成は、最大の仕向け先である家計消費が全体の消費量の約6割を占めている他、加工仕向けおよび外食・中食で約4割を占めている。
 豚肉の令和6年の家計消費(全国1人当たり)を見ると、購入金額は、年の半分以上が前年を上回った一方、購入数量は年の半分以上が前年を下回った(図6)。前年と比較すると、購入金額は増加したものの、購入数量は減少した。
 スーパー白書によると、牛肉から需要がシフトする流れが継続し、小間切れやひき肉など普段使いの商材を中心に売上が回復したものの、4月以降は相場高により値頃な商材以外の動きが鈍くなった。11月以降は気温低下に伴い鍋需要が高まり、スライスやしゃぶしゃぶ用の国産豚肉に回復傾向が見られた。


 
 
鶏肉:節約志向により購入金額、購入数量ともに増加
 鶏肉の消費構成は、最大の仕向け先である外食・中食での消費が全体の消費量の約5割、家計消費および加工仕向けが約5割となっている。
 鶏肉の令和6年の家計消費(全国1人当たり)を見ると、購入金額は4月、7月、9月を除き前年を上回り、購入数量は4月、12月を除き前年を上回って推移した(図7)。前年と比較すると、購入金額、購入数量ともに増加した。
 スーパー白書によると、前年のHPAIからの反動もあり、相場がおおむね安定して推移した他、牛肉、豚肉の相場高により、価格が安定して値頃感のある鶏肉への需要シフトが顕著となった。
 


 
ハム・ソーセージ:値上げの影響などにより購入金額、購入数量ともに減少
 ハムおよびソーセージの令和6年の家計消費(全国1人当たり)を見ると、ハムの購入金額は、7月、8月、12月を除き前年を上回って推移した一方、購入数量が前年を上回ったのは5月、6月および11月のみであった。ソーセージは、購入金額が1月、7月および10月を除き前年を上回って推移した一方、購入数量が前年を上回ったのは6月、8月、9月、11月のみであった(図8)。
 スーパー白書によると、ハムなどの加工肉は、値上げの影響でおおむね年間を通じて動きが鈍かった。


 
 
(畜産振興部 丸吉 裕子)