(1)背景と課題
生乳の需給については、遅くとも令和2年ごろから、ヨーグルト消費の減少やCOVID-19の影響により脱脂粉乳の需要が低迷したことで、脱脂粉乳の在庫の積み上がりが発生した。国、生産者、乳業者が一体となって在庫削減対策を講じているが、牛乳や脱脂粉乳の需要は当面不足すると見込まれており、対策がなければ積み上がる状況にある。
生産基盤については、高齢化などを理由に飼養戸数が減少し、寒冷地など条件不利地域においては、農村の維持・活性化の観点から産業の持続性が課題である。
また、飼料費等の上昇・高止まりが経営収支を大きく悪化させたものの、その後の乳価引き上げに伴い回復の兆しが見られることを踏まえると、円滑な価格の形成に向けて需給の安定を通じ乳価交渉の環境を整えることが重要である。
さらに、生乳の流通については、2024年問題を背景とする運転手不足等の課題がある中で、集送乳の合理化が重要である。加工に当たっては、需給がひっ迫する中で、生乳需給調整機能の強化が必要となるが、乳製品加工施設の老朽化・偏在が課題である。
(2)対応方向と今後の施策
まず、生産量と需要のバランスを整えることが最重要課題である。酪農・乳業等の関係者と国や地方公共団体が目線を合わせながら、生乳・脱脂粉乳の消費者の理解醸成や需要喚起対策を拡大していく必要がある。
なお、生産数量目標については、次期基本方針策定までの間、毎年、業界を挙げた需要拡大の取り組みの成果を含む需給状況を踏まえ、その目標達成の可能性やそれ以上の生産拡大の必要性を検証していく。
生産基盤に関しては、生乳生産量の安定のためには、生産者が自ら種付率などをコントロールすることが重要であることを踏まえ、国は、酪農家が生産基盤を見通すために必要な飼養頭数、生乳の需給状況等の客観的データに関する情報発信を強化する。
経営安定対策については、地域における飼養戸数の動向や、これに伴う生乳生産の実態を把握し、生乳需給と経営の持続可能性を考慮した生産基盤の維持・強化を図るための支援を講じる。
また、流通・加工についても、関係者の理解を得ながら合理化を推進していく。