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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2025年7月号

輸出需要を背景に若齢牛価格は今期最高値を記録、雌牛と畜割合は上昇

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25年5月若齢牛価格、今年度の最高値を記録
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近2025年5月29日時点で1キログラム当たり734豪セント(694円:1豪ドル=94.58円(注1))となり、2024/25年度(7月〜翌6月)の最高値を記録した(図1)。
 現地報道によると、南部地域(主に南オーストラリア(SA)州、ビクトリア(VIC)州)では干ばつが続く中、主要肉牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州やニューサウスウェールズ(NSW)州では適度な降雨により牧草の生育が良好なため、牧草肥育農家の導入意欲が増していること、また、輸出需要によりフィードロットの稼働率が高まっていること(注2)が要因とされている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
(注2)海外情報「2025年3月のフィードロット飼養頭数、輸出需要などで拡大(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004114.html)をご参照ください。
 



 
成牛と畜頭数、牛肉生産量はいずれも増加、年記録更新に順調な滑り出し
 豪州統計局(ABS)が2025年5月に公表した統計によると、25年1〜3月期の牛のと畜頭数は、217万頭(前期比2.2%増)、牛肉生産量は67万9048トン(同2.7%増)といずれも増加した(図2)。雌牛と畜割合(FSR)は52.7%に上昇し、繁殖雌牛の出荷による頭数削減が進むとされる指標の47%を8期連続で超えている(図3)。複数の農業アナリストによると、FSRの上昇は南部地域での干ばつによる牛群整理の進展を示しているが、他方で、若く能力のある繁殖雌牛が順次導入されており、より生産性の高い牛群の構築が進んでいるとされている。
 なお、MLAの見通しでは、2025年6月30日時点の牛群頭数は3010万頭(前年比1.4%減)と小幅な減少に留まると予測されており、急激な牛群縮小局面には至らないと分析されている。
 また、直近の動きとして、週間成牛と畜頭数は高水準で推移しており、5月第4週は15万2569頭(前年同週比9.5%増)と、堅調な輸出需要を背景に前月に続き15万頭超えを記録している(図4)。
 







 
 
25年4月牛肉輸出量、4月の過去最高値を更新
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年4月の牛肉輸出量は12万7172トン(前年同月比20.7%増)と大幅に増加した。単月の数値としては過去4番目の輸出量となり、4月としては2015年に記録した過去最高値を更新した(表)。
 4月の輸出量を輸出先別に見ると、特に米国、中国向けが顕著に増加した。米国向けは3万7213トン(同36.5%増)と大幅に増加し、引き続き堅調な需要を示した。4月5日以降に豪州から輸出された牛肉には10%の追加関税が課されているが、輸出量への影響は今のところ見られていない。一方で、現地報道によると、4月初めの駆け込み需要や事前成約分の荷動きがあることから、関税の影響を正確に評価するためには、5月以降の数量を確認する必要があるとされている。
 また、中国向けも2万1572トン(同44.9%増)と輸出先別で最大の伸びを記録した。現地報道によると、米中の貿易摩擦により、米国内約400の中国向け牛肉加工施設の輸出認可登録の更新が停止されており、豪州の穀物肥育牛肉が米国産牛肉の不足分を補っているとされている。一方で、複数の農業アナリストは、中国の牛肉需要の継続性は不透明であり、輸出認可登録の更新や経済の減速といった要素により状況は変わり得ることから、食肉業界はその動向を注視していくべきと分析している。
 




 
(調査情報部 国際調査グループ)