25年3月の生乳出荷量は前年同月比0.4%減
欧州委員会によると、2025年3月の生乳出荷量(EU27カ国)は1288万トン(前年同月比0.4%減)とわずかに減少した(表1)。国別に見ると、ドイツ(同2.3%減)、フランス(同1.3%減)、オランダ(同1.5%減)がいずれも減少する中で、イタリア(同1.0%増)はわずかに増加し、ポーランド(同0.3%増)は前年同月並みではあるが緩やかな増産が長期的に継続している。アイルランド(同8.1%増)は、前年3月の生乳出荷量が悪天候で大きく減少したのに対し、25年3月は平年並みの生乳出荷量が確保されたことで、かなりの程度増加した。
この結果、25年第1四半期(1〜3月)の生乳出荷量は、3556万4000トン(前年同期比1.8%減)とわずかに減少した(図1)。この要因として、(1)堅調な牛肉価格や環境規制の強化などを背景として乳用経産牛の飼養頭数が減少したこと (2)うるう年であった前年に比べて搾乳日数が少なかったこと−が挙げられる。中でもドイツの減少は前年同期比減少分の約5割に相当し、フランスとオランダを加えた3カ国の減少で同9割を占めるなど、この3カ国の生産減が目立っている。
25年4月の生乳取引価格は前年同月比15.9%高
欧州委員会によると、2025年4月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり53.40ユーロ(1キログラム当たり88円:1ユーロ=165.07円(注)、前年同月比15.9%高)と12カ月連続で前年同月を上回った(図2)。同価格は、高水準で推移するバターなどの乳製品価格にけん引される形で好調を維持している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
25年5月第5週のバター価格は前年同期比20.6%高
欧州委員会によると、2025年5月25日の週の製品別乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり735ユーロ(1キログラム当たり1213円、前年同期比20.6%高)、チーズが同464ユーロ(同766円、同19.1%高)、全粉乳が同434ユーロ(同716円、同16.2%高)といずれも前年同期を大幅に上回り、高値を継続している。また、脱脂粉乳は同246ユーロ(同406円、同0.4%高)とわずかに上回った(図3)。
25年第1四半期の乳製品輸出量、チーズは増加もバターなどは減少
欧州委員会によると、2025年第1四半期(1〜3月)のEU域外向け乳製品輸出量は、チーズ(前年同期比3.3%増)がやや増加した一方、バター(同9.4%減)、脱脂粉乳(同0.6%減)および全粉乳(同15.6%減)はいずれも減少した(表2)。
バターや全粉乳は、価格競争力の低下や植物性油脂添加粉乳との競合により、中国、中東およびアフリカ向け輸出量が減少した。脱脂粉乳は、自給率向上を目指し酪農部門に注力しているアルジェリア向けが大幅に減少したが、オセアニア産に比べて価格競争力で優位にあり、ナイジェリアや東南アジア向けが大幅に増加し、全体としてわずかな減少にとどまった。
チーズ輸出の増加は、米国向けについて追加関税措置前の駆け込み輸出が寄与したとされている。
(調査情報部 渡辺 淳一)