農林水産省が令和7年7月25日に公表した「畜産統計(令和7年2月1日現在)」について、肉用牛および乳用牛の概要を以下の通り報告する。なお、本年は2025年農林業センサス実施年のため、豚、ブロイラーおよび採卵鶏の調査は行われていない。
【肉用牛】飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
飼養頭数、肉用種は前年比2.4%減、乳用種も同4.0%減
肉用牛の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和7年は3万4000戸(前年比6.8%減)と前年からかなりの程度減少した(表1)。飼養頭数は、近年、増加傾向にあったものの、259万5000頭(同2.9%減)と前年からわずかに減少し、2年連続の減少となった。この結果、肉用牛の1戸当たり飼養頭数は、前年から3.1頭増加し、76.3頭となった。
肉用牛は、肉用種および乳用種(注1)に大別され、飼養頭数のうち約7割を占める肉用種は185万1000頭(同2.4%減)とわずかに、約3割を占める乳用種は74万3800頭(同4.0%減)とやや、いずれも前年から減少した(図1)。
肉用種の内訳を見ると、子取り用めす牛は前年比4.5%減の61万1400頭(肉用牛全体に占める割合は24%)とやや、肥育用牛は同1.0%減の83万3600頭(同32%)、育成牛は同2.2%減の40万6200頭(同16%)とわずかに、いずれも前年から減少した(図2)。
乳用種の内訳を見ると、交雑種は同1.4%減の55万9400頭(同22%)とわずかに、ホルスタイン種ほかは同11.3%減の18万4400頭(同7%)とかなり大きく、いずれも前年から減少した。
(注1)「畜産統計」では、乳用種の肉用牛とは、ホルスタイン種、ジャージー種などの乳用種の牛のうち、肉用を目的に飼養している牛で、乳用種と肉用種の交雑種を含むと定義されている。
飼養戸数は「500頭以上」以外の階層で前年比減、飼養頭数はすべての階層で前年比減
肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養戸数については、500頭以上の階層で前年をわずかに上回ったものの、それ以外のすべての階層で前年を下回った(図3)。同飼養戸数は、1〜4頭の階層が最も多く、7130戸(前年比7.5%減)と全体の21%を、次いで10〜19頭の階層が6170戸(同7.1%減)と同18%を、5〜9頭の階層が5910戸(同10.6%減)と同17%を占める結果となった。また、500頭以上の階層は780戸(同0.6%増)と同2%、200〜499頭の階層は1390戸(同4.1%減)と同4%を占める結果となった。なお、各階層の同割合は、5〜9頭の階層が前年から1ポイント低下し、50〜99頭の階層が同1ポイント増加した以外は、前年と同じ割合となった。
肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養頭数については、すべての階層で前年を下回った(図4)。同飼養頭数は、500頭以上の階層が最も多く、全体の45%を占める117万1000頭(同0.2%減)、次いで200〜499頭の階層が同17%を占める44万7200頭(同4.9%減)となった。これら上位2階層の同割合は62%と同1ポイント増加した。
(畜産振興部 小森 香穂)
【乳用牛】全国の飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
全国の飼養頭数、3年連続で減少
乳用牛の飼養戸数は前年割れが継続しており、令和7年2月1日現在では、1万1300戸(前年比5.0%減)と前年をやや下回った(図5)。地域別に見ると、北海道では4970戸(同3.9%減)、都府県でも6350戸(同5.6%減)といずれも前年をやや下回った(表2)。また、乳用牛飼養頭数は、129万3000頭(同1.5%減)と3年連続での減少となった。地域別に見ると、北海道が81万6800頭(同0.6%減)、都府県が47万6200頭(同3.1%減)と、いずれも前年を下回った。一方、酪農家の規模拡大は進展しており、1戸当たりの飼養頭数は前年から4.1頭増加し、114.4頭(同3.7%増)となった。地域別では、北海道が164.3頭(同3.4%増)、都府県が75.0頭(同2.7%増)といずれも増加している。
飼養頭数「100頭以上」の階層、全体の半数を占める
乳用牛飼養戸数を成畜(満2歳以上の牛または2歳未満のうち経産牛。以下同じ)の飼養頭数規模別に見ると、「100頭以上」の階層は2159戸(前年比0.3%増)と前年並みにとどまったが、全体に占める割合は19.1%と1.0ポイント増加した(表3)。このうち「200頭以上」の階層は、709戸(同2.5%増)と前年からわずかに増加した。「80〜99頭」の階層は前年並みとなったが、80頭未満の階層はいずれも減少した。
また、乳用牛飼養頭数を成畜の飼養頭数規模別に見ると、「100頭以上」の階層が71万4800頭(同1.0%増)と前年からわずかに増加し、全体の55.3%を占めた。このうち「200頭以上」の階層は、42万5700頭(同3.1%増)とやや増加し、全体の32.9%を占めた。また、「80〜99頭」の階層についても11万3300頭(同1.3%増)と前年からわずかながらも増加した。一方で、80頭未満の階層については、すべての階層で減少した。飼養戸数は前年から5.0%減少しているが、80頭以上の階層では飼養戸数および頭数ともに増加し、さらに200頭以上の階層でその増加率は大きいことからも、経営が大規模化していることがうかがえる。
乳用種めす出生頭数、3.6%増加
直近1年間(令和6年2月〜令和7年1月)の乳用種めす出生頭数は、25万9600頭(前年同期比3.6%増)となり、前年から増加に転じた(図6)。
(酪農乳業部 天野 明日香)