25年の豚肉生産量は前年比1.9%増の見込み
 米国農務省海外農務局(USDA/FAS)は2025年8月27日、25年および26年のメキシコの豚肉需給見通しを発表した。これによると、25年の豚と畜頭数は1852万頭(前年比1.5%増)、豚肉生産量は142万トン(同1.9%増)と、いずれもわずかな増加が見込まれている(表1)。また、豚肉消費量は、堅調な外食需要や手頃なたんぱく源を求める消費者による牛肉の代替需要などから、274万トン(同4.9%増)とやや増加すると見込まれている。26年は、ブラジル産などが台頭する輸出量を除き、各項目で前年を上回って推移するとみられている。
豚枝肉価格は高値で推移、25年8月は前年同月比17.8%高
 メキシコ国家情報市場統合システム(SNIIM)によると、2025年8月の豚枝肉価格は、1キログラム当たり86.0ペソ(783円:1ペソ=9.10円(注)、前年同月比17.8%高)と大幅に上回った(図)。米国農務省(USDA)によると、豚肉需要が高いことに加え、治安の悪化に伴い輸送貨物に対する襲撃事件の発生など、物流の混乱による物流コストの上昇なども価格上昇の一因とみられている。また、同月の生体豚価格も、同49.0ペソ(446円、同3.6%高)とやや上回った。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年9月末TTS相場。
25年上期の豚肉輸出量は前年同期比15.8%減、輸入量は同13.9%増
 2025年上期(1〜6月)の豚肉輸出量は、7万5000トン(前年同期比15.8%減)とかなり大きく減少した(表2)。輸出先別に見ると、ロースなどが中心となる米国向けは1万4100トン(同3.0%増)となった。一方、輸出先第1位の日本向けは5万3400トン(同18.9%減)、韓国向けは4600トン(同20.7%減)といずれも大幅に減少した。この要因として、アジア圏では、ブラジル産など、より安価な豚肉を求める動きが強いためとみられる。
 同期の豚肉輸入量は、生産量を上回る国内需要の高まりから、73万6300トン(同13.9%増)とかなり大きく増加した(表3)。輸入先別に見ると、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)により米国やカナダ産の堅調な輸入が続く中、ブラジル産は2万7300トン(同2.9倍)と大幅に増加した。これは、メキシコ政府によるインフレ率上昇抑制策(PACIC)の下で、一時的に豚肉の輸入関税が撤廃されていたことが有利に働いた。
 
(調査情報部 大西 未来)