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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2025年11月号

25年9月第3週の乳製品価格、チーズは上昇もバターや粉乳は下落

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25年7月の生乳出荷量は前年同月比0.1%減
 欧州委員会によると、2025年7月の生乳出荷量(EU27カ国)は1253万6000トン(前年同月比0.1%減)と、前年同月並みとなった(図1、表)。この要因として、同年6月時点の乳牛飼養頭数は同1.6%減とわずかに減少したが、生乳取引価格は過去5カ年平均を大幅に上回っているほか、現地報道によると、1)飼料コストの低下、2)夏の穏やかな気候、3)良質な牧草の生育−などが出荷量の維持に寄与したとされている。同委員会によると、同年上半期(1〜6月)の乳脂肪分および無脂乳固形分は、前年同期比0.7%増とされている。
 





 
 
25年8月の生乳取引価格は前年同月比12.0%高
 欧州委員会によると、2025年8月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり53.23ユーロ(1キログラム当たり94円:1ユーロ=175.97円(注)、前年同月比12.0%高)と16カ月連続で前年同月を上回った(図2)。同価格は、高水準で推移するバターなどの乳製品価格にけん引される形で好調を維持している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年9月末TTS相場。
 



 
25年9月第3週のバター価格、13カ月ぶりに700ユーロを下回る
 欧州委員会によると、2025年9月14日の週の製品別乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり644ユーロ(1キログラム当たり1133円、前年同期比14.3%安)と、24年8月以来、13カ月ぶりに700ユーロ(1232円)台を下回った(図3)。このほか、全粉乳が同406ユーロ(同714円、同5.3%安)とやや、脱脂粉乳が同232ユーロ(同408円、同9.0%安)とかなりの程度前年同期を下回った。一方、チーズは同445ユーロ(同783円、同12.8%高)と前年同期をかなり大きく上回った。
 乳固形分の増加もあり、同年上半期のEU27カ国のバター生産量は112万1900トン(同2.4%増)と増加しており、また、同期間のEU域外からのバター輸入量も1万4065トン(同約2.5倍)と大幅に増加している。ウクライナ、ニュージーランド(NZ)およびノルウェーからの比較的安価なバターの輸入量が増加しており、EU域内のバター価格の高騰が背景にあるとみられる。また、米国産バターの価格下落やNZ産バターに対する価格競争力の低下により、EU産バターの価格の下落が継続すると見込まれる。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、ここ数週間、EUの市場取引業者は、さらなるバター価格の下落を期待し、価格変動下での取引を控えているとされている。
 



 
(調査情報部 渡辺 淳一)